【コラム】米金利上昇の謎解く8日間、大統領選やFOMC-エラリアン
米連邦公開市場委員会(FOMC)が通常の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)より大幅な50bpの利下げを決めたばかりのタイミングで、市場利回りが急上昇すると普通は想定しないだろう。
しかし、それがまさに起きた。驚くべきことだが、米10年国債利回りは、前回のFOMC会合最終日(9月18日)の水準から60bp余り上げている。主な年限全てで利回りは上昇した。
この通常と異なる動きの潜在的諸要因について大部分のアナリストの見解は一致しているが、それぞれの相対的重要性では意見が分かれている。米経済の健全性の行方と、今年の目覚ましい株式市場パフォーマンスの持続可能性を予測する意味で、この問題は重要だ。このなかなか分かりにくい状況は、幸い今後8日間で明確になるはずだ。
直近のFOMC政策発表までの動きから再検討してみよう。この発表自体、いつもとかなり異なっていた。0.25ポイント利下げが当初広く予想されていたが、米連邦準備制度の影響が濃厚な2本の記事が0.5ポイント利下げの可能性がより高いと暗示したと受け止められ、見通しが一変した。
この「リーク」が金融政策に関する対外的な発言を控えるブラックアウト(沈黙)期間中に起きたという事実も奇妙な状況に拍車を掛けた。ブルームバーグ・サーベイランスのアンカー、ジョナサン・フェロ氏は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長をドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁になぞらえ、「パウエル氏のドラギモーメント」と呼んだが、FOMCは案の定、0.5ポイント利下げを発表した。
この利下げをよりハト派的政策姿勢の表れと市場は歓迎するどころか、イールドカーブの至る所で利回りが上昇した。米10年国債利回りが5%を突破する可能性すら一部アナリストは示唆している。
他の多くの国々にも大きな影響を及ぼす利回り設定の変化について、一般に四つの主な要因が挙げられる。
- 米経済がコンセンサス予想より強い状況を示す一連のデータサプライズ
- トランプ前大統領の勝利だけでなく、大幅な通商関税発動に道を開きかねないレッドスウィープ(共和党が上下両院も握る圧勝)を選好する政治「賭け市場」の動き
- 10月公表のFOMC議事要旨を含め、9月18日以降の連邦準備制度当局者からのシグナルで明らかになった政策の後戻り
- 米国債への外国勢の買い意欲が弱まる兆候
これら潜在的要因の組み合わせに大部分の人々が同意し、それらの要因全てが、連邦準備制度理事会のターミナルレート(利下げの最終到達点)がより高くなり、よりゆっくりとそこに向かう方向にトレーダーを動かしている。だが相対的ウエートでの一致はほとんど存在しない。これは景気および市場の見通しにとって重要な問題だ。
今後8日間で、アナリストはこれら要因の相対的重要性を評価するためのさらに多くの情報が得られるだろう。特に注目されるのは、雇用統計と雇用動態調査(JOLTS)データ、幾つもの企業 の利益、選挙結果、そして次回のFOMC会合(11月6、7日開催)だ。市場の指標から判断する限り、今のところ特定の配置に大きく賭けようとする向きはほとんどいないようだ。
(モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Bond Market Responds Oddly to the Fed’s Move: Mohamed El-Erian(抜粋)