60代からでも「理想の人生」は送れる。ハーバード大学史上最長の「幸福研究」が導き出したひとつの答え(webマガジン mi

 被験者の一人、アンドリュー・デアリングさんは、この「幸せ研究」の中でも“とりわけ苦労の多い、孤独な半生”を送ってきたそうです。母子家庭で育ち、大人になってからの友人づくりにも苦労し、結婚生活もうまくいかず、ひたすら仕事に没頭する日々。 成人後から行っていた、幸福感や人生の満足度レベルを聞くアンケートでは、毎回“非常に低い”と回答していました。45歳のときには自殺を図り、60代半ばの調査では、親友の存在やその親友の意味を尋ねる質問に対して「親友は一人もいない」と回答。68歳になって妻と別居すると、アパートで一人暮らしを始めることになり、孤独感はさらに強まっていきました。 そんな生活を送る中、気晴らしに運動しようと思いつき入会した近所のスポーツクラブで、転機が訪れます。常連の一人に挨拶をしてみたことがきっかけとなり、クラブで友人の輪が広がっていったのです。数年後、一人暮らしの孤独感は感じていたものの、人生がどのくらい理想に近いかを尋ねる質問では、「理想に近い」と回答。80代になると、以前は「まったくない」と回答していた、自宅に人を招いたりする頻度を尋ねる質問に、「毎日」と回答したといいます。

 アンドリューさんの長期にわたる追跡調査からわかるのは、まさに、友人を得る・友情を育むことは、何歳からでも決して遅くない、ということ。本書でもこのように伝えています。 私たちは人とのつながりを渇望する世界に生きている。自分は流されるままに生きている、孤独だ、もう手遅れで何も変えられない、などと感じることもあるだろう。アンドリューもそうだった。変えられる時期はとうの昔に過ぎてしまったと思い込んでいた。だが、そうではなかった。遅すぎることはなかった。なぜなら、本当のところ、遅すぎることは決してないからだ。 幸せな人生に不可欠なのは、よい人間関係――2000人を超えるかけがえのない人生から、人と人の繋がりを結び直すための手がかりを学べる本書。科学的研究が導き出した結論をどう活かすかは最終的に自分次第ですが、コロナ禍で疎遠になってしまった友だちに久しぶりに自分から連絡を取ってみる、というのも、幸せへの小さな足がかりの一つかもしれません。  著者プロフィール ロバート・ウォールディンガー ハーバード大学医学大学院・精神医学教授。マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、ライフスパン研究財団の共同創立者でもある。ハーバード大学で学士号取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。臨床精神科医・精神分析医としても活動しつつ、ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務める。禅師でもあり、米国ニューイングランド地方はじめ世界中で瞑想を教えている。 マーク・シュルツ ハーバード成人発達研究の副責任者であり、ブリンマー大学の心理学教授でもある。同大学のデータサイエンスプログラムの責任者であり、以前は心理学科の学科長を務め、臨床発達心理学博士課程の責任者でもあった。アマースト大学で学士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校で臨床心理学の博士号を取得。ハーバード大学医学大学院で博士研究員として健康心理学および臨床心理学の研鑽を積んだ後、現在は臨床心理士としても活動している。 訳者プロフィール 児島 修 英日翻訳者。立命館大学文学部卒。主な訳書に、パーキンス『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』、ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)、リトル『自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義』(大和書房)、ケンディ『アンチレイシストであるためには』(&books)などがある。   この記事は2023年9月10日に配信した人気記事を再編して掲載しています。 写真/Shutterstock 構成/金澤英恵  

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