現役ヤクザが苦笑する歌舞伎町“立ちんぼ少女”の“異常な実態”…「この辺に立つな」と注意すると「うるせえジジイ!」とカメラを向けられ…
「この辺に立つな」と注意しても、「うるせえジジイ!」と怒鳴られ、カメラを向けられる――。かつて歌舞伎町を牛耳っていたヤクザの幹部は、タガが外れた20代の「立ちんぼ」少女たちの実態に苦笑する。
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暴力団排除条例によって「ケツ持ち(面倒見役)」のヤクザが一斉に消えた歌舞伎町。そこにはどんな景色が広がっているのか。久田将義氏の著書『教養としての新宿・歌舞伎町』(朝日新書)の一部を抜粋、再編集したものを特別版[前編]として公開する。
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タガが外れた少女たち
「最近は俺たちが『この辺りに立つなよ』って言っても、女の子は『うるせえジジイ!』とか言ってくる。それにいちいち対処していたらくだらないトラブルになるだけですよね。それで、すぐカメラ向けてきて。それがリアルですね、今は」と苦笑いしながら語るのは指定暴力団二次団体幹部B氏。A氏とは別の組織だ。いかにも、イケイケの外見のB氏に「うるせえ」と怒鳴る20代前半の女の子。タガが外れている。B氏の話を聞いてそう思った。
写真はイメージ ©︎maruco/イメージマート
アウトサイダーはアウトサイダーなりの筋が、あったはず。けれどここ15年あまり暴力団の構図そのものが変わってきている現在、筋も彼らなりのルールも少しずつ変わらざるを得なくなってきている。そして、一般人の我々からすれば、それによって歌舞伎町を歩きにくくしているような気がしてならない。20代前半の女の子がヤクザに怒鳴る光景は、矛盾した言い方かもしれないがどこかおかしい。
B氏にその辺りを聞いてみた。A氏の話の裏付けにもなるような返答だった。
仕切れない条例を作ったなら、警察が取り締まるべき
――暴排条例が施行されていなかったときはヤクザが仕切っていたじゃないですか。みなさんから見て雰囲気がおかしくなっている感じはしますか?
B氏 トー横は収まってきても、あのへん(大久保公園周辺)だけは収められないですね。最初のほうは、けっこう行っていたんですよ。こちらで仕切れないような条例を作ったのだから、その代わりに警察が取り締まるべきでしょう。違いますか?
この関連で言えば、ホストの売掛金問題もそうである。売掛金(ツケ)が支払えない客がホストから闇金や風俗を紹介されるという問題が顕在化していた。立ちんぼを語る上で、この問題は避けて通れない。メディアでこの問題が取り沙汰された結果、2025年5月、悪質ホストクラブを規制・罰則化する改正風営法が衆議院で可決された。が、未だに立ちんぼは立っている。その理由は、ホストとメン地下への「貢ぎ」の変化である。B氏が実情について語る。
デリヘルや箱ヘルでは足りない“推し活の資金”
――ホストとメン地下にはまって立っている子がほとんどという話は、聞いています。割合で言うとどちらが多いですか?
B氏 同じぐらいですね。両方行っている子もいるし。それと友達が友達を呼ぶみたいな感じで、多くなっていますね。
――ホストとメン地下が立ちんぼをやらせているという図式になりますか?
B氏 まず、メン地下の場合は売掛けというシステムではないのでやらせているということではないですね。つまり、ファンは自分の推しのためのポイントっていうのがあるんですよ。それを貯めて、推しとどこかに遊びに行ったりとかがあって普通だったら稼げない額を使うわけですよね。
――ホストはいまだに変わらずですか?
B氏 表では売掛けはないって言っているけど、言葉を換えて前入とか、前もって料金を預かるとか、そういうのがあるんですよ。結局はそんな感じで、行っている子だったら最低でも月300万円から350万円はホストの推し活に必要でしょ。
――それは大変ですね。
B氏 普通のデリヘル(デリバリーヘルス)とか箱ヘル(店舗型ヘルス)だとそれだけの金ってなかなか難しいじゃないですか、ソープにしてもそうだし。結局あそこに立っているメリットは、即金でまるまる自分のとこに入るからですよね。それと、店舗型ヘルスと違って客を選べますからね。
もちろんこれらの対策は必要であろう。しかし、根本的なことを言うと、立ちんぼの原因は30年間の自民党を中心とする与党の経済政策の失態だと僕は考えている。ずっと日本は不況のままだ。考えてほしい。豊かな国に立ちんぼはいない。いても、外国からやってきた出稼ぎであり、日本人が日本の繁華街で立つことはなかった。貧困が我が国全体の問題となっているが、歌舞伎町の片隅にもその一端が見られる訳だ。
ショートカット化する思想の流れ
立ちんぼのケツ持ちがいなくなったことは何を意味するのだろうか。B氏は歌舞伎町の変化についてこう語る。
B氏 昔いたケツ持ちが一斉に捕まったことがあったんですよね。十何年前か。面倒見役だった、某組織の捕まった人間とは昔、交流があった。やっぱり女の子が1日ショバ代を払うという形で面倒見ていたんだけど、その人間が何をしていたかというと、女の子が今日はご飯食べられないとか寝るとこないとか言っていたらカラオケ館を20時とかから借りっぱなしにして自由に出入りさせて、そこで飯食わせたり寝かせたり、そういう感じでした。
ただ、コロナの前と後で全然、歌舞伎町の表情が違います。まるっきり、もう180度違います。自分も歌舞伎町にはずっといますけど。
――どう違うんですか?
B氏 街に出てくる人間が違う。
――立ちんぼのことですか?
B氏 立ちんぼもそうですけど、歌舞伎(歌舞伎町に慣れている人はこのように略して言う)に飲みに来ている人も違う。任俠の人間なんかも昔は夜になるとみんな出てきていましたけど、今はほとんど見かけないです。週末ぐらいは出てきている人はいますけど。
“ヤクザの抗争の時代”を知らない少女たち
「歌舞伎町は怖い街」。そういうイメージがついていたのは戦後から昭和50~60年くらいだった。ヤクザの抗争が激化。酔っ払い同士の喧嘩もある。
そんな街の中に立つのは並大抵の度胸ではあるまいと思ってしまうのだが、彼女らは立ち続ける。時代は移ろい、上記の事件や騒動など知らないから、というのが大きいのだろう。しかしそれでも「歌舞伎町は歌舞伎町」である。毎晩どこかで大なり小なりもめ事が起きている。そのもめ事に巻き込まれても良い、あるいは巻き込まれない自信があるのか。
誰も守ってくれない(ケツ持ちがいないという意味で)彼女たちは、ハイリスクハイリターンの選択をした。ミドルリスクミドルリターンでは売掛けを払ったり、メン地下を推すことができない。その日、春を売った料金は全額自分の財布に入る。今、流行のショートカットの思想である。
ショートカットの思想
ショートカットの思想とは、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と言われている犯罪形態を思えば分かりやすい。バブル期の犯罪は、総会屋などのスキームで複雑化されていた。しかし現代の犯罪は、「金のある人間からとっちまえ」とSNSで集まった人間が個人の家に押し込み、強盗を働くようになった。複雑なスキームなどどこへやら、ショートカット化された犯罪だ。
地道に金を稼ぐといった考えは「ウケない」のだ。立ちんぼの考え方もショートカットである。店など通さなくて良い。立っていれば客がつく。今ではヤクザが立ちんぼを管理することもなくなった。タガが外れたのである。タガが外れた彼女たちがタガが外れた歌舞伎町に集まってきた訳だ。
この状況が良いとは決して思わない。けれど、ショートカット思想の流れは止まらないだろう。そしてタガが外れた状態も変わらない。
歴史を顧みても、立ちんぼはなくならないだろう。クサいものに蓋をしても無駄だ。戦国時代から暗渠として脈々と流れてきている、人類最古と言われているこの「職種」は、もはや人類の歴史として定着しているのだ。
〈「親父をどこまで上げるかが本分」「心でつながっているから」…誰も憧れなくなった時代に、それでも彼らが“ヤクザ”を続ける理由〉へ続く
(久田 将義/Webオリジナル(外部転載))