社会的つながりを保つことが生物学的な老化を遅らせるカギかもしれない
人間は誰しも老化してしまうものですが、老化のプロセスを遅らせることができれば加齢に伴う疾患を抱える期間が短くなったり、より長生きできたりする可能性があります。新たな研究では、「強い社会的なつながり」を持っている人は生物学的老化が遅いことが明らかとなりました。
Cumulative social advantage is associated with slower epigenetic aging and lower systemic inflammation - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666354625001541Can friendship keep you young? Scientists say your social life might slow ageing https://theconversation.com/can-friendship-keep-you-young-scientists-say-your-social-life-might-slow-ageing-266313 強い社会的つながりを持つ人は長生きし、健康状態も良好であるということは、以前から知られてきました。しかし、社会的つながりが生物学的なレベルで身体へどのような影響を及ぼすのかは、あまりよくわかっていませんでした。
そこで、アメリカのコーネル大学やニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、ハーバード公衆衛生大学院などの研究チームは、2000人以上の成人を対象にして社会的つながりの強さや一貫性と、老化との関連性を調査しました。 研究チームは家族関係に加えて地域社会および宗教団体への関与、コミュニティにおける精神的サポートや活動度などに着目し、「cumulative social advantage(CSA、累積社会的優位性)」という指標を考案しました。 CSAは本質的に、人がどれだけ社会的につながり、支えられているのかを示すものです。これを研究対象とすることで、「結婚」や「友情」といった単一の要因に着目した従来の研究よりも、広範な社会的つながりと老化の関係性を捉えることが可能となります。
研究チームは被験者のCSAを算出した後、「DNAの変化に基づく生物学的年齢」「全身の炎症レベル」「コルチゾールやアドレナリンといったストレス関連ホルモンの働き」といった、さまざまな老化指標とCSAを比較しました。
その結果、社会的つながりが強い人はより生物学的老化が遅く、炎症が少ない傾向があることが判明しました。一方、社会的つながりと短期的なストレス反応の間には、大きな関連性はみられなかったと報告されています。
イギリスのラフバラー大学で老化生理学の客員教授を務めており、今回の研究には関係していないジェームズ・グッドウィン氏は、「この研究は、社会的なつながりが老化と密接に関連していることを示す証拠をさらに増やすこととなりました」と述べました。
グッドウィン氏は、人間は数十万年前から社会的な存在として進化しており、集団に属することは身の安全や食糧の確保、健康の維持において重要だったと指摘。そのため、人間の体が社会的につながっている時にうまくいくようになっているのは、驚くべきことではないと解説しています。また今回の研究では、社会的優位性がより広範な不平等と関連していることも明らかになりました。たとえば教育水準が高い人や収入が高い人、あるいは特定の民族集団に属している人は生物学的老化が遅く、炎症反応も少ない傾向があったとのことです。これは、社会環境と経済環境の両方が老化に影響を与えることを示唆しています。 グッドウィン氏はこの問題に対処するため、2つの方法が考えられると主張。まず1つ目が、「貧困を削減し、教育と機会を向上させる社会政策を推進すること」です。これらの要因は明らかに健康や老化に影響を及ぼしているため、国家や地域レベルでの対処が重要です。 2つ目が、「人々が自らの社会的つながりを保とうとすること」です。人は自分の行動をある程度コントロールできるため、他者とのつながりを保ち、支え合い、関わり続けようと努力することで、自分の生物学的老化を遅らせられる可能性があるとグッドウィン氏は主張しました。
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