ブラジル最高裁、ボルソナロ前大統領に禁錮27年3カ月の判決 クーデター未遂罪など
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ブラジルの最高裁判所は11日、大統領選挙の結果を覆そうとしてクーデターを企てた罪などに問われていたジャイル・ボルソナロ前大統領(70)に有罪判決を下し、禁錮27年3カ月の刑を言い渡した。
最高裁の判事5人は、有罪判決からわずか数時間後に量刑を告げた。
ボルソナロ被告の弁護団は量刑を「途方もなく過剰」だと非難し、「しかるべく上訴」すると表明した。
最高裁の判事団はさらに、被告による公職への立候補を2033年まで禁じる決定も下した。
ボルソナロ被告は逃亡の恐れがあると判断され、自宅軟禁中。裁判の終盤には出廷しなかった。
前大統領はこれまでこの裁判を、自分が2026年の大統領選に出馬できないようにするためのものだと非難してきた。ただし、すでに別件で公職追放処分を受けている。一連の裁判を「魔女狩り」とも呼んでいる。
ボルソナロ被告への有罪判決について、トランプ氏は「とても驚いた」と発言。自分の経験と比較し、「連中が私に対してやろうとしたことに、とてもよく似ている。だが、私相手にはまったく成功しなかった」と述べた。
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、「ブラジルの最高裁判所は不当にもジャイル・ボルソナロ前大統領の収監を決定した」と批判し、「この魔女狩りに対して適切に対応する」と警告した。
ルビオ長官の発言にブラジル外務省はソーシャルメディアで素早く反応し、「アメリカのマルコ・ルビオ国務長官氏が今日発したような脅しは、ブラジルの権限を攻撃し、記録されている事実と説得力ある証拠を無視するもので、我が国の民主主義を脅かしたりしない」と投稿した。
70歳のボルソナロ氏は今後、残る人生を刑務所で過ごす可能性がある。
弁護団は、刑務所ではなく自宅軟禁の継続を求めるとともに、刑期の短縮も訴える方針だ。
弁護団は有罪判決そのものについても上訴するとしているが、複数の法学者はこれは難しいと指摘する。ブラジルでは最高裁判決への上訴は、判事5人のうち2人以上が無罪の判断を示していない限り、認められない。そのため、4対1で有罪判決に至った今回のケースでは不可能とされている。
ボルソナロ被告は、2022年の大統領選で敗れても権力の座に残ろうとしたことにかかわる、罪状5件で有罪となった。
公判で検察は、被告が実際には大統領選よりずっと前から、留任する方法を画策していたと主張。被告が軍幹部にクーデターを提案し、選挙制度の信頼性について根拠のない疑念を広めていたとした。
検察はさらに、ボルソナロ被告がルーラ氏と副大統領候補、さらには最高裁判事の暗殺計画を知っていたと主張した。
判事たちは、前大統領が陰謀を主導したと認めたほか、元国防相2人、元情報機関長官、元治安担当相を含む共謀者7人も有罪とした。
裁判を指揮したアレシャンドリ・デ・モラエス判事は、「ブラジルは、選挙での敗北を受け入れられない政治集団からなる犯罪組織のせいで、かつて20年続いた独裁に戻る寸前だった」と述べ、有罪の判断を示した。
有罪の判断を告げた3人目の判事となり、多数決の結果を決定したのは、カルメン・ルシア判事だった。そのカルメン・ルシア判事も、ブラジルの近年の出来事と、何十年と続いた軍政時代に言及したほか、今回のクーデター未遂を「ウイルス」にたとえ、「放置すれば社会を破壊する」と警告した。
判事5人のうちただ一人無罪と判断したルイス・フックス判事は10日、11時間にわたる演説で、前大統領への起訴内容は無根拠だと主張した。
しかし、カルメン・ルシア判事は11日、ブラジルの民主的秩序が危機にさらされていたと述べ、「権威主義に対する免疫は存在しない」と警告した。