25年のFOMC、利下げ巡り新たな視点-投票権メンバーの入れ替えで
米国ではインフレ懸念が再燃しており、2025年は米連邦公開市場委員会(FOMC)の意思決定が複雑さを増しそうだ。そうした中、FOMCでは新年から投票権を持つメンバーが一部入れ替わる。
FOMCは今月開催した定例会合で政策金利の0.25ポイント引き下げを決定し、25年については2回の利下げにとどまることを示唆。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、金融当局が新たな局面を迎えていることを明確にした。つまり、将来の利下げペースはより緩やかになり、インフレ鈍化の状況に左右される公算が大きいということだ。
ゴールドマン・サックス・グループのチーフエコノミスト、ヤン・ハッチウス氏は「1月に利下げする可能性は低いという非常に強いメッセージだと考えられる」と指摘。「そこから先については、とにかくデータが政策を左右することになるだろう」と述べた。
FOMCでは、FRB理事7人とニューヨーク連銀総裁は常に投票権を持つ。それに加え、11人の地区連銀総裁が輪番制で投票権を与えられる。
25年には、ボストン連銀のコリンズ総裁とセントルイス連銀のムサレム総裁、カンザスシティー連銀のシュミッド総裁、シカゴ連銀のグールズビー総裁が投票権を得る。
インフレ率がなお当局目標の2%を上回る中、どのようなペースで利下げを実施していくのか。それが新たなメンバーとFOMC全体が直面する重要な問題だ。
一部エコノミストによると、トランプ次期大統領が実施し得る政策変更により、FOMC当局者の議論は複雑化するとみられる。トランプ氏は追加関税や不法移民の強制送還、減税といった方針を打ち出しており、それによりインフレが高進し、労働市場は抑制される可能性がある。
ここ数カ月で既に2人のメンバーが政策決定に反対票を投じている。ボウマンFRB理事は9月会合での0.5ポイント利下げ決定に反対し、より小幅の利下げを主張した。またクリーブランド連銀のハマック総裁は、12月会合での政策決定に反対。金利の据え置きを主張した。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン、クリス・コリンズ、イライザ・ウィンガー各氏は、リポートで「25年はFOMCで反対票が増えると、ブルームバーグ・エコノミクスは予想する。個々のメンバーの金融政策に対するスタンスをタカ派とハト派の分布に沿って評価したところ、来年のFOMCではメンバーの間で意見の分散が進むことが示唆された」と記述。タカ派およびハト派に向かうほど多く、中間は少なかったという。
ブルッキングス研究所のシニアフェローで元FRB副議長のドン・コーン氏は、FOMCが直面する政策上の難題によって来年反対票が増える可能性が高まるというのであれば、それは必ずしも悪いことではないと指摘する。
「時として反対意見が出るのは悪いことだとは思わない」とコーン氏。「FOMCの委員が別の視点からの意見に耳を傾けているということに、国民は安心感を抱くべきだ」と述べた。
輪番制により来年のFOMCでメンバーから外れるのはハマック総裁、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁、リッチモンド連銀のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁。
来年投票権を得る4総裁の直近の見解は以下の通り。
ムサレム総裁
- 24年4月からセントルイス連銀総裁を務める
- ムサレム総裁がFOMCで投票権を得るのはこれが初めて
ムサレム総裁は利下げを巡る辛抱強いアプローチを支持している。直近のFOMC会合に先立つ12月上旬には、9月以降に発表されたインフレデータに警戒感を示し、インフレ沈静化の進展が「停滞、ないし反転し得る」リスクが高まっていることを示唆していると述べた。
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シュミッド総裁
- 23年8月からカンザスシティー連銀総裁を務める
- シュミッド総裁がFOMCで投票権を得るのはこれが初めて
シュミッド総裁は、政策金利が最終的にどの水準で落ち着くかは不透明だと強調している。政策金利は、経済活動を促進も抑制もしない中立金利に関する大半の予想を上回っていることから、政策は景気を抑制しているという認識で当局者はおおむね一致している。ただ中立水準に達する上で、どこまで金利を引き下げる必要があるかについては見解が分かれている。
利下げペースを減速させることで、当局者らはそれを見極められるようになるというのが、シュミッド総裁の見解だ。
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コリンズ総裁
- 22年7月からボストン連銀総裁を務める
- コリンズ総裁が前回投票権を持ったのは22年
コリンズ総裁は11月、政策の「最終的な行き先は不確か」だとしつつ、「ある程度の追加緩和は必要だと考える」と指摘。政策金利は事前に設定された軌道にあるのではないと強調しつつ、米経済は「全般的に良好な位置」にあると述べた。
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グールズビー総裁
- 23年1月からシカゴ連銀総裁を務める
- グールズビー総裁が前回投票権を持ったのは23年
グールズビー総裁は、FOMCの政策スタンスは中立金利をはるかに上回っているとの見解を繰り返し表明しており、12月の利下げ決定後も同様の認識をあらためて示した。
来年の金利については、従来予想よりやや上方向に調整したものの、借り入れコストは低下していくとの見通しを示した。
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原題:Fed Kicks Off 2025 With New Voters and a New View on Rate Cuts(抜粋)