女性を物のように見てしまう「性的対象化」は電気刺激で矯正可能という研究結果
女性の性的な画像を見ると、男性の性的な画像よりも記憶に残りにくい傾向にあるとされています。これは、人を性的なモノとしてのみ扱う「性的対象化(性的モノ化)」と呼ばれる認知傾向が原因とされますが、この性的対象化は生まれつき備わっているものではなく、少なくとも一時的には変えることができると神経学者らの研究で明らかになりました。
Full article: Disrupting objectification: transcranial Direct Current Stimulation (tDCS) enhances the inversion effect toward sexualized women
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17470919.2026.2751696Is sexual objectification hard-wired? Our study used electrical brain stimulation to find out
https://theconversation.com/is-sexual-objectification-hard-wired-our-study-used-electrical-brain-stimulation-to-find-out-294925 性的対象化とは、人を1人の人間としてではなく、主に性的欲望の対象として見られることを指します。男性も女性も性的に客体化される可能性がありますが、主に男性から女性の客体化と関連付けられています。2012年の研究では、心理学者らが、「逆さまテスト」と呼ばれる実験を行いました。人は顔や体を正しい向きで認識する方がはるかに得意であり、正しい向きでは約80%の正答率なのに対し、逆さまの場合は約55%に低下します。人間は顔や身体を認識するとき、個々の特徴だけでなくそれらがどのように配置されているかという全体的な関係も利用しているため、顔や身体の画像を上下逆さまにすると正しい向きで見たときよりも認識しにくくなると考えられています。逆さまテストではこの性質を利用して、被験者がある人物の写真を短時間見た後、同じ写真と上下反転した写真のペアから写真を選び出す実験を行いました。
実験の結果、男女いずれの参加者も、「下着姿の男性」の写真については、正しい向きで提示された場合の方が、上下逆さまの場合よりもはるかに正確に見分けられました。一方、同じようなポーズを取った「下着姿の女性」の写真では、どちらの向きでも認識成績にほとんど差がありませんでした。これは、「下着姿の女性」の場合は人に対する認知のズレが発生しにくく、性的にモノ化されているためだと考えられています。 イギリスのエクセター大学の研究チームは、性的対象化の人気傾向が人間に生来備わっている普遍的なものなのか、それとも変更可能なものなのかを調べるために、脳に弱い電気刺激を与えながら逆さまテストを実施しました。実験では、76人の大学生に下着姿の男女モデルの写真を上下反転させたものも含めて記憶させ、同じ写真を見せた際に以前見たことがあるかどうかを答えさせました。
このとき、半数の生徒には「経頭蓋(ずがい)直流刺激」と呼ばれる手法を用いて、10分間弱い電流が流されました。残りの半数の生徒には、実際の刺激によるピリピリ感を模倣するため30秒後に電流が切れるプラセボが投与され、生徒も研究者もどちらがどちらの刺激を受けたのかを知らない状態でテストが行われています。
結果として、プラセボ群では男性のみで正しい写真の方が上下反転の写真よりもよく記憶されるというおなじみのパターンが見られました。これは主に、正しい写真の女性は、正しい写真の男性に比べて記憶に残りにくかったため、差異が発生しています。 しかし、刺激を与えたグループでは、女性の正しい写真の認識が向上し、男性と女性の像の認識の差がなくなりました。一方で、男性の認識については向上させませんでした。 研究チームは、脳への電気刺激によって、性的に描かれた女性を認識する際の知覚上の偏りが変化したと解釈しています。
研究チームは「最も有力な説明は、人がどのように物を見ることを学ぶかという理論に基づいています。経験を積むにつれて、脳はすべての顔に共通する特徴を意識的に抑え、一人ひとりの顔を区別する細部を識別できるようになるのです。しかし、性的なイメージで露わにされる身体部位など、特定の特徴がかえって注目を集める場合、それらはある人物を別の人物と区別する細部を覆い隠してしまいます。今回の実験では、電気刺激がそうした認識を弱めたのかもしれません」と説明しています。 注意点として、今回の研究では大学生を対象とした1回の実験セッションであり、刺激による効果が即時的なものとしては記録されたものの、どれほど長く続くのかは分かっていません、また、今回の実験で使用した画像はすべて性的に描かれたものであったため、電気刺激による認識の差が性的な表現そのものによって生じたのか、それとも画像に含まれる別の特徴によるものなのかを完全に切り分けることはできていないとしています。 エクセター大学心理学部准教授のチーロ・チヴィレ氏は「脳刺激は性差別を根絶する特効薬ではありません。しかし、微弱な電流を10分間浴びることなどで、人々の身体の見方が変わるのだとすれば、客体化は人間の視覚の固定的な特徴というより、むしろ習慣的に備わったものと考えられます。そして、習慣は生まれつき備わっているものとは異なり、変えることができるのです」と語りました。
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