イスラエル、ヨルダン川西岸への新たな入植計画を最終承認 国内外で物議
画像提供, Reuters
イスラエルは20日、イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区を東エルサレムから事実上分断し、パレスチナと呼ばれる土地を二分することになる新たな入植計画を最終承認した。この計画は、国内外で物議を醸している。
エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間に新たな入植者用住宅を建設する「E1計画」と呼ばれる構想は、国際的な激しい反発を受けてこの20年凍結されていた。反対派はこの計画について、実現可能な、ひとつながりのパレスチナ国家という希望を打ち砕くものだと警告している。
イスラエル国防省の委員会は20日、「E1入植地」に約3400戸の入植者用住宅を建設する計画を承認した。イスラエル閣僚で極右のベザレル・スモトリッチ財務相は14日に同計画の推進を発表した際、パレスチナ国家構想は「消えつつある」と述べていた。
パレスチナ自治政府は、この動きは違法で、「2国家解決」の展望を「破壊」するものだと非難した。
このところ、パレスチナ国家を正式に承認する意向を示す国が増えており、イスラエルはこれを強く非難している。こうした中、ヨルダン川西岸地区への新たな入植計画が最終承認された。
イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、ヨルダン川西岸と東エルサレムを占領。以来、約160の入植地を建設し、約70万人のユダヤ人が住んでいる。現在は推定330万人のパレスチナ人が入植地のそばで暮らしている。パレスチナ人は、これらの地域とガザ地区を、将来的にパレスチナ国家の一部とすることを望んでいる。
歴代のイスラエル政府は入植地の拡大を容認してきた。しかし、その拡大スピードは、2022年末にベンヤミン・ネタニヤフ氏が、入植地を推進する右派連立政権を率いるかたちで首相に復帰して以降、そして2023年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲を機に始まったガザでの戦争以降、急激に加速している。
東エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間に位置する、広さ約12平方キロメートルにわたる「E1入植地」に3401戸の入植者用住宅を建設する計画は、イスラエル国防省の民生局高等委員会によって承認された。
同委員会は、ヨルダン川西岸南部の新たな入植地「アサエル」に342戸の住宅を建設することも承認した。この場所にはすでに、政府の許可なく建設された前哨基地があり、今年5月にイスラエルの法律の下で合法化された。
民生局高等委員会を統括する極右のスモトリッチ氏は、「パレスチナ国家(構想)はスローガンではなく行動によって交渉のテーブルから消されつつある」と述べた。
「すべての入植地、すべての地域、すべての住宅が、この危険な思想のひつぎに打ち込まれる新たなくぎとなる」
スモトリッチ氏はまた、「この動きを完遂」し、ヨルダン川西岸を正式に併合するようネタニヤフ氏に求めた。
イスラエルは1980年に東エルサレムを事実上併合したが、国際社会のほとんどがこれを承認していない。
「E1入植計画」の対象地域は、エルサレム南部と北部を分断し、ラマラや東エルサレム、ベツレヘムを結ぶパレスチナ都市圏の形成を阻む、戦略的な場所に位置する。そのため、同地域での開発は、パレスチナ国家の樹立を事実上阻止するものだと、反対派は警告している。
イスラエルの反入植監視団体「ピース・ナウ」は、「戦争の陰に隠れて、スモトリッチ氏と、救世主の到来を信じるメシア信仰の少数派は、いかなる合意がなされたとしてもいずれは撤去される運命にある入植地を建設している。『E1入植計画』の唯一の目的は、政治的解決を妨害し、2民族の共存を認めないアパルトヘイト国家への道を急ぐことだ」と警告した。
イスラエル占領下にないヨルダン川西岸の一部を統治するパレスチナ自治政府も、イスラエルが「E1入植計画」を承認したことを非難している。
「この計画はエルサレムをパレスチナの周辺地域から孤立させ、大規模な入植地帯に埋没させるもの」で、ヨルダン川西岸を、「野外刑務所のような、分断された飛び地」に変えるものだと、自治政府の外務庁は声明で主張した。
さらに、今回の承認は「入植や併合、ジェノサイド(集団虐殺)、強制移住という犯罪への、イスラエルの公式な関与」を構成するものだとした。イスラエルは長年、こうした主張を否定している。
パレスチナ自治政府外務庁は、「イスラエルに植民地計画を中止させ(中略)パレスチナ問題の解決に関する国際的合意を尊重させるために、制裁を含む真の国際的行動」を求めると訴えた。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は、「E1入植計画」が実施されれば「パレスチナ国家を二分し、国際法に明白に違反し、『2国家解決』を深刻に損なう」ことになるとし、「イスラエル政府はこの決定を撤回すべきだ」と付け加えた。
ヨルダン国王アブドゥラ2世も、この計画を一蹴し、「『2国家解決』こそが、公正かつ包括的な平和を実現する唯一の方法」だとした。
ドイツ政府の報道官は、入植地建設は国際法に違反しており、「交渉による『2国家解決』と、イスラエルのヨルダン川西岸での占領行為の終結を妨げる」ものだと述べた。
ただ、アメリカのマイク・ハッカビー駐イスラエル大使は18日、イスラエル軍ラジオからドナルド・トランプ政権の立場について問われた際にこう答えていた。「『E1入植地』で大規模な開発を行うべきかどうかは、イスラエル政府が決定すべきことだ。したがって、我々はその良し悪しを評価しようとは思わない」。
ハッカビー氏はまた、「原則として、それは国際法違反ではない。また、イスラエル人がイスラエルに住む権利があることを認識する義務が、我々全員にある」とも述べた。
ICJは昨年7月、「イスラエルがパレスチナ被占領地にとどまり続けることは違法」としたうえで、「イスラエル国家は、パレスチナ被占領地に自らが違法にいる状態を、可能な限り速やかに終わらせる義務がある」と勧告した。
これに対し、ネタニヤフ氏は当時、「うその判断」だとICJを批判。「ユダヤ人は自分たちの土地において、占領者などではない。自分たちの永遠の首都、エルサレムにおいても、先祖代々の土地ジュデアとサマリア(ヨルダン川西岸)においても、ユダヤ人は占領者ではない」と反発した。