習近平が「もっとも恐れている」展開…イランを助けられず、石油も輸出できない「中国の弱み」とは?(ダイヤモンド・オンライン)
中東情勢の緊迫化で原油価格が急騰する中、中国は備蓄放出や輸出を拒み、逆に輸入を加速させています。世界最大の尿素生産国でありながら、肥料の輸出も厳格に制限。中国指導部が今「もっとも恐れていること」とは?(北海道大学公共政策大学院研究員 王 彦麟) ● 石油の備蓄放出や輸出を拒否 中国が「もっとも恐れていること」とは? 米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦が始まると、国際エネルギー市場は瞬く間に揺れた。これを受けて国際エネルギー機関(IEA)は2026年3月、最大4億バレルの石油備蓄を放出する方針を打ち出した。目的は明確である。原油価格の急騰を抑え、市場のパニックを防ぐことだ。 だが、中国の動きはまったく異なる。 中国はロシアとつながる石油パイプラインを持ち、米国の制裁の影響を比較的受けにくい立場にある。理屈の上では、多くのIEA加盟国よりも余裕をもって危機に対応できるはずだ。それにもかかわらず、中国は石油備蓄の放出に踏み切っていない。ロイター通信によれば、中国政府は国有石油大手・シノペックによる約9500万バレルの備蓄放出提案すら退けたという。 では、中国は何をしているのか。 実際には、むしろ備蓄を積み増している。2026年1〜2月の原油輸入は前年同期比で約16%増加し、3月に入ってもその動きは続いている。また国内の燃料価格については上限を引き上げつつも、国際価格の上昇分を完全には転嫁していない。さらに、精製石油製品の輸出規制も強化している。 ● 安価に輸入した原油を 精製して輸出するだけで利益になるが… この一連の政策は何を意味するのか。
結論は明確だ。中国がもっとも警戒しているのは「価格上昇が経済全体に波及すること」である。 安価に輸入した原油を国内で精製し、それを再輸出して利益を得る――本来であれば合理的なこの行動すら、中国は抑え込んでいる。国内供給を優先し、物価の安定と長期的なリスク管理を重視しているからだ。 同じ発想は、肥料政策にも表れている。 中東情勢の悪化により、肥料の原料となる天然ガス価格が高騰し、供給不安が広がる中、中国政府は国家備蓄から肥料を放出すると発表した。中国は世界最大級の尿素生産国であり、2026年の生産量は過去最高に達する見込みだが、それでも輸出許可は一件も出していない。インドからの要請すら保留している。 ● エネルギー価格の上昇は 政権の安定性に直結する なぜここまで徹底するのか。 エネルギー価格の上昇は、やがて食品価格や生活コスト全体を押し上げる。そしてそれは、社会不安や政権の安定性に直結する。中国指導部はその連鎖を強く恐れている。 2026年、中国政府はGDP成長率目標を4.5〜5%に引き下げた。これは1990年代以来、初めて5%を割り込む水準である。ここにエネルギー価格のショックが重なれば、成長はさらに下振れする可能性が高い。 イラン戦争において、中国が本当に警戒しているのは、戦争そのものではない。それが引き起こす「価格の連鎖反応」なのである。 ● 米国のイラン攻撃で中国の影響力減 ロシアと北朝鮮に頼らざるを得ない では、この戦争は中国の対外戦略にどのような影響を与えているのか。一言で言えば、中国がこれまで築いてきた「非米圏ネットワーク」は、確実に揺らいでいる。 米国はパナマ運河をめぐる圧力を強め、さらにベネズエラやイランに対して軍事行動を展開した。これらはいずれも、中国が影響力を拡大してきた地域である。結果として、中国の対外戦略は大きな制約を受けることになった。 その中で、中国が頼らざるを得ないのがロシアと北朝鮮だ。 かつてロシアはウクライナ戦争で消耗し、中国優位の関係が続いていた。しかし現在、エネルギー情勢の変化がこの力学を揺り戻している。ホルムズ海峡の不安定化により、中国のロシア産エネルギーへの依存度は上昇し、ロシアの発言力は一定程度回復した。 両国関係は再び「相互依存」に近づきつつある。 一方で中国は、北朝鮮との関係強化にも動いている。北京と平壌を結ぶ国際列車の再開、直行便の復活、さらには貿易拡大――これらの措置は偶然ではない。中国が構築してきた対外ネットワークが崩れつつある中で、北朝鮮との関係は「維持すべき最後の安全保障カード」となりつつある。 ただし、ここで見落としてはならない点がある。