「メモ帳」の対応で脚光を浴びるMarkdown AI時代の“文書共有のスタンダード”になるか:小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)
「Markdown」というテキスト記法をご存じだろうか。ソフトウェア開発などで米GitHubを利用する方は、Readmeファイルなどですでにおなじみかもしれないが、一般にはまだそれほど利用されていないように思う。
Markdownはテキストを記述する際に、タイトルの前に「#」を付けて「見出し」に指定したり、文章を「**」で囲むことで太字にしたりといった装飾ができる。一般のテキストエディタでこうした文章を作り、拡張子を.txtではなく.mdにして保存すると、Markdownファイルとなる。対応テキストエディタやビュワーで開くと、その指定通りにレンダリングされて表示されるという記法である。
やっていることは、HTMLに近い。「ホームページ」全盛時代にHTMLタグを手書きしたことがある方は、イメージがよくお分かりだろう。
これまでMarkdown記法でまとまった文章を書く人は、自分でePubファイルを作って電子出版するといった目的があった。その理由は、ePubファイルを作ってくれるWebサービス「でんでんコンバータ」の入力書式が、Markdownファイルだからである。
だが2025年6月の米MicrosoftのWindows 11のアップデートで、標準プレーンテキストエディタである「メモ帳」が、このMarkdown記法に対応した。プレーンテキスト表示とMarkdown表示に切り替えられる。
また26年1月14日には、さらに対応が拡充し、表組ができるようになった。これもMarkdown記法の機能である。
そもそもMarkdown記法は、複雑化したHTML記法に対してもっと簡単な記述でテキストの装飾ができる軽量マークアップ言語として、04年にJohn Gruberが提唱した。当初は厳密に仕様が決まっておらず、簡易ドキュメントしかなかったため、さまざまな「方言」が生まれる結果となった。
この事態を収拾させるため、厳密な仕様を決めるプロジェクト「CommonMark」がスタートし、現段階ではこれが標準仕様となっている。一方でこの「CommonMark」を基準にしながら独自に拡張を続けている、GitHub Flavored Markdown(GFM)もある。上記の表組の記法も、GFM独自の仕様だ。
「メモ帳」でGFMの記法に対応したということは、開発者向けの利便性を図るという意味もあるだろう。だがプレーンテキストの王者である「メモ帳」がMarkdown記法に対応したということは、今後の装飾テキストはMarkdownがデファクトスタンダードになる可能性もあるのではないか。
例えば誰かと論文やレポート、手順書などの文章を渡す、交換するという場合を想定してみよう。一番互換性が高いのは、プレーンテキストで渡すことである。だがプレーンテキストには見出しや階層化といった装飾性がないため、長文になるほど文章全体の構造を見通すのが困難になる。
次に考えられるのは、MS Wordで書いて渡すという方法だ。これはいわゆるワープロソフトなので、文章の装飾性という点では優れている。ただ、そもそもは紙に印刷する文章を整形するソフトであり、多くのユーザーがいるのでデファクトと呼んでもいいかもしれないが、本当に全ての人に対して問題なく互換性があるフォーマットかと言われると、まあ多少は難がある。
HTMLは、タグを使って文章の装飾や構造化が可能であった。それはWeb上にテキストを置いたときに、見栄えがいい。タグはプレーンテキストでも表記することができるため、人間の可読性がある。ただこれはのちに拡張されすぎて、可読性は著しく下がった。公開する文章には向いているが、個人間でやりとりするフォーマットとして使われるという例はあまり聞かない。
多くの人はすでに忘れていると思うが、RTF(Rich Text Format)も装飾性を備えたフォーマットではあった。87年にマイクロソフトによって策定され、OSの垣根を超えて利用できる装飾テキストフォーマットという思想は、当時としては画期的であった。Windowsでは簡易版のWordとも言える「WordPad」で標準対応していた。
だが24年秋のWindows 11 Ver.24H2以降では、WordPadは付属しなくなった。RTFは引き続きWordなどでも対応は続くが、標準ツールのバンドル終了は、すでに役目は終わったということなのか、普及しなかったのでやめるということなのか。いずれにせよ、今テキスト交換フォーマットとしてRTFを使う人は少数派であろう。
PDFはテキスト配布フォーマットとして普及しているが、ある意味変えられたくないテキストを配布するための手段である。機器のマニュアルなどで多く使用されているものの、受け取った側が編集できないので、双方向性がない。
PDFの総本山である米Adobeも、技術ドキュメントはMarkdownで公開している。またその指南サイトも存在する。
そんな中で有望視されるのが、Markdownと言えるのではないだろうか。WebブラウザやWordPadのような標準的プラットフォームがなかったところ、「メモ帳」が対応した。またバイナリではないのでプレーンテキストとして開いても可読性があり、全然内容が読めないということもない。
すでに米GitHubのドキュメントがそうであるように、今後はフリーソフトのreadmeファイルなども、Markdownで記述されてくるかもしれない。
あるいはこうしたWeb記事の原稿の入稿も、やがてMarkdown指定になるかもしれない。
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