ブラックロックのビットコインファンド、「ETF史上最高のデビュー」

米投資運用大手ブラックロックのiシェアーズ部門は世界中で1400を超える上場投資信託(ETF)を提供しているが、これほど目覚ましく成長したものはなかった。

  業界記録を塗り替えたのは、2024年にローンチしたiシェアーズビットコイン・トラスト(ティッカーシンボルIBIT)。わずか11カ月で資産規模は500億ドル(約7兆8600億円)を上回り、ETFの巨人に成長。これ以上のデビューを飾ったETFはいまだかつてない。

  ストラテガス・セキュリティーズのETFテクニカル戦略担当マネジングディレクター、トッド・ソーン氏はIBITの規模について、20年余り前から販売されている欧州市場に特化したETF50本超の運用資産合計に相当すると、リポートで指摘した。アドバイザリー会社ザ・ETFストアのネイト・ジェレイチ社長は「ETF史上最も偉大なローンチ」と評した。

ビットコイン(右軸)、1日当たりのIBIT資金流出入(左軸)

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、ジェイムズ・セイファート氏は「IBITの成長は前例のないものだ。各種マイルストーンを達成するスピードは抜きんでており、どの資産クラスのETFにも勝る」と指摘。現在の資産水準と経費率0.25%に基づくと、年間約1億1200万ドルの利益が見込めるだろうと分析した。

  IBITの成功はブラックロックの業績に大きな数字を積み上げただけではない。ビットコインそのものの転換点となった。

  11兆ドル余りを運用する投資最大手の支持を得て、ビットコインは初の10万ドル超えを達成し、機関投資家のみならず、かつて懐疑的だった個人投資家も認めざるを得なくなった。

  ビットコインETF実現までの道のりは長く険しかった。2013年にウィンクルボス兄弟が挑戦して以来、証券取引委員会(SEC)による却下や法廷闘争が繰り返された。

  ようやく23年に連邦高裁がビットコインETFを認めたのとほぼ同時期に、投資業界の巨人ブラックロックが参入。かつてはビットコインをマネーロンダリング(資金洗浄)ツールと批判していたラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、「デジタルゴールド」だと考えを改めた。

  ETF化のゴーサインが1月に出ると、ブラックロックをはじめフィデリティ、ヴァンエック、グレイスケールなどがビットコインETFローンチ第1陣となった。現在では12のファンドが合計で約1070億ドルの資産を保有する。

  群雄割拠となったこの世界で、IBITの存在は際立つ。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、エリック・バルチュナス氏によると、500億ドル超えまでのスピードは、後続ETFに5倍の差を付けて断トツのトップ。2位のブラックロックiシェアーズ旗艦ETF、MSCI・EAFEはこのマイルストーン到達に4年近くを要した。

  IBITの保有資産はブラックロックの金ETFを抜き、今年の純流入額は370億ドルと、ファンド全体で3位の規模だった。

iシェアーズ金トラストとiシェアーズ・ビットコイン・トラストの資産総額

  ザ・ETFストアのジェレイチ氏は、ビットコインの暴落がないと仮定して、IBITは25年に金ETF最大手のSPDRゴールド・シェアーズを追い抜く可能性があるとみている。

  一方でブラックロック最大のライバル、バンガードは対照的な姿勢だ。同社はスポットのビットコインETFを提供しないと決めただけでなく、ブローカーを通じた取引さえも認めていない。

  「バンガードのように低コストの株・債券ファンドの分散投資を根強く支持しながらも、小さな割合で投資資産を暗号資産(仮想通貨)に振り向ける投資家は一定数いる」とジェレイチ氏は指摘。暗号資産を標準的なポートフォリオ資産と見なす若い投資家を遠ざけるリスクを冒し、最大の競合相手に「より先進的に考える革新的な資産運用会社」としての立ち位置を許していると同氏は述べた。

  ブラックロックとバンガードの広報担当者はいずれもコメントを控えた。

原題:BlackRock’s Bitcoin Fund Became ‘Greatest Launch in ETF History’(抜粋)

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