DOGEがアメリカ人の個人情報を一元化した巨大データベースの構築に奔走するもセキュリティ対策に懸念ありとの声
アメリカ政府の無駄をなくすことを目的に活動している政府効率化省(DOGE)は、これまで別々に管理されていたデータを統合し、アクセスしやすく、そしてデータの分析を容易にするべく省庁をまたいで作業しています。この活動に対し、一部ではセキュリティ対策への懸念が生じ、必要な手続きが取られていないことを疑問視する声があります。
Why Elon Musk's DOGE is amassing sensitive government data - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2025/05/07/doge-government-data-immigration-social-security/トランプ大統領は、データが複数の組織で別個に管理されている「情報のサイロ化」状態を問題視し、業務の合理化と支出の削減を図る中で組織間のデータ共有を促進するという大統領令に署名しています。この大統領令により、政府の過払いや、政府が詐欺行為に遭っていないかを検知しやすくなることが期待されています。
DOGEもこうした精神にのっとりデータ統合を図っています。例えば社会保障庁に対しては、社会保障に関連する個人情報の統合を指示してアクセスや分析を容易にしようとしているほか、連邦捜査局(FBI)では4つに分断されている人事データの統合を指示し、市民権・移民局では富裕層移民向けのビザプログラムの申請者に関するデータを内部で共有するシステムを構築するよう職員に指示しました。データの統合により将来的な効率化が期待される一方で、強引とも言える改革を嫌う人々もいます。さらにデータの統合に際して基本的なセキュリティプロトコルをDOGEが順守していないことも問題視されています。 例えば、DOGEが構築を進めるビザプログラムに関連するウェブサイトは、通常であれば保護された仮想プライベートネットワーク(VPN)を介して構築するべきところ、されていませんでした。
加えて、通常では連邦政府内でのデータ共有に複数の段階を踏まなければならないところ、DOGEは一足飛びに物事を進めているため、特定個人に不必要に強い権限を与えてしまったり、誰がどの情報にアクセスしたのかという記録を取れなくなってしまったりといった問題が生じているそうです。 また、政府職員が使うPCは技術者による監視対象になることが望ましいところ、DOGEの職員が特別待遇を望み、あえて監視のないPCの支給を求めたなどの指摘もあります。
下院監督・政府改革委員会の民主党幹事のジェリー・コノリー議員は、特に社会保障庁に対する取り組みを取り上げ、データの扱い方に関する内部告発者の懸念を直ちに調査するよう監察官事務所に対して要請しています。 元国家安全保障局のホワイトハッカーであるジェイク・ウィリアムズ氏は、データを統合することはハッカーにとって魅力的で、攻撃しやすくするものであり、国家レベルの攻撃を招くリスクを増大させると指摘しました。 ホワイトハウスはこうした懸念に対し、DOGEのツールやプロセスはアメリカで最も優秀なサイバーセキュリティの専門家たちによって守られていると反論しており、職員の行動は完全に法律に準拠しているとの声明を報道官を通じて発表しています。 またデータを共有することについても、社会保障庁のリーランド・デューデック長官代理は「以前から他の政府機関とデータを共有しており、DOGEとデータを共有することは常識の範囲内です」とのコメントを寄せています。
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