トランプ政権の対中関税、米経済にデータが示す以上の打撃与える恐れ
トランプ米大統領が中国からの輸入品に新たな関税を課せば、米経済は自国の公式貿易データが示すよりも大きな打撃を受ける可能性があることが最新調査で分かった。
ニューヨーク連銀のエコノミスト調査によると、トランプ政権がいわゆる「デミニミス」ルールを廃止した場合、その影響は特に深刻なものとなる。このルールの下、輸入貨物の申告額が800ドル(約11万9000円)未満の場合、関税は免除される。
ニューヨーク連銀のリサーチャー、ハンター・クラーク氏は27日に公開されたブログ投稿で、「米国の中国からの輸入の減少幅は、米公式統計の数字よりもはるかに小さい。その結果、最近の対中関税引き上げは、中国からの輸入比率に関する米公式データが示唆するよりも大きな影響を米経済に与える可能性がある」と分析した。
第1次トランプ政権下で中国製品への関税方針が厳格化され、バイデン政権でもそうした姿勢がおおむね継続されたことで、米輸入に占める中国の割合が減少したことはまず間違いない。しかし、具体的にどの程度減ったかは、どちらの国を信じるかによって異なる。
米国のデータによると、中国からの輸入が占める割合は2024年に13.4%と、18年の21.6%からに低下。名目ベースでは、この期間に660億ドル減少し、4390億ドルとなった。
しかし、中国のデータとは異なる。クラーク氏のブログ投稿によると、中国の輸出品が米輸入市場に占める割合は「わずか2.5ポイントの低下と、米国のデータで示された縮小分の3分の1未満だ」という。
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「簡単に言えば、米国が公表している中国からの輸入は、中国が示す対米輸出の数字をはるかに下回るということだ」とクラーク氏は指摘した。
デミニミス免税措置
今年1月にホワイトハウスに復帰したトランプ大統領は、中国製品に10%の追加関税を賦課。中国本土および香港からの少額貨物に対するデミニミス免税措置を廃止する計画も打ち出したが、その後実施を先送りした。
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中国から米国へのこうした少額輸入について、中国側の数字は米議会調査局の推定値と食い違っているものの、いずれもその規模が急拡大していることを示唆している。
クラーク氏は、「米国では昨年、中国からの少額輸入が少なくとも50%増加し、500億ドルを超えた可能性が高いと思われる。これは、もし中国に対するデミニミス免税措置が廃止された場合、米消費者は最近の10%の関税引き上げで目に見える以上の大きな影響に直面する可能性があることを示唆している」との見方を示した。
原題:Tariffs on China Risk Hurting US Economy More Than Data Suggest(抜粋)