【グルメの極み】伊勢丹マ・パティスリー2025の「タコスとポテサラのパフェ」(3300円)が衝撃体験だった / スイーツの進化もここまできたか…
今や、一億総グルメ社会である。各種SNSもテレビもYouTubeもグルメネタであふれている。伊勢丹のグルメ系催事などはその辺のお祭りもびっくりの大混雑だ。
というわけで、今回やってきたのは2025年5月27日~6月2日まで伊勢丹新宿店6階で開催中の「マ・パティスリー2025」というスイーツの祭典。世界で活躍するシェフのブランドや気鋭のパティスリーなど36ブランドが集結するという。
ケーキやパフェ、クレープなど趣向をこらしたメニューが勢揃いしているのだが、とんでもないパフェが紛れ込んでいた。 「タコスとポテサラのパフェ」である。しかもお値段3300円ときた。
・異色すぎるパフェ
その不思議なパフェを販売していたのはKazu Bake(カズベイク)というお店。さいたま市の宮原にあるスイーツ店で、スパイスとハーブが効いた独創的なお菓子やパフェで人気のお店らしい。
メロンのケーキやプリン、焼き菓子、チョコレートなど見た目も美しいお菓子がたくさん並んでいる。
そしてイートインで発売しているパフェが2種類。
「トロピカルマンゴーとミストバレーのパフェ」(1日50点限定 2970円) こちらはマンゴーと紅茶をメインにして、ライムや梅、オリーブと岩塩のサブレを組み合わせたものらしい。マンゴーと紅茶にアクセントとなる異素材を組み合わせた雰囲気。すごく美味しそう。
「タコスとポテサラのパフェ」(1日50点限定 3300円) 問題はこちらである。甘いのかしょっぱいのかすらよくわからない。ただ、見た目はめちゃくちゃオシャレそうである。先日、江川記者が東武チョコミントフェアのチョコミントコロッケの記事を出していたが、おかずかスイーツかよくわからない食べ物が今流行ってるのかもしれない。
・食べるしかない
会場には他にも気になる店やスイーツは山ほどあったのだが、一番味の想像ができないのは「タコスとポテサラのパフェ」である。
しかもお値段は3300円。自分が一般客として来場したと考えると、1500円なら「ネタ枠」として手を出せるけど、お腹の空き具合とか懐具合を考えたら絶対迷う。他にも美味しそうなパフェとかクレープがたくさんあるのだから……。
こういう、人が手を出しづらいものに手を出すのがジャーナリズムだと思う。ちなみに、カズベイクにはたくさんの人が並んでいたが、私の前後の人はマンゴーのパフェやケーキ類を注文していた。
・美しすぎる怪パフェ
待つこと15分ほど……。「タコスとポテサラのパフェ」は私の元へとやってきた。
パッと見は、華やかな装飾のパフェ。だがしかし、よ〜くみると、様子がおかしいのである。パフェの上に食事とお菓子が混在している。
もしかして、全部甘いお菓子に仕立ててあるのか、あるいはシャーベットなどが甘くない食事系のパフェになっているのか?
かなりドキドキしながら食べると……。そのどちらでもなかった。
まず、一番上に飾られているのは小さなタコス! 中にはアボカドのワカモレやトマト、チーズが入っている。齧ってみると、ちゃんとタコスしている! 皮もワカモレも美味しい。
そして、羽のように飾られているのは「チェダーチーズのメレンゲ」。黄色い模様のようなものは溶けたチェダーチーズである。メレンゲ部分は甘いけど、チーズはしっかりしょっぱい。
その間に入っているのは日向夏のシャーベット。こちらはかなりさっぱりした柑橘のシャーベット。皮も乗っていて、香りがすごく良い。
そして、驚くべきことに柚子とベーコンのポテサラが入っているのだ……! かなり酸味が効いた味わいだけど、おかずとして成立する味わいになっている。フランスパンに乗せて食べたら美味しそう……。
高級レストランの前菜みたいな味と、甘じょっぱいスイーツを交互に食べるという感じ。おかずっぽい味と、お菓子っぽい味をつないでいるのが柚子の酸味という感じだ。奇想天外な組み合わせだけど、ひとつひとつは手が混んでいて美味しい。
・中段にびっくり
で、ベーコンとゆずのポテサラを食べていてびっくりしたのが、下から濃厚なチョコムースの層が出て来たこと。産地にこだわったカカオを使っているらしく「チョコムース(グアナラ70%)」と説明が書かれていた。
甘いだけのチョコムースではなくて、酸味とかカカオの苦味が感じられるような、大人の味わい。これをパッションフルーツのソースと一緒に食べる。
なるほど、ここからは甘いゾーンに入るんだな……と安心したのも束の間。
下の層の日向夏とレモングラスのジュレを食べてびっくり! めちゃくちゃクミンの匂いがするパイナップルが出てきたではないか。
いきなりケバブ屋さんに飛ばされたような香りとでもいえばいいのか。肉料理に添えてあるパイナップルのソテーみたいな味わいが最後にガツンと存在感を放って終わるのだ。
・最初から最後まですごい食体験
なんというか、「タコスとポテサラのパフェ」は甘いとかしょっぱいとか、甘じょっぱいとか、そんな次元の食べ物じゃなかった。
このパフェは盛り付けられたものを全部グチャグチャに混ぜて食べるというよりは、一つ一つ味わって食べつないでいくのが正解かなあと思った。
パフェという名前でありながら、コース料理を食べているような感じとでもいえばいいのか。
タコスも、ポテトサラダも、日向夏のシャーベットもチョコムースも、それ単体でものすごく完成度の高い味わいになっているのだ。
ひとつずつ出されてもちゃんと料理として成立する味。それをスパイスの香りや柚子の酸味でつないで食べていく。
なんとも不思議な食体験だった。これはスイーツかと言われたらNOだし、食事かと言われたらそれもNOである。このパフェは相当なこだわりとセンスがないと作れないと思う。全然違うジャンルの曲を組み合わせてつないでいくDJみたいでもある。
3300円って高いんだけど、一品一品の手の込み方とかこだわりを考えたら、そりゃ3300円になるよなあと思う。
好き嫌いは絶対にわかれるけど、不思議な味の世界を見せてもらった。他にはない体験にお金を払った感じだ。さすがの伊勢丹である。カズベイクのパティシエの頭の中はどうなってるんだろう。他の正統派のお菓子も食べてみたくなった。
ただ、使い捨てのプラスチック容器に盛り付けて、慌ただしくイートインスペースで突っ立って食べるというシチュエーションだけが惜しい。このパフェはちゃんと席に座って、綺麗なガラスの容器に盛り付けて、お酒と共にゆっくり味わって食べるのが正解なんじゃなかろうか。
こうした不思議な食体験ができる……というのは、このグルメブームならではなのかもしれない。貴重な体験をした。
参考リンク:三越伊勢丹(マ・パティスリー2025)、Instagram @kazubake 執筆:御花畑マリコ Photo:RocketNews24.