「日本は決して譲歩するな」、尖閣衝突「sengoku38」一色正春氏が「斬首」投稿に
中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事がSNSに、高市早苗首相への「斬首」投稿をしたことを受け、日中の応酬が激しくなっている。2010年の沖縄・尖閣沖中国漁船衝突事件で、中国漁船による海上保安庁巡視船への体当たり映像を公表した「sengoku38」こと元海上保安官の一色正春氏が産経新聞の取材に応じた。日本政府は、当時のように引いたような対応はせず、国際社会に日本側の正当性を毅然と訴えるよう語った。
「すぐに国外追放すべきだったのでは…」
「一部のメディアが大阪総領事の発信について『日本が悪い』『台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁が悪い』と言っている。本来は大阪総領事が『その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない』とSNSに書き込んだ時点で、中国にすぐお帰りいただくべきだった。『もう二度と来るな』と国外追放すべきだったのではないですかね」
一色氏は語った。
日本政府は、大阪総領事の投稿での不穏当な表現ぶりを問題視し、外交当局などを通じて非難している。だが、中国側は応じず、事態は沈静化しない。
「中国という国は言葉だけの非難だけでは、屁とも思わないことは過去の例を見ても明らか。彼らの自称制裁を黙って受けるのではなく、日本から能動的に仕掛けるべきだ」
「石破茂前政権下で昨年12月、岩屋毅外相が『中国人観光客向けの短期滞在ビザ(査証)』を10年間に何度でも利用できるようにした緩和措置を見直すなど、日本側にできることはたくさんある。例えば、中国は『留学自粛』と言っているが、こちらから留学の条件を厳しくするとか、各種ビザの要件の厳格化を検討してはどうか。日本が悪いから中国が嫌がらせをしているような、一方的な印象を世界に与えかねません」(一色氏)
「渡航警戒レベルは上げるしかない」
広東省深圳(しんせん)市で昨年9月、日本人学校に通う10歳の男児が中国人に刺殺された。こうした凶悪事件の被害者が邦人に出ても、日本から中国への渡航警戒レベルは『レベルゼロ』のままだ。
一色氏は「このままでいいわけがない。スパイ摘発を担う中国の国家安全省が、日本人の摘発を強化するかのような声明を発表している今、何もしなければ日本人が拘束されかねない。日本側は警戒レベルをもう、上げるしかない」と語る。
中国をつけあがらせたきっかけ
「中国をつけ上がらせた原因はさまざまあった。15年前、民主党政権下で起きた中国漁船衝突事件が、大きなきっかけになった可能性はあるでしょう」
尖閣諸島沖で2010年に起きた中国漁船衝突事件で、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」に当時投稿された事件のビデオとみられる動画中国漁船衝突事件で、海保は巡視船にぶつかってきた中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕したが、当時の菅直人政権は処分保留のまま釈放した。同事件があってから、日中両国が半世紀ほど前に国交を樹立して以後、棚上げされてきた尖閣諸島をめぐる問題が顕在化した。2012年に日本側が国有化してからは、中国の反発はより激しくなっていった。
一色氏はインタビューの最後で、こう結んだ。
「中国に対し、漁船衝突事件当時のような場当たり的な譲歩を繰り返すようなことがあれば、事態はさらに悪化するだろう。決して引いてはならない」