見捨てられた極超音速ミサイルが復活、AGM

米空軍は2023年に試射が何度も失敗した極超音速ミサイル=AGM-183A ARRWの実用化を事実上断念していたが、26日「ロッキード・マーティンにAGM-183A ARRWの製造及び配備に関する契約を授与し、試作・テスト段階から生産段階へと正式に移行した」と発表し、奇妙な勝利を手にしてARRWは復活を果たした。

参考:DAF awards ARRW production contract, establishes new hypersonic capabilities 参考:Lockheed Martin to Add Air-Launched Hypersonic Missile to the American Arsenal of Freedom

米空軍が開発を進めていた「AGM-183A ARRW」はブースト・グライド・ビークル(極超音速滑空体=HGV)を搭載する極超音速ミサイルで、この分野で先行するロシアや中国とのギャップを埋めるため「2021年中に量産を開始、2022年中に初期作戦能力を宣言する」と豪語していたが、量産に移行するための試射が尽く失敗して性能確認が進まず開発が難航する。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Pedro Tenorio

2022年5月にB-52Hからの切り離しとブースター点火に成功し、2022年12月の試射でブースターとHGVが想定通りに作動したため量産化に希望が見えてきたが、2023年3月の試射が再び失敗してしまい、ケンドール空軍長官は議会の公聴会で「2023年3月の試射では必要なデータが何も得られず、何が起きたのかを理解するため調査を行っているところだ。年内にあと2回の試射を行う予定で、この結果を元に2025会計年度予算の中でARRWプログラムを継続するかどうかを決めることになるだろう。空軍は現時点においてARRWよりHACMに力を入れている」と語り、試射の結果によってはARRW開発を中止する可能性を示唆した。

その後、米空軍はARRW開発への資金供給を削減し、2024会計年度予算でも1.5億ドルの開発資金を計上したものの調達資金を要求せず、空軍で調達・兵站を担当するハンター次官補は2023年3月に提出した報告書の中で「今のところプロトタイプのテストが終了してもARRWを調達するつもりはない」「2024会計年度予算に計上した資金の目的もARRWの継続開発ではなく、将来の極超音速兵器開発に役立つノウハウとデータの収集だ」と明かし、米メディアも「空軍が問題だらけのARRWを見捨てた」と報じたが、2026会計年度予算にARRW計画を再活性化させる資金(3億8,700万ドル)が計上される。

出典:Air Force photo by Matt Williams

現在審議中の2027会計年度予算にも4億5,200万ドルの資金が計上され、米空軍は26日「ロッキード・マーティンにAGM-183A ARRWの製造及び配備に関する6億9,400万ドルの契約を授与した」「このマイルストーンはARRW計画が試作・テスト段階から生産段階へと正式に移行したことを示している」と発表し、空軍参謀総長のケン・ウィルスバッハ大将も「ARRWの配備によって世界中のあらゆる標的を攻撃する能力が向上する」と述べた。

AGM-183A ARRWは一度見捨てられた状況から生産段階に移行するという奇妙な勝利を手にした格好だが、米空軍が実際にARRWを何発取得するつもりなのか、いつまでに実戦配備するのかなどは不明で、ロシアや中国とのミサイルギャップを埋める一時的な解決策かもしれないが、こうした一時的な解決策は往々にして長期的な解決策に転じることがよくある。

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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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