「現代サッカー向き」横浜F・マリノス指揮官がジャン・クルードを評価する理由「欧州トップクラブなら…」【英国人の視点】

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 今季からスティーブ・ホーランド監督が指揮を執る横浜F・マリノスで、21歳のトーゴ人MFが異彩を放っている。昨年7月に加入したジャン・クルードは、昨季こそ公式戦出場6試合に留まったが、今季は開幕からコンスタントにプレーしている。英国人指揮官はその潜在能力を高く評価しているようだ。(取材・文:ショーン・キャロル)

著者プロフィール:ショーン・キャロル

1985年イングランド生まれ。2009年に来日。『ニッポンとサッカー 英国人記者の取材録』『英国人から見た日本サッカー “摩訶不思議”ニッポンの蹴球文化』の筆者。「Jリーグ Monthly」のレギュラー出演。高校サッカー、Jリーグ、日本代表など幅広く取材している。過去にはスカパーやNHK、J SportsなどのJリーグ番組出演も。

異彩を放つ21歳のトーゴ人MF

【写真:Getty Images】

 横浜ダービーは、17,000人をわずかに超える観客数と0-0のスコアレスドローという結果に終わり、決して記憶に残る名勝負とはならなかった。寒さの厳しい日産スタジアムに集まった観客を熱くさせるようなプレーも、両チームともにあまり見せることができなかった。

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   横浜FCにとっては、敵地で勝ち点1を持ち帰れたことを考えれば満足のいく結果だったかもしれない。一方、横浜F・マリノスにとっては、地元のライバル相手に勝利を逃し、リーグ戦のスロースタートが続くこととなった。

 スティーブ・ホーランド監督のチームは、新体制のもとでAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)のグループステージを突破しラウンド16進出を決めているが、国内リーグでは開幕から3試合で勝ち点2、わずか1ゴールという低調な成績にとどまっている。土曜日には好調の湘南ベルマーレとの対戦を控えており、巻き返しを図りたいところだ。

 とはいえ、マリノスの状況がすべて悲観的というわけではない。トーゴ出身のMFコジョ・ジャン・クロード・アジアンベ(ジャン・クロード)は、今後の成長次第でチームにとって大きな存在となる可能性を秘めている。

 ジャン・クロードは昨夏、UAEのアル・ナスルからマリノスに加入した。しかし、ジョン・ハッチンソン監督のもとではリーグ戦でわずか3試合の出場にとどまり、ACLEと天皇杯での数試合のプレーに限られた。だが、2025年シーズンの開幕からわずか3試合で昨年の出場数に並ぶなど、早くも出場機会を確保している。

 今季の出場時間が増えた背景には、キャプテン喜田拓也の負傷が影響している可能性もある。しかし、ホーランド監督は2月12日のACL・上海申花戦で、喜田とともにジャン・クロードを先発起用し、試合後には21歳の若手への高い評価を口にした。


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「彼にはプレーするに値する実力がある。これはシンプルな答えだが、6週間彼と過ごして、その実力を確信したからこそ起用した」

「今夜のパフォーマンスについて言えば、彼は非常に良いプレーを見せた。まだ技術的な面で改善すべき点はあるが、彼は現代サッカー向きの選手だ。運動能力が高く、ピッチ全体をカバーできるし、ボール奪取にも優れている。ヨーロッパのトップクラブなら、彼のようなタイプの選手を求めるはずだ」

「ジャン・クロードはまだ多くのトップレベルの試合を経験していない。彼がこれまで出場した試合のほとんどは、トーゴ代表として様々なポジションでプレーしたものだった。今後は一つのポジションで役割を学ぶ必要があるが、彼は努力家で学ぶ意欲もある。だからこそ、大きく成長する可能性があると思う」

 確かに、ジャン・クロードはまだ荒削りな部分もある。しかし、彼はすでに攻守においてその存在感を発揮しつつあり、マリノスのためにピッチ全体をカバーするエネルギッシュなプレーを見せている。

 彼の特筆すべき能力の一つは、まるでピッチ上のすべてを俯瞰できるかのような視野の広さだ。この能力によって、彼は常にプレーに関与しようとする。チームメイトのピンチを救うタックル、攻撃時のビルドアップにおけるパスの選択、自らボールを運んでチャンスを生み出すプレーなど、あらゆる場面で存在感を示す。

 しかし、彼の積極的なプレースタイルには課題もある。


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 例えば、積極的なパスの意識を持っているが、必ずしも正確とは言えない。また、すでに今季のJ1リーグでは2試合で2回の警告受けており、昨年の天皇杯ではイエローとレッドカードをもらうなど、プレースタイルはまだ粗さが見え隠れする。しかし、それでもJリーグには彼のような選手は少なく、チームに活力をもたらす存在であることは間違いない。

横浜FC戦で70分から途中出場したジャン・クロードは、試合後に自身の役割について語った。

「自分の役割は、チームの守備をしっかりと固めること、そして攻撃ではゴール前でチャンスを作り出すことだ。9番(ストライカー)が得点できるように、より多くのチャンスを提供したい」

「自分にはチームを助けるための能力があると思うし、それを発揮したい。サッカーでは、自分のことばかり考えてはいけない。チームのことを考えなければならない」

 ジャン・クロードがピッチですべてを出し切る姿が、このコメントの持つ意味を表している。そして、マリノスのリーグ戦でのスロースタートを悲観していない。

「自分の考えは、信じ続けること。そして前に進み続けること。時間が経てば、すべてがうまくいくはずだ」

「この試合(横浜FC戦)のことは忘れて、次の試合に集中しなければならない。次の試合はとても重要だから、もっと前に進む必要がある」

「今は難しい時期かもしれない。でも、チームとして一丸となれば乗り越えられる」

 まだシーズンは始まったばかりだ。しかし、ジャン・クロードがチームの中心選手として定着することができれば、マリノスの新プロジェクトが成功する可能性は飛躍的に高まると言っても過言ではない。

(取材・文:ショーン・キャロル)

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