日曜夜の憂鬱は克服できる。新しい週への不安を取り除くには〇〇が有効だった。
「プレゼン資料が未完成だ。月曜中にやらなくては……」「あの未解決の問題、どう対応しよう……」
充実した週末を過ごしたのに、日曜の夕方になると、急に胃が重くなる——。仕事が好きな人でも、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
調査によれば、ビジネスパーソンの8割以上がこの「サンデーブルー(日曜の憂鬱)」と呼ばれる憂鬱感を抱えているのだそう。
この「日曜の憂うつ」を乗り越え、翌日のパフォーマンスを最大限に引き出すための得策があります。それは、「寝る前にToDoリストを書く」というシンプルな方法。
今回は週明けの仕事効率を上げる「寝る前のToDoリスト」の効果、および筆者自身の実践例をご紹介します。
月曜の仕事に悪影響を及ぼす「サンデーブルー」
金曜の夕刻、最後のメールを送信し、デスクを整理する瞬間の解放感は格別です。しかし、充実した土曜日を過ごしたあとも、日曜の夕方になると次第に重くなる心——この「サンデーブルー(日曜の憂うつ)」は、翌日のパフォーマンスを低下させてしまいます。
ビジネスパーソンの1,000人以上のうち81%が「週の始まりを前にした日曜日に不安感が高まる」と報告しています。*1 つまり、8割もの人が日曜の終わりに「明日から仕事か……」とため息をついているわけですね。
注目すべきは、この現象は「仕事が好きな人」にも生じること。調査にあたった専門家らは次のように述べています。
And it's not just because people hate their jobs: Even people who said they love their work reported anxiety over job expectations and workload.
(そして、それは単に『仕事が嫌いだから』というわけではありません。仕事が好きだと言った人でさえ、仕事に対する期待や業務量に不安を感じていると報告されています)*2 ※和訳は筆者が補った
ハイパフォーマーであっても、未完了のプロジェクト、重要なプレゼンでの成功への圧力、チーム内の人間関係など、日曜の夜には次週の課題が次々と意識の表面に浮かび上がるもの。
サンデーブルーが睡眠とパフォーマンスに与える影響
心理学を専門とする研究者、トリーア大学のクリスティン・シレク氏によると、「週の業務が完了していない」という認識は、反復的な不安思考を引き起こし、週末の睡眠に悪影響を及ぼします。*3
そして、質の悪い睡眠は翌日の集中力低下につながり、計画的なスケジュール管理や戦略的思考力を鈍らせます。結果として、一週間の生産性全体に影響するのです。
週始めのパフォーマンスを上げる「寝る前のToDoリスト」
では、「日曜の憂うつ」からの悪影響にどう対処したらいいのでしょうか。それは、「仕事のToDo」を寝る前に書き出すことです。
科学的に実証された効果
米国ベイラー大学の睡眠神経科学研究者であるマイケル・スカリン氏の実験では、被験者を2つのグループに分けました:
- グループA:寝る前にその日に達成したものをすべてリスト化する
- グループB:寝る前に明日から数日中までに、終わらすべきものをリスト化する
結果:グループBのほうが9分早く入眠したのです。翌日への不安が頭の中で巡る時間が短縮されたと考えられます。*3
サセックス大学の心理学を専門とする客員教授、クラウディア・ハモンド氏は上記の研究結果について、「認知的オフローディング」という現象で説明できると考察しています。
It's called "cognitive offloading" and it happens when a person takes a physical action to relieve a mental load.
(それは「認知的オフローディング」と呼ばれ、精神的な負担を軽減するために物理的な行動をとる場合に起こる現象です)*3 ※和訳は筆者が補った
たとえば、友人の電話番号をすべて覚えるのは困難なので、私たちはスマートフォンに情報を記録しますよね。覚える必要がないため、脳のストレスが軽減するのです。
これと同じ原理が「サンデーブルー」の対処法にも応用できます。日曜の夜、「明日の9時からの会議資料はどうしよう」「あのクライアントへの提案書の修正をいつ終わらせよう」といった思考が頭を巡ると、脳は常にそれらを「忘れてはいけない重要事項」として処理し続けます。
寝る前のToDoリストは、このプロセスを外部化する効果的な手段なのです。明日の仕事を考えて憂うつになるのなら、物理的に考えごとの原因であるものをどこかに移す——つまり、寝る前のToDoリストが脳のストレスを減らすのです。
仕事の前の晩にToDoリストを書いてみた
筆者自身も、日曜夜の「次週への不安」には悩まされてきました。そこで実際に寝る前にToDoリストを作成し、実践してみました。
用意したものは、無印良品の短冊メモチェックリスト。幅が82ミリ、縦が185ミリ……と、ToDoを書くのに十分なサイズです。
就寝前に明日のToDoをチェックリストに書きます。明日の作業について考えるだけで、すでに胃に緊張感が走りますが……。
上記が洗い出したものです。たった7つの項目を書き出して「本当に効果があるの?」「これが本当に効果的なのか」という懐疑的な気持ちがありました。
しかし、意外にもこの日はスッと入眠できました。
もちろん、出勤時にリストをチェックしておくことも忘れずに。
寝る前のToDoリストは翌日のパフォーマンスを上げる
実践で得られた3つの変化
1. 入眠時間の短縮:通常は30分以上かかっていた入眠時間が、リスト作成後はほぼ即座に眠りにつけました。これは23時過ぎという、いつもより30分遅い就寝時間にもかかわらずです。
2. 目覚めの質向上:翌朝の目覚めは明らかに良く、一日のスタートが快適になりました。
3. 心理的解放感:最も価値があったのは「タスクを頭から解放できた」という感覚です。重要なタスクを紙に委託することで、脳はそれらを保持するためのリソースを解放できたのです。
当初は「タスクを書き出すことで余計に仕事のことを考えてしまうのでは?」という懸念もありましたが、結果は正反対でした。イメージとしては不快な体験を人に話して、スッキリするのと近い感覚です。
言うまでもなく、朝の気分は一日の仕事のパフォーマンスに影響を与えるものです。いつもより目覚めのよい翌日には、仕事に向かう心もちも変わります。寝る前のToDoリストで、翌日の仕事に対する憂うつ感が減るのならお手頃ですよね。ぜひ、お試しあれ。
***週のスタートを気持ちよく切るためには、「日曜の夜の憂うつ感」を減らすことが大切です。でも、難しい方法をとらなくとも「仕事のタスク」を書き出せば、あなたのなかの不安は軽減されるでしょう。ぜひ、この記事を参考に、パフォーマンスの高い月曜日にしてみてくださいね。
【ライタープロフィール】青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。