量子技術がやって来る──コンピューティングの変革とセキュリティの危機(Forbes JAPAN)

■ポスト量子への備えという戦略的要請 量子コンピューティングが支配する世界への備えは、単に最新の技術ニュースを追いかける以上のことを必要とする。意識的な投資、政策の協調、そして事業戦略の策定がすべて不可欠な要素である。 ●1. ポスト量子暗号(Post-Quantum Cryptography。PQC)の実装 組織は、量子コンピューターによる攻撃に耐えうるアルゴリズムへの移行を開始する必要がある。米国標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology。NIST)は、PQCの標準化プロセスにおいてすでに複数の最終候補を選定しており、実装のタイムラインは2030年までに完了すると予想されている。特に機密性の高いデータや長期にわたって保存されるデータを扱う業界では、リスクを限定するためにこの技術の早期導入が不可欠となるだろう(編注:日本の金融庁も、金融機関に対しPQCに対応するよう要請している)。 ●2. 破壊にとどまらず、強化のために量子を活用 量子コンピューティングはサイバーセキュリティに課題をもたらすが、同時に強靭性を向上させる可能性も秘めている。「量子鍵配送(Quantum Key Distribution。QKD)」や量子センシングを用いて安全な通信ネットワークを確立することが可能であり、これは構造的欠陥やサイバー異常など、広範囲な問題に対する検知能力を大幅に向上させる可能性がある。 ●3. 人材育成と官民連携の促進 量子の進歩には、物理学、工学、人工知能、サイバーセキュリティ、ソフトウェアの専門家からなる学際的な人材が不可欠である。人材のパイプラインを構築するには、学術機関と企業経営陣との連携が求められる。政府は国家プロジェクトを支援するだけでなく、イノベーションのプロセスを加速させるための早期導入者として行動しなければならない。 ■デジタル変革の決定的瞬間 今後5年間で、潜在的な可能性から現実的なインパクトへの移行が極めて重要となるだろう。将来を見据えると、量子コンピューティングは人工知能、クラウドインフラ、5G、エッジコンピューティングと融合し、私たちが世界をモデル化し、意思決定を行う方法を劇的に変革することが予想される。この集中プロセスを通じて、近い将来、計算能力は毎秒数千兆回に達する可能性がある。 また、量子技術は善にも悪にも利用されうるため、倫理的に扱われ、協調的な管理下に置かれなければならない。 量子技術は、21世紀で最も重要な進歩の1つである。ビジネスリーダー、政策立案者、そして技術者は、その機会とリスクの両方に備え、その進路を方向づけるために今すぐ行動を起こさなければならない。今日、量子への備えに投資することによって、組織は明日のための強靭な競争優位性を築くことができるのだ。

Chuck Brooks

Forbes JAPAN
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: