JAと民間業者、コメ買い取りで価格競争か…新潟の農業生産法人「特需に近い状況」
コメ価格の高騰を受け、JAと民間業者が農家からのコメ買い取りで価格競争を繰り広げている。政府備蓄米の放出による値下がりは一時的との見方が強く、2025年産の新潟県産米の買い取り額は高値が提示されている模様だ。(谷出知謙、甲斐史子)
相場水準は「JAがどれだけの価格を示すか」
JA全農にいがたは新潟県内の各JAに支払う25年産米の仮渡し金について、2月末に最低保証額として一般コシヒカリで60キロあたり2万3000円を示し、先月に提示した目標額では2万6000円以上へと引き上げた。
民間業者の倉庫に積み上げられた米袋(5月29日、新潟県弥彦村で)例年は8月に正式な仮渡し金の額を示しており、それより早い金額提示は異例の対応だ。昨年8月に示された金額は1万7000円だった。全農にいがたは今後、8月に仮渡し金を示した上で、さらに上積みする可能性もあるとみられている。
背景には、農家からのコメ確保に向けた民間との激しい競争がある。24年産米は県内JAグループの集荷率が過去最低水準の45%に落ち込んでいた。
全農にいがたの方針を踏まえ、新潟市や弥彦村などをエリアとするJA新潟かがやきは、一般コシヒカリの仮渡し金を2万8000円以上とする方針を農家に示した。
JAの買い取り額はコメの市場価格に影響する。県内のJA関係者は、政府による安価な備蓄米の放出の影響について「可能性として相場が下がる懸念はあるが、銘柄米と備蓄米は違う」との見方を示す。
例年JAより高い額を農家に提示しているという弥彦村の業者は「例年よりも早くJAが仮渡し金を示してくれたから、こちらも準備しやすい。大体相場は3万円になる」とにらむ。
別の新潟市の民間業者も、「備蓄米の放出でどの程度コメの相場が下がるかはわからない」としながらも、相場の水準は「JAがどれだけの価格を示すか」で決まるとの見方を示す。
県内農家には県外の業者からも声がかかっている。農業生産法人アシスト二十一(新発田市)には、これまで取引がなかった複数の県外業者から買い取りの打診があった。
木村清隆社長(44)は、すでに売却先を決めていたため断ったというが、「特需に近い状況だ。コメの買い取り金額は3万円以下だと勝負のテーブルに乗らないと思う」と話す。
JAが仮渡し金の提示を前倒ししたことは「資材やエネルギー代も上がっており、事前に買い取り金額がわかることは経営的に助かる」と評価した。
魚沼市や南魚沼市の約75ヘクタールで魚沼産コシヒカリを生産する男性(73)は、新規取引先の2業者を含む8業者との間で、昨年より5000~6000円高い3万円以上の買い取り価格で合意した。
男性は、「田植え前から卸売業者などの問い合わせを受けており、引き合いの強さを感じる」と話す一方で、備蓄米の放出や主食用米の増産に伴い「在庫量がだぶつくことが予想され、1年後の米価が不安」との懸念も示した。