学生によるAIを用いた不正行為は2023~24年度に約7000件発生、学生1000人当たりの不正件数は5.1件で前年度から3倍以上急増も「氷山の一角」という声も

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イギリスでは何千人もの大学生がChatGPTなどのAIツールを悪用していることが、イギリスの報道機関であるThe Guardianの調査により明らかになっています。一方で、それまで学生が行ってきた不正行為の約3分の2を占める「盗作行為」は、著しく減少していることも判明しています。

Revealed: Thousands of UK university students caught cheating using AI | Higher education | The Guardian

https://www.theguardian.com/education/2025/jun/15/thousands-of-uk-university-students-caught-cheating-using-ai-artificial-intelligence-survey

The Guardianが行った学術倫理違反に関する調査によると、2023~2024年度にAIツールを用いた不正行為が約7000件確認されています。これは学生1000人当たり5.1件のAI関連不正行為が起きているということです。一方、2022~2023年度に確認されたAI関連不正行為の件数は、1000人当たり1.6件であったため、不正行為が急増していることがよくわかります。 2024~2025年度の学生によるAI関連不正行為の件数は、5月時点ですでに急増しており、学生1000人当たり約7.5件です。しかし、専門家は「AI関連不正行為」として報告されているのは、「氷山の一角に過ぎない」と指摘しています。

2019年から2020年にかけての「生成AIが広く普及する以前」のタイミングでは、大学生が行う学術上の不正行為の約3分の2を「盗用」が占めていました。その後、新型コロナウイルスのパンデミック期間中に、多くの評価がオンラインに移行したため、盗用はさらに深刻化していきます。しかし、生成AIツールの登場により、不正行為の性質は変化しました。 The Guardianの調査によると、従来通りの盗用(Plagiarism)が行われた件数は、2023~2024年度には学生1000人当たり15.2件にまで減少しました。この数字は2024~2025年度(5月まで)には約8.5件にまでさらに減少しています。 以下は、学生1000人当たり何件の不正行為が行われているかを示したグラフで、青色が「盗用」、赤色が「AI関連の不正行為」、緑色が「その他の不正行為」です。

なお、The Guardianは情報公開法に基づき155の大学に連絡を取り、過去5年間の学術上の不正行為、盗用、AI関連の不正行為について、立証済み事例の情報開示を要求しました。このうち131の大学は何らかのデータを提供しましたが、すべての大学が不正行為の年度ごと、あるいはカテゴリごとの記録を情報開示したわけではないそうです。 情報開示に応じた大学の27%以上が2023~2024年度にAIの不正使用を不正行為の独立したカテゴリとして記録しておらず、大学側がまだこの問題に取り組んでいる段階であることがよくわかります。 また、AIによる不正行為が未検知のままになっているケースも十分に考えられます。実際、高等教育政策研究所が2025年2月に実施した調査によると、学生の88%が課題にAIを利用していることが判明しました。一方、2024年にレディング大学の研究者が独自の評価システムをテストしたところ、AIが生成した課題を提出しても、94%の確率で不正が検知されないことが明らかになっています。

レディング大学の心理学准教授であるピーター・スカーフ博士は、「発覚したのは氷山の一角でしょう。AI検出は、コピーされた文章が確認できる剽窃(ひょうせつ)とは全く異なります。そのため、AIの使用が疑われる状況では、AI検出器(もし使っているなら)がAIの割合をどれだけ示したとしても、それを証明することはほぼ不可能です。これは、学生を誤って非難したくないという思いと相まってのことです」「学生が受けるすべての評価を単純に対面式に移行するのは現実的ではありません。しかし同時に、たとえ学生たちがAIを使用しないように指示されていても、それが検知されないままAIを使うであろうことを、教育業界は認識しなければなりません」と指摘しました。

The GuardianはTikTokでAIによる作成ツールやエッセイ作成ツールを学生に宣伝する動画を数十件発見しました。これらのツールはChatGPTによって生成されたテキストを「人間化」することで、学生が大学のAI検出装置をすり抜けるのに役立つそうです。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの学術倫理研究者であるトーマス・ランカスター博士は、「出力の編集方法を知っている学生がAIを適切に使用した場合、AIの不正使用を証明するのは非常に困難です。学生たちがこのプロセスを通して学び続けていることを願っています」と述べました。 さらに、「大学レベルの評価は、たとえ教育者として正当な理由があって設定しているとしても、学生にとっては無意味に思えることがあります。重要なのは、学生がなぜ特定の課題を完了する必要があるのか​​を理解できるように支援し、評価設計プロセスに学生をより積極的に参加させることです」「筆記試験の代わりに試験をもっと活用すべきだという意見をよく聞きますが、暗記や知識の定着の価値は年々低下し続けています。AIに簡単に置き換えられないスキル、例えばコミュニケーション能力や対人スキル、そして学生が新しいテクノロジーに積極的に取り組み、職場で成功するための自信を持てるようにすることに焦点を当てることが重要だと考えています」とも語っています。

政府の報道官は、イギリス政府が国家技能育成プログラムに1億8700万ポンド(約370億円)以上を投資しており、学校でのAI利用に関するガイドラインを公表していると言及。さらに、「生成AIは教育を変革する大きな可能性を秘めており、私たちの変革計画を通じて刺激的な成長の機会を提供します。しかし、AIを教育、学習、評価に統合するには慎重な検討が必要であり、大学は学生を将来の仕事に備えさせるために、そのメリットをどのように活用し、リスクを軽減するかを見極める必要があります」と述べました。

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