【マンガ・科学解体新書】マスクの下の「口」が危ない?…渇きやむせの放置が「全身」にもたらす”悪影響の中身”(現代ビジネス)

それは実は「口呼吸になる」ということ。マスクをしていると、気づいたらマスクの中で口がポカンと開いていた、なんて経験はありませんか? これは実は口呼吸によるもの。鼻を直接覆っていれば、多少は鼻呼吸がしづらくなります。そんな時、酸素を取り込もうとして口呼吸になってしまうことがあるらしいのです。

この口呼吸、実はなかなかの曲者のよう。口呼吸になると、唾液が蒸発するので、口の中が乾燥しやすくなり、喉が乾く原因となります。口が乾くと、口の中で雑菌が繁殖し、免疫力が低下します。また、口をポカンと開けている間は舌に力を入れなくなるので、舌の筋力が低下して、ちょっとしたことでむせるようになります。そうなると、もう口の中だけの問題ではありません。巡り巡った負のループは、そのまま放置していると、心身機能の低下にまで繋がりかねないと言うのです。

そんな口腔機能のちょっとした低下のことを、「オーラルフレイル」と呼びます。なんと、東京大学を中心とするグループが65歳以上の高齢者を対象に2012年から4年間行った追跡調査では、こうしたオーラルフレイルを持つ人は、口腔機能が良好な人に比べて、身体の衰え(=フレイル)を発症する率が2.4倍、4年以内に死亡するリスクが2.1倍であることが報告されているのです*1。どうやら、お口の健康は身体の健康、と言えそうです。

逆に言えば、オーラルフレイルを予防することで、将来の身体の健康も守れる可能性があるということ! そのためには、予防歯科受診が一番とのことです。なんと言っても、常に自分の口に意識を向けるのは難しいですし、やはり口のプロでなければ気付けない問題もあります。 特に問題もないのに、歯科受診でお金を使うなんて…と思われるかもしれませんが、東北大学が65歳以上の高齢者を対象に2010年から8年間行った追跡調査では、予防歯科受診をしている人は、そうでない人よりも、8年間の累積介護料が約11万円も低かったことが報告されています*2。予防歯科受診に課金していた方が、結局はお得(?)と言えるのかもしれません。 さて、予防歯科受診が大事であることをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? オススメは1年に2回からワンシーズンに1回とのことです。 そして、オーラルフレイルかどうかは次の5つの項目で簡単にチェックすることもできます。2つ以上当てはまればオーラルフレイルに該当するとされています。 オーラルフレイル・5つのチェック項目 □ 「自身の歯の本数が19本以下」※さし歯や金属をかぶせた歯は自分の歯として数える。インプラントは自分の歯として数えない。□ 「半年前と比べて固いものが食べにくくなったか」□ 「お茶や汁物等でむせることがあるか」□ 「口の渇きが気になるか」□ 「普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがあるか」 詳しくは 日本老年歯科医学会のHP などをご確認ください。 【参考文献】 *1 Tanaka, T., Takahashi, K., Hirano, H., Kikutani, T., Watanabe, Y., Ohara, Y., ... & Iijima, K. (2018). Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. The Journals of Gerontology: Series A, 73(12), 1661-1667. *2 Kiuchi, S., Takeuchi, K., Saito, M., Kusama, T., Nakazawa, N., Fujita, K., ... & Osaka, K. (2024). Differences in cumulative long-term care costs by dental visit pattern among Japanese older adults: the JAGES cohort study. The Journals of Gerontology, Series A, 79(9), glae194.

上田 彩子(日本女子大学 人間社会学部心理学科 准教授・漫画家)

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