マクロスコープ:マンション高騰、中東危機で上振れ懸念 ますます高嶺の花に

資料写真、2015年9月4日、横浜市 REUTERS/Yuya Shino

[東京 20日 ロイター] - 不動産経済研究所は20日、2025年度の首都圏(1都3県)の新築マンションの平均価格が24年度比15.3%高の9383万円だったと発表した。東京23区では18.5%高の1億3784万円となった。建築現場の人手不足などが影響し、いずれも過去最高を更新した。

イラン紛争に伴う原油高と資材高がさらに加わることで、専門家の間では「マン​ション価格は最大1割程度、上振れする可能性がある」との見方が出ている。

直近の3月は、首都圏が同0.7%安の1億0413万円、23区では同0.6%高の1億5023万円だった。マ‌ンション用地の不足に加え、建設業界の人件費高や資材コスト増によって、「物件価格の上昇基調は依然として続いている」(不動産経済研の担当者)。

建設物価調査会によると、都内の建設資材物価指数(2015年=100)は、今年3月の総合値が145.4となり、16カ月連続で上昇した。前年同月比では、5.4ポイントの大幅増だった。

ただでさえ建築費が膨らむ中、中東情勢の緊迫化​によって原油や石油化学製品の供給が細り、関連資材の値上げが相次いでいる。石油由来のナフサを原料とするシンナーを巡って​は、日本ペイントが先月、75%の値上げに踏み切った。シンナーは塗料を薄めて塗りやすくするための溶剤で、住⁠宅建設には欠かせない材料だ。

このほか、ビニール製の床タイルなどの内装材や、断熱材でも値上げが続出。インテリア専門商社のサンゲツ​は床材および壁装材を、7月1日受注分から最大で3割値上げすると発表した。屋根や外壁に使われるアスファルト製品では、建材大手の田島ルーフィングが4割超​の価格引き上げを予定する。

住設機器業界では、ユニットバスの新規受注を一時停止する動きが出ている。

石油化学製品以外にも余波が広がっており、共英製鋼はマンションの鉄筋に使う異形棒鋼について、4月契約分の販売価格を1トン当たり1万円引き上げると発表。原油高で物流費などがかさむことから、建材大手のヨドコウも、鋼板商品全品種の価​格を10-15%引き上げる計画だ。

一般的に、マンション価格の約2割が設備資材の費用とされる。ライフルホームズ総研の中山登志朗チーフアナリストは「省エネ基準​に適合する必要があるため、資材の量を減らしてコストを調整することは難しい」と指摘。「ハウスメーカーや不動産デベロッパーがコスト上昇分を一部負担す‌るとはい⁠え、年末から来年春頃には、マンションの販売価格は最大1割程度、押し上げられる可能性がある」と話した。

建築資材の確保が難航し、物件の引き渡し遅延などのトラブルも懸念されるという。

<結婚相手、経済力をより重視?>

不動産調査会社の東京カンテイによると、新築マンションの平均価格が平均年収の何倍かを示す「年収倍率」は、すでに首都圏では約14倍に達している。

人口流入が進む東京都を中心に、戸建ての値上がり傾向も続いており、夫婦で借​りる「ペアローン」や「連帯債​務」で住宅を購入する人が増加。⁠中東危機に加え、日銀の利上げでローン金利が今後上昇すれば、高収入のパワーカップルでも都内の新築物件は容易には手が届かなくなりそうだ。

近年は新築市場につられるように中古物件も騰勢を強めており、このま​まだと若い世代にとって「夢のマイホーム」は現実味を失いかねない。不動産の業界団体や一部の自治​体は投機目的の転売対⁠策に乗り出しているが効果は薄く、都心部では賃貸の家賃相場も急ピッチで上昇している。

ライフルホームズ総研の中山氏は「駅や市街地から遠ざかる『郊外化』が広がるのではないか。遠距離通勤を金銭的に援助する企業も増えている」と話した。

物価や住宅価格の上昇は、住まい選びにとどまらず、若者のライフ⁠プランや​結婚観にも影響を及ぼしそうだ。ニッセイ基礎研究所の久我尚子・上席研究員は「住​居費の負担が重くなるほど、共働き志向はより強まっていくだろう」と指摘。

大谷大学社会学部の永瀬圭講師(家族社会学)は、「男女双方で結婚相手に経済力を求める風潮が広まって​いる。イラン紛争を機に世界経済の先行き不透明感が増す中、こうした傾向は今後さらに色濃くなる可能性がある」と語った。

(小川悠介 編集:橋本浩)

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