Jリーグ“最強”クラブは? パワーランキング11~20位。人気や育成、成績など各指標からJ1〜J3全60クラブを順位化

 サッカークラブの持つ影響力は単一の尺度で測れるものではないが、複数の指標から見えてくるものがある。今回はJ1、J2、J3の全60クラブを対象に、成績、人気、育成、売上の4つの指標を抽出して数値を組み合わせてランキング形式にした。果たして、最も“力のある”Jクラブはどこなのだろうか。※見出しの括弧内の数字は、各項目の1位(最高位)を60ポイント、60位(最下位)を1ポイントとして降順で計算した合計値。

20位:アビスパ福岡(161)

【写真:Getty Images】

2024リーグ戦成績:12位(J1) 2024シーズンホームグロウン人数:5人(25位タイ) 2024リーグ戦ホームゲーム平均入場者数:9,698人(26位)

2023年度営業収益:約28億7400万円(19位)

 アビスパ福岡は2023シーズンにJ1リーグを7位で終え、クラブ史上初のYBCルヴァンカップ制覇を成し遂げた。しかし、長谷部茂利監督体制4年目の2024シーズンではリーグ最少得点が響き、昨年の好成績を再現することはできなかった。それでも堅実な守備で勝ち点を積み重ね、最終的に12位でシーズンを終えている。

 一方で、パワーランキングが20位に低迷した理由のひとつは集客力の課題にある。1試合平均入場者数は9,698人でリーグ全体26位、J1では最下位となった。

 ホーム最終戦となる第37節・浦和レッズ戦では17,161人、九州ダービーの第18節・サガン鳥栖戦では15,880人と一定の盛り上がりを見せた試合もあったが、21,562人収容のベスト電器スタジアムには多くの試合で空席が目立った。2023シーズンの成功を観客動員につなげられなかった点は今日的な課題として挙げられる。

 観客数がリーグワーストクラスであることは収益面にも影響を及ぼしている。2023年度の営業収益は前年度から4,500万円増加し約28億7,400万円となったが、それでもリーグ全体では19位にとどまった。

 さらに、ホームグロウン選手の育成状況にも課題が見られる。開幕時点で登録されたホームグロウン選手は5人とJ1クラブの中では最少レベルである。森山公弥、鶴野怜樹といった若手有望株は、2025シーズンに愛媛FCに期限付き移籍することが発表され、なかなかチームの主力となる若い力を育成できていない現状は気になるところだ。

 2025シーズンのトップチーム昇格が内定している前田一翔やサニブラウン・アブデル・ハナンといったアカデミー出身FWの活躍にも期待したい。

 2024シーズンをもって長谷部監督が退任し、来季から金明輝監督が新たに指揮を執るアビスパ福岡。新体制のもと、守備力を維持しながら攻撃力を向上させ、さらなる観客動員や収益の増加を目指すことが求められる。


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【写真:Getty Images】

 湘南ベルマーレは、2018シーズン以降J1に定着しているクラブの一つだ。コロナ禍で降格がなかった2020シーズンを含め、毎年2桁順位にとどまる状況が続いており、より上位を目指すファンにとっては物足りなさを感じる部分もあるだろう。

 しかし、パワーランキングの観点から見ると、財政規模に見合う安定した成績を維持しているとも言える。

 2024シーズンの1試合平均観客数は11,315人で、リーグ全体では20位だった。2023シーズンの平均観客数13,161人からは減少しているが、これは2023年に国立競技場で開催された川崎フロンターレ戦で54,243人を動員した影響で昨年度の数値が高くなっていたためだ。

 一方で、15,380人収容のレモンガススタジアム平塚はほとんどの試合で満員に迫る収容率を示している。

 営業収益は約28億1200万円で21位。トップチームの人件費も約12億5,500万円で20位とJ1常連としては低く、財政規模が小さい中での運営を余儀なくされている。

 また、ホームグロウン選手は6人で、田中聡、畑大雅、平岡大陽、石井久継といった若手選手が2024シーズンのJリーグでコンスタントに出場している点は評価できる。過去には遠藤航を輩出したアカデミーがクラブの基盤を支えており、育成面での成果は引き続き強みといえる。

 全項目が20位前後という中でJ1に定着しているのは、資金力だけに頼らない様々な工夫があってこそ。クラブの規模から考えると、その健闘を称えることができそうだ。


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 クラブ史上初となるJ1リーグ挑戦で、いきなり優勝争いを繰り広げたFC町田ゼルビアは、堂々の3位でシーズンを終えた。ドレシェヴィッチ、オ・セフン、藤尾翔太、昌子源、仙頭啓矢、杉岡大暉といった新戦力の補強が軒並み成功し、上位争いを盛り上げた点は大きな成果といえる。

 大型補強でチーム力を飛躍させた反面、ホームグロウン選手は少なく、シーズン開幕時でわずか4人だった。J1ではホームグロウン選手を4人以上登録しなければペナルティーが科されるが、ギリギリでそれを回避した。

 その上、奈良坂巧、樋口堅、三鬼海、青木義孝の4人はそれぞれシーズン途中に期限付き移籍で町田を離れたため、シーズン後半戦はホームグロウン選手がゼロだった。この点は今後の課題だろう。

 今季の平均観客数は17,610人を記録し、クラブレコードを更新した。国立競技場での試合開催が動員数の増加に寄与したが、本拠地である町田GIONスタジアムの収容人数15,320人を上回っている。その点では、スタジアムの規模がクラブの成長に追いついていないとも言えるだろう。

 営業収益は約34億900万円で、2023年度と比較して約14億9000万円増加した。これによりリーグ17位にランクイン。J1で優勝争いを繰り広げた影響を考えると、さらなる収益の上昇が期待される。

 2024シーズンのピッチ上での成功を、その他の項目の成長につなげられるか。来季は、町田が強豪として定着できるかを左右する大事なシーズンとなりそうだ。


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 2021シーズンにJ2で2位となり、12年ぶりにJ1に復帰した京都サンガF.C.は、2022シーズンは熾烈な残留争いの末に最終節でJ1残留を果たし、2023シーズンは1試合を残して残留を決めた。2024シーズンでは一時最下位に沈む危機的状況にあったものの、後半戦で巻き返しを見せ、最終的に14位でフィニッシュした。

 残留の原動力となったのは、シーズン途中に加入したFWラファエル・エリアスだ。リーグ戦15試合11得点の大活躍で京都を救った。6月にゼネラルマネージャーに就任した大熊清の手腕が光ったとも言えるだろう。

 2024シーズンの1試合平均観客数は13,535人でリーグ17位。昨シーズンの13,229人から微増となった。特に後半戦の盛り上がりが観客動員数を押し上げ、第31節のガンバ大阪戦では20,323人の観客を動員し、サンガスタジアム by KYOCERAのスタジアムレコードを更新した。

 2023年度の営業収益は約33億9300万円でリーグ18位。前年度から約1億500万円増加しているものの、収益規模ではJ1の下位に位置する。

 ホームグロウン選手は8人で、U-23日本代表の一員としてパリ五輪に出場したMF川﨑颯太を筆頭に、FW平賀大空、MF福岡慎平と若手有望株が多く在籍していることは強みだ。

 2024シーズン後半戦の巻き返しにより、育成選手と補強選手が噛み合えばJ1で競争力を発揮できることを証明した。この良い流れを2025シーズンに持ち越し、さらに成績を向上させるための基盤を築いていきたいところだ。


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 北海道コンサドーレ札幌は、2016年に四方田修平監督の下でJ2優勝を果たし、2018年以降はミハイロ・ペトロヴィッチ監督の指揮でJ1の地位を確立してきた。

 しかし、2024シーズンは序盤から苦戦を強いられた。開幕6試合で1分け5敗と出遅れた後、第15節柏レイソル戦から8連敗を喫し、苦しいシーズンとなった。夏の補強で一時巻き返したものの、最終的に19位でシーズンを終え、9シーズンぶりにJ2での戦いが決まった。

 1試合平均観客数は17,086人で15位。シーズン終盤の巻き返しで多くの観客がスタジアムを訪れ、昨シーズンの16,086人を上回る動員数だった。

 2023年度の営業収益は、前年度から約5億600万円増加している。ただし、J2降格に伴い、今後の収益減少が懸念される。

 ホームグロウン選手の登録人数は8人。リーグ11位タイだが、育成の質は高く、主将で背番号10を背負う宮澤裕樹をはじめ、中村桐耶、荒野拓馬、菅大輝といった中心選手がアカデミー出身者というのは強みと言える。

 2024シーズンをもってペトロヴィッチ監督体制が終了し、新指揮官として岩政大樹監督を迎える札幌は、J1復帰を目指して新たな挑戦に取り組む。財政規模や育成力を活かし、1年でのJ1復帰を目標に再建を進めることが期待される。


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 アルビレックス新潟は、2023シーズンに6年ぶりのJ1復帰を果たし、10位の好成績を収めた。しかし、2024シーズンは好調なスタートを切ったものの、中盤以降失速し、残留争いに巻き込まれた末に16位でシーズンを終えた。

 また、YBCルヴァンカップでは決勝に進出するも、名古屋グランパスに敗れ、惜しくもタイトルを逃した。

 新潟のホームスタジアムであるデンカビッグスワンスタジアム(収容人数41,684人)では、1試合平均22,430人の観客を動員し、リーグ8位の高い集客力を誇った。2005シーズンにリーグトップの観客動員数を記録した人気は、依然として健在だ。

 2023年度の営業収益は約36億5,900万円で、前年から約11億2,000万円の増加を見せた。J1復帰による観客数の増加や関連収益の向上が、クラブ経営に良い影響を与えたと考えられる。

 今シーズン開幕時のホームグロウン選手は6人で、Jリーグ全体で21位タイと、J1クラブとしては比較的少ない。それでも、今シーズンの主力だった秋山裕紀や小見洋太といった若手に活躍の機会が与えられるクラブだ。

 なお、昨年の冬にオランダのスパルタ・ロッテルダムに加入した三戸舜介も、元は新潟のアカデミー育ちである。海外で活躍する選手の存在も、クラブの育成力を物語っている。

 2024シーズン終了後、松橋力蔵監督の勇退が発表された新潟は、新体制でのリスタートを図る。今後も育成力を活かしながら、J1での安定した成績を目指していきたいところだ。


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 16年ぶりのJ1リーグで躍進を果たした東京ヴェルディは、6位でシーズンを終えた。これにより、パワーランキングでも前年の21位から14位へと大きく順位を上げている。

 2023シーズン、昇格プレーオフを経てJ1昇格を果たしたヴェルディは、降格候補と見られていた。しかし、城福浩監督のもと、ハードワークを基盤とした組織力あるプレーで勝ち点を積み上げ、残留どころか上位進出を果たした。

 観客動員数も大幅に増加した。2024シーズンの1試合平均観客数は20,976人と、2023シーズンの7,982人から飛躍的な伸びを見せた。シーズン平均で20,000人を超えたのは、実に29年ぶりのことである。

 営業収益は約28億1800万円でリーグ20位となったが、前年度から約7億200万円増加した。J1で好成績を収めたあとで、さらなる向上が期待される。

 ホームグロウン選手は7人でリーグ17位タイだった。期限付き移籍で加入した選手たちの活躍が大きかった印象のあるヴェルディだが、主将の森田晃樹をはじめ、谷口栄斗や綱島悠斗といったアカデミー出身の選手が重要な役割を果たした。

 2024シーズンの成功を土台に、東京ヴェルディは引き続き上位進出を狙い、クラブのさらなる成長を目指す。

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