国連の独立調査委、イスラエルがガザで「ジェノサイド」行ったと認定

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画像説明, ガザ市の病院で、息子の葬儀で涙を流す女性(8月、ガザ市)

国連人権理事会の調査委員会が16日に発表した報告書は、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区のパレスチナ人に対してジェノサイド(集団殺害)を行っていると認定した。2023年10月にイスラム組織ハマスとの戦争が始まって以来、国際法で定義される5件のジェノサイド行為のうち、少なくとも4件が行われたとしている。

新たに発表された報告書が認定したジェノサイド行為は、「集団構成員を殺すこと」、「集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること」、「全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること」、「集団内における子どもの出生を防止することを意図した措置を課すること」。

報告書は、イスラエルの指導者による発言およびイスラエル軍の行動パターンを、ジェノサイドの意図を示す証拠として挙げている。

イスラエル外務省はこの報告書を断固として拒否し、「歪曲(わいきょく)された虚偽の文書」だと批判した。

イスラエル政府の報道官は、調査委員会の専門家3人は「ハマスの代弁者」になっており、「第三者によって洗浄され繰り返されたハマスの虚偽情報のみに完全に依拠している」と非難した。また、これらの情報は「すでに完全に論破されている」と述べた。

イスラエルの報道官はさらに、「報告書に記された虚偽とは対照的に、ジェノサイドを行おうとしたのはハマスの側だ。ハマスは1200人を殺害し、女性たちをレイプし、家族を生きたまま焼き殺し、すべてのユダヤ人を殺すという目標を公然と宣言している」と付け加えた。

イスラエル軍は、2023年10月7日にパレスチナのハマス主導によってイスラエル南部で発生した前例のない奇襲攻撃への対応として、ガザ地区での軍事作戦を開始した。ハマスによるこの攻撃では約1200人が殺害され、251人が人質にされた。

ハマスがガザで運営する保健省によると、それ以降、イスラエルによるガザへの攻撃で少なくとも6万4905人が殺されている。

また、ガザの住民の大多数は繰り返し避難を強いられており、住宅の90%以上が損壊または破壊されたと推定されている。医療、給水、衛生、衛生管理の各システムは崩壊しており、国連が支援する食料安全保障の専門機関は、ガザ市で飢饉(ききん)が発生していると宣言している。

国連人権理事会が2021年に設立した「 東エルサレムを含むパレスチナ被占領地及びイスラエルに関する独立調査委員会(COI)」は、国際人道法および人権法に関するすべての疑惑のある違反行為を調査することを目的としている。

専門家3人からなるこの委員会は、南アフリカ出身で元国連人権高等弁務官のナヴィ・ピレイ氏が委員長を務めている。ピレイ氏は、ルワンダのジェノサイドに関する国際法廷で裁判長を務めていた。

委員会が発表した最新の報告書は、イスラエル当局およびイスラエル軍が、1948年の「ジェノサイド条約」で定義された5件の行為のうち、以下の4件を、国家的、民族的、人種的または宗教的集団に対して行ったと指摘している。この場合、この集団はガザ地区のパレスチナ人を指す。

「集団構成員を殺すこと」には、保護対象への攻撃、民間人およびその他の保護対象者を標的とする行為、ならびに死を引き起こすことを目的とした生活条件の意図的な付与が含まれている。

「集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること」には、民間人および保護対象への直接的な攻撃、拘束者に対する深刻な虐待、強制的な移動、環境破壊が含まれている。

「全部または一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること」には、パレスチナ人にとって不可欠な建造物および土地の破壊、医療サービスの破壊およびアクセスの拒否、強制的な移動、パレスチナ人への不可欠な援助、水、電力、燃料の遮断、生殖に関する暴力、ならびに子どもに影響を与える特定の条件が含まれている。

ジェノサイド条約での法的定義を満たすためには、加害者がこうした行為のいずれかを、集団を全部または一部破壊するという明確な意図をもって行ったことが立証されなくてはならない。

調査委員会は、イスラエルの指導者による発言を分析したと述べ、イツハク・ヘルツォグ大統領、ベンヤミン・ネタニヤフ首相、そしてヨアヴ・ガラント元国防相が、「ジェノサイドの実行を扇動した」と主張している。

また、イスラエル当局および治安部隊のガザでの行動パターンから導き出される「合理的な推論はただ一つ、ジェノサイドの意図だけだ」と述べている。

委員会によると、この行動パターンには、重火器を用いて前例のない数のパレスチナ人を意図的に殺害して深刻な害を与えた行為、宗教的・文化的・教育的施設に対する組織的かつ広範な攻撃、そしてガザ地区に対する包囲と住民を飢えさせたことが含まれている。

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画像説明, イスラエル軍は先に、数十万人のパレスチナ人に対し、ガザ市からの避難を命じた(9月撮影)

イスラエル政府は、自国の取り組みはハマスの能力を解体することのみを目指すもので、ガザの住民を対象としていないと主張している。また、自国の部隊が国際法に則って行動しており、民間人への被害を軽減するために可能な限りの措置を講じていると述べている。

COIのピレイ氏はBBCの取材に対し、「2023年10月7日の時点で、ネタニヤフ首相は『ハマスが展開し、隠れ、活動しているすべての場所、あの邪悪な都市に対して、強力な報復を加える』と誓っていた」と指摘した。

「首相が同じ声明の中で『邪悪な都市』という表現を用いたことは、ガザ市全体を責任ある存在、そして報復の対象と見なしていたことを示唆している。そして彼は、パレスチナ人に対して『今すぐ離れろ。我々はあらゆる場所で強力に行動する』と告げた」

「我々がすべての行動を収集し、事実認定を行い、それが実際に起きたかどうかを検証するまでに2年を要した(中略)導いてくれるのは事実だけだ。そして、一連の行為が、その意図をもって行われた場合にのみ、ジェノサイド条約の下で取り扱うことができる」

委員会は、イスラエルの政治指導者および軍指導者による行為が「イスラエル国家に帰属する」と主張。そのためイスラエル国家が、「ジェノサイドを防止することに失敗した責任、ジェノサイドを実行した責任、そしてジェノサイドを処罰することに失敗した責任を負う」のだとしている。

また、他のすべての国がジェノサイド条約の下で「ジェノサイドという犯罪を防止し、処罰する」即時の義務を負っていると警告した。委員会は、各国がその義務を果たさない場合、「共犯となる可能性がある」と述べている。

「我々は、関係者を共謀者やジェノサイドへの共犯者として名指しするまでには至っていない。しかし、それは(中略)この委員会が継続する作業であって、いずれ委員会はそこまでたどりつく」とピレイ氏は述べた。

国際的人権団体、イスラエル国内のの人権団体、国連の独立専門家、学者らも、ガザにおけるパレスチナ人に対するジェノサイドの疑いでイスラエルを非難している。

一方、国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエル軍によるジェノサイドを非難する南アフリカによって提起された訴訟を審理している。イスラエルはこの訴訟について「完全に根拠がない」とし、「偏った虚偽の主張に基づいている」と述べている。

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