ロシア軍が巡航ミサイルと弾道ミサイルで大規模空襲、キーウで民間人12人死亡(JSF)
4月24日、ロシア軍はウクライナ全土に対し大規模な長距離ドローン・ミサイル攻撃を実施しました。弾道ミサイル11発、巡航ミサイル59発、敵性ドローン145発の合計215発が飛来しています。巡航ミサイルの使用は4月6日の攻撃の17発以来です。
今回は特に首都キーウに集中攻撃が行われました。スヴャトシンスキー地区の住宅に弾道ミサイルが着弾し、民間人の死者12人、負傷者90人となっています。出典:ウクライナ国家非常事態庁
2025年4月24日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部
- イスカンデル/KN-23弾道ミサイル×11飛来7撃墜
- Kh-101巡航ミサイル×37飛来31撃墜
- イスカンデルK巡航ミサイル×6飛来0撃墜
- カリブル巡航ミサイル×12飛来6撃墜
- Kh-59/Kh-69空対地ミサイル×4飛来4撃墜
- 敵性無人機×145飛来64撃墜68未到達 ※囮無人機を含む
※敵性無人機には自爆無人機(シャヘド136、シャヘド131)だけでなく安価な囮無人機(ガーベラ、パロディ)も混じっている。未到達は囮無人機が任務を果たして燃料切れで墜落したケースが多い。
3月20日にロシア空軍の戦略爆撃機の拠点であるエンゲリス基地がウクライナ側の長距離ドローン攻撃で弾薬庫が誘爆し、Kh-101巡航ミサイル96発が破壊されていますが(出典:ウクライナ軍参謀本部)、新規生産分がある程度まで補充できたのか、今回の4月24日の攻撃ではKh-101は37発と纏まった数が発射されています。
2025年4月24日迎撃戦闘:総突破数35、総迎撃率76%
- 弾道ミサイル:4突破。11飛来7撃墜、迎撃率64%
- 巡航ミサイル:18突破。59飛来41撃墜、迎撃率70%
- 敵性ドローン:13突破。145飛来64撃墜68未到達、迎撃率83%
ウクライナ防空網は善戦していますが、敵目標215飛来のうち68未到達を除いた脅威目標147飛来に対して112撃墜、35突破を許し、トータルでの迎撃率は76%となっています。被害を抑えるためには防空システムの更なる拡充が必要となるでしょう。
なおパトリオット防空システム以外ではほぼ迎撃不能な高速で飛来する弾道ミサイルを半数以上撃墜しています。パトリオットが配備されている首都キーウでの迎撃戦闘になりますが、実際に撃墜した様子や、命中しても破壊しきれず弾頭がそのまま落ちて来て着弾した様子などが映像で捉えられています。(※映像にモザイクが掛かっているのは位置情報を敵に与えない為)
キーウ、対弾道ミサイル迎撃戦闘の様子
キーウ、対巡航ミサイル迎撃戦闘の様子
キーウではロシア軍の弾道ミサイルが民間の集合住宅に着弾し、ウクライナ国家非常事態庁の報告ではこれまで12人の死亡と90人の負傷者が確認されています(当初報道では9人死亡でしたが瓦礫の下から遺体を新たに発見)。キーウに対しては数カ月ぶりの大規模攻撃かつ最悪の被害となっています。
キーウ被害直後の様子、ウクライナ国家非常事態庁:Telegram
ウクライナ国家非常事態庁よりキーウ被害の消火活動ウクライナ国家非常事態庁よりキーウ被害の救助活動ロシア軍巡航ミサイル発射数の推移:2024年11月以降
※2025年2月11日と2月20日はウクライナ空軍司令部の集計報告不備があり、巡航ミサイルと弾道ミサイルが混ざった状態での数。
※ここでの巡航ミサイルとはKh-101やカリブルなど亜音速型のみ。Kh-69空対地ミサイルは巡航ミサイルに含めるが、Kh-59のみの報告は除外。
月別の推移
- 2024年11月:巡航ミサイル194発(Kh-101×158発)
- 2024年12月:巡航ミサイル153発(Kh-101×105発)
- 2025年01月:巡航ミサイル35発(Kh-101×27発)
- 2025年02月:巡航ミサイル25発(Kh-101×8発)+最大33発 ※集計不備
- 2025年03月:巡航ミサイル51発(Kh-101×35発)
- 2025年04月:巡航ミサイル76発(Kh-101×46発)
※2024年9月と10月に巡航ミサイルの使用を控えた備蓄期間があり、11月と12月に貯め込んだ分を一気に発射している。その後は暫く低調な発射が続く。この傾向は例年続いており、冬季攻撃のために秋季に備蓄期間を設けている。
北朝鮮KN-23弾道ミサイル使用報告:2025年3月以降
- 2025年03月05日:3発
- 2025年03月06日:2発
- 2025年03月07日:3発
- 2025年03月08日:2発
- 2025年04月13日:2発 ※空軍は未報告、情報総局が報告:出典
- 2025年04月15日:1発
- 2025年04月24日:11発
※ウクライナ空軍司令部の報告は基本的に「Іскандер-М/KN-23(イスカンデルMまたはKN-23)」であり、KN-23とのみ断定するケースは稀(残骸を調査した場合など)。このため、本当にKN-23が飛来していたかどうか確定的な情報ではない。
※一方で「Іскандер-М(イスカンデルM)」と断定するケースはよくあり、3月は11日、12日、15日、19日、25日、27日、31日の7回で合計12発の飛来、4月は6日、8日、17日、18日、19日の5回で合計14発の飛来があった(4月は24日時点)。
※また4月11日に種類を指定しない弾道ミサイル1発の飛来報告がある。また4月3日や4月4日など明らかに弾道ミサイル攻撃があったにもかかわらず空軍が集計報告で発表していないケースが幾つかある。
※これはその日の集計報告を午前中に済ませた後に午後の日中に散発的な飛来があった場合に、数が少ないと追加報告をしない場合がある。
弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。