“伝説の記者”が発掘…ホームレスからNBAスカウトが評価するまでに成長した大学選手の話(バスケットボールキング)
エイドリアン・ウォジナロウスキーという伝説のNBA記者をご存じだろうか。昨年9月まで「ESPN」の名物レポーターとして活動し、誰よりも先に数々の衝撃的なブレイキングニュースを報じてきた。 【動画】ホームレスからNBAスカウト注目の選手へ…グラホバッツ インタビュー&プレー映像 現在、ウォジナロウスキーは「ESPN」を退職し、同氏の母校であるセント・ボナベンチャー大学バスケットボール部のゼネラルマネージャーを務めている。 セント・ボナベンチャー大学は最近、プロのスカウトを招き、所属選手が公開ワークアウトや測定を受ける見本市、通称“プロデー”を開催。ミッドメジャー校がプロデーを開催するのは異例のことだったが、ウォジナロウスキーの存在もあって、NBAから20チーム以上のスカウトが駆けつけ、昨シーズンまでニューヨーク・ニックスを率いたトム・シボドーの姿もあった。 そこには殿堂入りの名センター、ビル・ウォルトンを彷彿とさせる青年がいた。名前はジョー・グラホバッツ。彼は数カ月前まで車の中で寝泊まりをするホームレス生活を送っていた選手だった。グラホバッツをリクルートしたのは他でもないウォジナロウスキーであり、この選手を勧誘するためだけに飛行機で西海岸に赴いたほどだ。 カリフォルニア州サンタアナ出身のグラホヴァツは、短大のフラートン・カレッジでプレーした後に同校へと編入。同選手はカリフォルニア州年間最優秀選手賞を受賞する実力者で、平均15.9得点、6.6リバウンド、2.2アシスト、2.7ブロックと上々のスタッツを記録していた。フィールドゴール成功率62パーセント、3ポイント成功率39パーセントとビッグマンながらショットも正確で、アメリカ西部では最も多くリクルートを受けた選手ながらも、数々のパワー4カンファレンスの大学からのオファーを断り、セント・ボナベンチャー大学を選択した。 セント・ボナベンチャー大学のマーク・シュミット監督は、グラホバッツの恵まれた体格、卓越した運動能力、ストレッチ性能、フロントコートにガードスキルをもたらす技術の高さなど、プレーヤーとしてのマルチな素質を高く評価。また、NBAの現場を長年見てきたウォジナロウスキーもその能力と将来性に惚れ込んでいる。 「ジョーのリクルート活動を始めた瞬間から、彼がバスケットボール選手としてだけでなく、人間としてもユニークな人物であることに気付きました。ジョーは、3レベルのスコアリング、パス、シュートブロック、効率性、そしてたゆまぬ努力で試合に影響を与える能力があり、アトランティック10カンファレンスだけでなく全米でもセント・ボナベンチャー・ボニーズ(チーム名)の選手として活躍できる可能性を秘めています」 グラホバッツはフラートンに辿り着くまで、約1カ月にわたるホームレス生活を送り、家庭の事情から車中泊を余儀なくされ、毛布1枚で眠っていた。警察に見つかって追い払われることもあり、日中は牧草店で働き、休日は書店の無料Wi-Fiで映画を観て過ごしていた時間を潰す日々。そして夕方になるとフィットネスチェーンで仲間たちとバスケに勤しみ、 シャワーは毎日ジムで済ませていたという。 しかし、ポテンシャルに満ちたビッグマンは、この1カ月のホームレス生活が人生を変えたと語る。 「自分を見つめ直し、男になる方法を学びました。まだ学ぶことばかりですが、毎日を学びの過程として受け止めています。少しずつ前進する日もあれば、大きく成長できる日もある。とにかく、毎日努力するだけです」 モチベーション、努力家、そして爽やかな青年であり、チームのためにプレーできるグラホバッツ。練習にも熱心で、時には「帰れ」と言われる日もあるそうだ。 視察に訪れていた匿名のNBA関係者はこう語る。 「彼はフロアを広げられるストレッチ型ビッグマンですね。スリーポイントも決めていました。あれだけスカウトが集まっていたら、誰かが確実に惚れるはずですよ」 今はセント・ボナベンチャー大学でのプロセスを信じて、頭を下げ、前に進み続けるだけと、グラホバッツはどこまででも謙虚な姿勢を崩さない。 ウォジが見つけた才能はいつかの日かNBAに到達し、スタジアムで大声援を浴びる日を夢見ている。 文=Meiji
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