アングル:日本株はイベント後も高値圏、「適温」の異変に目配り必要

 ジャクソンホール会議やエヌビディア決算といった大型イベントを通過してなお、日経平均は高値圏での推移を維持している。写真はスクリーンに表示された株価ボード。4月15日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

[東京 29日 ロイター] - ジャクソンホール会議やエヌビディア決算といった大型イベントを通過してなお、日経平均は高値圏での推移を維持している。株式市場を取り巻く「適温」状態の継続が背景となっているが、米国の抑制されたインフレや底堅い景気といった「適温」の条件に異変が生じないか、目配りが必要とみられている。

エヌビディア株は決算発表後に時間外取引で下落し、日本株も売りが先行したが、短時間で切り返した。エヌビディア株の下げは限定的と受け止められたことが安心感につながり「市場の反応に対してあく抜けになった」とニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはみている。

波乱が警戒されたイベントを無難に通過し「適温」な相場環境に大きな変化はみられない。前日の米国市場では、S&P総合500種(.SPX), opens new tabとダウ工業株30種(.DJI), opens new tabが最高値を更新した。

先立つジャクソンホール会議では米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が早期利下げに含みを持たせ、市場での9月連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ織り込みに自信を与えた。

米経済の底堅さも意識されている。前日は第2・四半期の国内総生産(GDP)改定値が上方修正されたほか、週次の新規失業保険申請件数が市場予想を下回り、景気減速を巡る懸念が和らいだ。

もっとも、日米株ともに高値警戒感がつきまとってもいる。「先高期待は変わらないものの、足元では決め手を欠き、方向感をつかみにくい状況はしばらく続きそうだ」と岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長は話す。

<米PPIがもたらす思惑>

株高が維持されるためには「適温」をもたらしている米国経済への目配りが必要になる。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに米国では雇用統計や消費者物価指数(CPI)といった大型指標の発表を控えている。

目先は29日に7月の米個人消費支出(PCE)価格指数の発表を控える。これが上振れれば、インフレ懸念が再燃するリスクがある。

先立つ14日発表の7月米卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は、前月比0.9%上昇した。サービスと財(モノ)の価格が共に急上昇し、2022年6月以来、約3年ぶりの大幅な伸びとなった。

経済の川上に当たる企業のインフレ動向を示すPPIの上振れは、コストの価格転嫁を通じ、川下に当たる消費者価格に波及するリスクがあり、そうなれば米利下げ期待の後退につながりかねない。

PPIの消費価格への波及がいつ確認されるのは現時点で不明だが、りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは「今回(の数字に)出てこなくても、いずれ出てくるのではないかと数カ月は疑心暗鬼になりかねない」として、株価は上値が重くなる可能性があるとの見方を示す。

仮に米国の利下げ期待が後退する場合、株価へのネガティブインパクトの面からは期待後退を織り込む速度が重要になりそうだ。急激でなければ、1株利益(EPS)の改善が追い付くことで「株価の大きな調整はなく、日柄調整で乗り切れるのではないか」とニッセイ基礎研の井出氏はみている。

PPIの上昇は、企業による価格転嫁の予兆と捉えることも可能と井出氏はみている。日本企業にとっては、米関税の25%から15%への低下による負担軽減に加え、徐々に価格転嫁が進むことも想定され、四半期ごとに日本株のEPSは切り上がっていくのではないかと話している。

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