あと1億年で海王星サイズに縮小? 太陽系外惑星「HIP 67522 b」は主星のフレアを誘発している可能性
太陽系外惑星が主星である恒星の活動に影響をおよぼし、発生したフレア(恒星表面の爆発現象)によって大気を失っていく。
そんな相互作用を捉えたとする研究成果を、オランダの研究者らのチームが発表しました。
若い星を公転する木星サイズの低密度な惑星「HIP 67522 b」
研究チームが観測したのは、ケンタウルス座の方向約406光年先の恒星「HIP 67522」です。
形成されてからまだ1700万年程度の若いHIP 67522では、「HIP 67522 b」および「HIP 67522 c」という2つの太陽系外惑星が見つかっています。
このうちHIP 67522 b(以下、惑星b)は、主星から約0.07天文単位しか離れていない軌道を約6.96日周期で公転。
質量は木星の0.05倍以下と推定されていますが、主星に強く加熱されているため、直径は木星と同程度まで膨張しています。
【▲ 恒星「HIP 67522」と太陽系外惑星「HIP 67522 b」(右手前)の想像図。主星のフレアによってHIP 67522 bから大気が散逸していく様子を描いている(Credit: Janine Fohlmeister (Leibniz Institute for Astrophysics Potsdam))】HIP 67522 bは磁力線を介して主星のフレアを誘発している?
ESA=ヨーロッパ宇宙機関の系外惑星観測衛星「Cheops(ケオプス)」でHIP 67522を観測したところ、地球から見て惑星bが主星の手前を横切るタイミングで、主星のフレアが地球の方向(つまり惑星の方向)へ発生していることを確認。
データを分析した研究チームは、公転する惑星bが主星HIP 67522の磁場を乱すことで生じた波が、磁力線に沿って主星の表面に達することでフレアの発生を誘発していると考えています。
惑星bが受ける主星からの放射は、この磁気的な相互作用が無い場合と比べて実に6倍ほど。
今後1億年の間に、惑星bは大気散逸によって木星サイズから海王星サイズまで小さくなる可能性があります。
【▲ 磁力線を通じて主星「HIP 67522」(左)と相互作用し、フレアを誘発する太陽系外惑星「HIP 67522 b」(右)のイメージイラスト(Credit: Danielle Futselaar (https://www.artsource.nl/))】ESAによると、恒星と惑星が相互作用する可能性は1990年代から指摘されていたものの、今回観測されたフレアのエネルギーは予測のおよそ100倍に達するといいます。
HIP 67522に似た惑星系をより多く観測・研究することで、このような相互作用についての理解が深まることが期待されます。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部