【“朝ドラ”「風、薫る」第21週】りん(見上愛)が手放した恋 シマケン(佐野晶哉)の旅立ち、忍び寄る戦争

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 連続テレビ小説「風、薫る」(毎週月~土曜午前8時、NHK総合ほか)第21週「定めと選択」では、りん(見上愛)とシマケン(佐野晶哉)の関係が大きな転機を迎えた。ようやく互いの気持ちを認め合った二人。しかし、実家の負債問題を背負うシマケンと、看護婦として求められるりんの道は、皮肉にも離れていく。そして物語は一気に2年後へ。虎太郎(小林虎之介)、多江(生田絵梨花)、そして直美(上坂樹里)の夫・小川吾郎(甲斐翔真)にも戦争の影が忍び寄る。誰かを思う気持ちだけでは選べない人生が描かれた週だった。

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夢を失ったシマケン

 小説を書くことに専念すると決めたシマケンを、静かに待ち、支えていたりん。弁当を届け、彼が書き続けられる環境を守りながら、結果を急かすこともしない。二人で過ごす時間には、まだ名前のついていない夫婦のような穏やかささえ漂っていた。

 そんなシマケンに、ようやく新聞での小説の連載という光が差す。知らせを聞いたりんは満面の笑みで喜んだ。長い時間をかけて夢を追ってきたシマケンにとって、ようやくたどり着いた小説家への入り口だった。

 しかし、その扉は開く直前で閉ざされる。広告主の親族が書いた小説に差し替えられ、さらに編集長からは、作品には「強さ」がないと厳しい現実を突きつけられてしまう。

 かつてライバルだった槇村(林裕太)も、小説を書くことをやめていた。兄に子どもが生まれた姿を見て、平凡に幸せになる道を選んだのだという。夢を諦めることは敗北なのか、それとも人生を選び直すことなのか。第21週では、そんな問いが何度も形を変えて現れる。

 シマケンもまた、小説家を諦めることをりんに告げる。りんが看護婦として成長していく間、自分は何も成せなかった。そんな彼にりんが伝えたのが、何者であっても構わないという思いだった。

 何者になれるかではなく、何者になれなくても愛している。二人が長い時間をかけてようやくたどり着いた、とても静かな愛の告白。だからこそ残酷なのは、互いを愛していることと、同じ人生を歩めることは別だったということだ。


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 シマケンの兄・万太郎が借金を残して失踪。老いた母や兄嫁、幼い甥を支えるため、シマケンは浜松へ戻らなければならなくなる。

 一緒に浜松に来てほしいと求められたりんも、本当は一緒に行きたい。しかし、東京には母の美津(水野美紀)や娘の環(英茉)がいる。そして何より、看護婦としての仕事がある。

 この週では、りんが男爵夫人・佳枝(相田翔子)の派出看護に取り組む姿が繰り返し描かれていた。リウマチに苦しむ佳枝のために湯で手を温め、スプーンを握りやすいよう工夫する。そんな親身な看護によって評判は広まり、りんへの依頼は増えていく。

 かつて何者でもなかった少女は、いつの間にか誰かから請われる看護婦になっていたのだ。シマケンもそれを理解していたのだろう。家族のために浜松へ戻る詳しい事情を語らず、一人で東京を去ってしまう。

 恋を選ぶか、仕事を選ぶかという単純な二択ではない。りんは看護婦という職業を選んだというよりも、困っている人を見れば手を差し伸べずにはいられない人になっていた。

 佳枝の手を取ったのも、シマケンの家へ向かう途中、道端で倒れた女性を助けたのも同じ手だ。その手を伸ばせばシマケンを引き留められたかもしれない。それでも、その手は目の前で苦しむ人へと伸びてしまう。

 夢を失ってもシマケンはシマケンだったように、恋を失いそうになっても、りんは看護婦であることをやめられない。それは“選択”であると同時に、もはや彼女自身の“定め”になっていたのかもしれない。

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