ガザの物資配給所近くで民間人射殺、国連が調査要求

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画像説明, アメリカが支援する「ガザ人道財団(GHF)」は、ガザ南部と中部に計4カ所の物資配給センターを設置した。画像は南部ラファの配給センターから戻るパレスチナ人避難者たち(1日)

ラファの配給センターは、アメリカとイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」が運営している。複数の目撃者によると、同センターで食料の配給を待っていたところ、人々が銃撃されたという。

赤十字国際委員会(ICRC)の発表によると、ICRCの病院は179人の負傷者を受け入れ、うち21人の死亡が確認された。ハマスが運営するガザ地区の民間防衛隊は、31人が死亡したとしている。

イスラエル軍は1日、配給センター付近またはセンターの施設内で兵士が民間人に発砲したとの報道は虚偽だとした。

GHFはこうした報道は「まったくのでっちあげ」だとし、施設付近で攻撃があったことを示す証拠をまだ確認していないとした。

イスラエルは、BBCを含む外国報道機関がガザ地区に入るのを認めていない。このため、現地の状況を独自に検証するのが難しい状況が続いている。

国連のグテーレス事務総長は2日の声明で、「昨日、ガザで援助を求めていたパレスチナ人が殺害され、負傷したとの報告に、私はがく然としている」と述べた。

「これらの事案に関する即時かつ独立した調査を実施し、加害者に責任を負わせるよう求める」

イスラエル外務省は、グテーレス氏のコメントは「恥辱」だとソーシャルメディアに投稿。グテーレス氏がハマスに言及しなかったことを批判した。

ハマス運営の民間防衛隊は、1日早朝にラファの配給センター付近で「イスラエル軍による民間人数千人への銃撃」があったと発表。これにより、31人が死亡し、176人が負傷したとした。

ICRCは1日、ラファの野戦病院に女性や子供を含む179人の「大規模な負傷者の流入」があったと発表。その大多数は、銃創や破片による負傷者で、21人は到着時に死亡が確認されたとした。また、「患者は全員、支援物資配給施設に向かおうとしていたと話している」と述べた。

国境なき医師団(MSF)によると、南部ハンユニスにあるナセル病院で活動する複数のチームが重傷者の治療にあたった。このうち数人は命が危険な状態だという。

患者たちは「イスラエルのドローン(無人機)やヘリコプター、ボート、戦車、兵士に、四方八方から攻撃された」と話していると、MSFは付け加えた。また、MSFのスタッフのきょうだい1人が「配給センターから物資を回収しようとした際に殺害された」とした。

ラファのジャーナリストはBBCに対し、GHFの拠点に近い、同市のアル・アラム・ラウンドアバウト付近にパレスチナ人が集まっていたところ、イスラエルの戦車が近づいてきて発砲したと語った。

1日朝にオンライン投稿された動画には、砂地の開けた場所にパレスチナ人が避難しているとみられる様子が映っていて、自動小銃の発砲音が聞こえる。動画からは検証に必要な特徴的な視覚情報を十分得られず、BBCは撮影場所を確認できていない。

イスラエル国防軍(IDF)は1日午後に声明を発表。初期調査で、IDFの部隊が「人道支援物資の配給施設付近または施設内にいる民間人に対して発砲した事実はない」ことが分かったとし、IDFによる攻撃があったとの報告は虚偽だとした。

IDF報道官のエフィー・デフリン准将は、ハマスが「うわさを流布」し、「ガザの住民が配給センターに到達するのを露骨かつ暴力的に阻止しようとしている」と非難した。

IDFは、武装した人物らが物資を受け取りに行く途中の民間人に向けて発砲する様子をとらえたドローン映像を公開した。BBCは撮影場所や日時を検証できていない。

IDF当局者はその後、記者団に対し、GHFの施設から約1キロメートル離れた場所で、IDF部隊に近づこうとした「何人かの容疑者を阻止するため」兵士が行動したと説明した。この時、GHFの施設はまだ開いていなかったとした。

「警告射撃が行われた」と、この当局者は述べ、「問題となっている事案と、IDFに対する虚偽の主張には何の関係もない」と強調した。

GHFは2日に声明で、こうした報道は「国際的なメディアコミュニティーに流された、完全なでっち上げや誤報だ。そういう点で、最も悪質だといえる」と主張した。

「昨日(1日)の作戦中に、負傷者や死者、あるいは事件は発生していない。それだけだ。我々の施設やその周辺で攻撃があったことを示す証拠は、これまでのところ確認されていない」

アメリカのマイク・ハッカビー駐イスラエル大使は2日、この件について、大手報道機関が「見境のない、無責任な報道をしている」と非難した。

「ドローン映像や目撃証言が、負傷者や死者、銃撃、混乱はなかったことをはっきり示している」と、ハッカビー大使は述べた。

「こうした誤解を招くような、誇張された、まったくのでっち上げの唯一の情報源はハマスだ。これは、アメリカにおけるユダヤ人に対する暴力行為の一因になっている、反ユダヤ主義の憎悪をあおり立てることを目的としたものだ」

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画像説明, ガザ中部デイル・アル・バラフでは、モスクと、近くの墓地がイスラエル軍の攻撃を受けた。画像はモスクと、子供を抱えるパレスチナ人女性ら(2日)

こうした中、ラファ市タル・アル・スルタン地区にあるGHF施設付近で2日、パレスチナ人3人が殺害されたと、ハマス運営のガザ保健省と地元メディアが報告した。

ICRCの報道官はAP通信に対し、ラファの野戦病院に負傷者50人が搬送されたと語った。大半は銃創や破片による負傷者で、2人は到着時に死亡が確認されたという。一方でハンユニスにあるナセル病院は、3人の遺体が運び込まれたと明らかにした。

IDFは声明で、施設から約1キロメートル離れた場所にいた部隊に、「複数の容疑者が近づいてきたため、警告射撃を行った」と説明した。

そして、「死傷者に関する報告があることは承知している。当該事案の詳細について、徹底した調査を進めている」と付け加えた。

北部ジャバリアでもこの日、イスラエル軍の空爆があった。ハマス運営の民間防衛隊は、住宅1棟がイスラエルの空爆を受け、子供6人と女性3人を含む14人が殺害されたと発表した。また、20人以上が破壊された建物のがれきの下敷きになっているとみられるとした。

IDFは即座にコメントしなかったが、過去24時間にガザ各地の数十の標的を空爆したと、声明で明らかにした。これらの標的には、「テロ組織に属する軍事施設や地下トンネル、武器庫」が含まれるとした。

イスラエルは3月2日にガザの封鎖を開始し、その2週間後にはハマスに対する攻勢を再開して、2カ月間続いた停戦を打ち切った。イスラエルは、ハマスに残る58人の人質の解放を促すための圧力だとしている。人質のうち、20人は生存しているとみられている。

イスラエルは同18日に、ガザ封鎖を一時緩和し、「基本的な量の食料」が搬入されるのを認めるとも発表した。

ハマスが2023年10月7日にイスラエルに越境攻撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去ったことを受け、イスラエルは、ガザ地区で軍事作戦を開始した。

ガザ保健省によると、イスラエルが作戦を開始して以降、ガザで少なくとも5万4470人が殺された。そのうち4201人は、イスラエルが3月18日に攻勢を再開して以降に死亡したという。

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