テキサス州の洪水、人工降雨が原因との誤情報が拡散-気象学者は否定

米テキサス州での大規模洪水の発生を受け、ソーシャルメディア上では「クラウドシーディング(人工降雨)が原因だ」とする誤情報が広がっている。気象学者はすぐにこの主張を否定したが、こうした臆測は天候がいかに陰謀論を招きやすいかを浮き彫りにしている。

  クラウドシーディングは、雨粒の「シード(種)」を雨雲の中に散布することで人工的に雨を降らせる気象操作の一種だが、それがテキサス州に豪雨をもたらし、洪水を引き起こしたという証拠は一切ない。

  その数日前、米国立気象局(NWS)は、モンスーンの湿気と、前週にメキシコに上陸した熱帯暴風雨の名残によって、テキサス州と南西部の一部地域で局地的な大雨が予想されると警告していた。

  しかしソーシャルメディア上では、多くのフォロワーを持ち影響力のある複数のアカウントによって、クラウドシーディングがテキサスの洪水の原因だった可能性を示唆する投稿が拡散された。

  極端な気象現象が発生する度に、その原因を巡る根拠のない主張がネット上で急速に広がるというのは、今やおなじみのパターンだ。こうした主張は、事実を詳しく検証すると崩れ去ることが多い。

  レインメーカー・テクノロジーのオーガスタス・ドリコ最高経営責任者(CEO)は「感情的になる人がいるのは理解できるし、クラウドシーディングが原因かどうかを疑うのも無理はない。だが、絶対にそれが原因ではない」と語った。

  ドリコ氏によれば、同社は1日、テキサス州中南部で20分間のクラウドシーディング飛行を行ったが、異常な高湿度のためその日のうちに全作業を中止したという。

  英レディング大学のアンドルー・チャールトンペレス教授(気象学)は「気象学上の証拠に基づけば、テキサス州の洪水は強力な自然の気象システムによって引き起こされた。非常に湿った空気が暖かいメキシコ湾から流れ込んだことで、雷雨が発達した」と分析。

  気象学者のマシュー・カプッチ氏もXへの投稿で、「クラウドシーディングが今回の洪水に関与した可能性はゼロだ。初歩的な物理の知識で説明がつく話だ」とした。

  ドリコ氏はクラウドシーディングに関して、より明確な規制の枠組みに加え、気象操作技術の効果と限界に対する社会の認識を向上させることが必要だと指摘。「そうすれば、今回のような深刻な気象災害が発生した際に、根拠のない不安が広がるのを防げるはずだ」と述べた。

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原題:Misinformation on Cloud Seeding Swirls After Deadly Texas Floods(抜粋)

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