ウクライナから民間人らが強制失踪「ロシアの国策」 国連調査委報告書 家族の性被害も

国連人権理事会のウクライナに関する国際調査委員会のモーセ委員長=2022年9月、スイス・ジュネーブ(ロイター)

国連人権理事会の国際調査委員会は、ロシアが「国策」として、侵略しているウクライナから民間人や軍人を強制失踪させていたとする報告書を公表した。報告書は強制失踪がロシアによる「人道に対する罪」にあたると認定。多数のウクライナ人がロシアで違法に収容され、家族が性被害にあうケースもあったとしており、侵略が多大な人権侵害をもたらしていることが改めて明らかになった。

5万人超の行方分からず

報告書は19日、国連人権理事会に提出された。ロイター通信によると、ロシア政府は「政治的で一方的な報告書」については「コメントしない」としている。

国家による強制失踪は、ウクライナをはじめとする77カ国が批准する「強制失踪条約」で人道上の罪にあたると規定されているが、ロシアは批准していない。

ウクライナは昨年8月、同年7月時点で民間人9425人、軍人4万447人の行方が分からなくなっていると公表していた。

調査委は、強制失踪が疑われる100以上の案件を調査。多数の失踪者が、露政府の管理するロシア国内の収容所に移送されて数カ月から数年間、失踪し、死者がいたことも確認された。

政府側が失踪者の一部の親族に対し、失踪者の収容を認める回答をしていたことなどから、国家による強制失踪と認定された。

拘束は「軍事作戦への対応」

報告書は複数の悲惨な人権侵害を伝えている。

2022年4月には、失踪した親族の行方をロシア当局に尋ねに行ったウクライナの40代女性がロシア兵に強姦されたという。

報告書によると、女性はロシアが占領したウクライナ南部ヘルソン州の軍拠点を訪問。対応した露連邦保安局(FSB)職員は、質問に対する女性の応答が不十分だとして、3人のロシア兵を呼び、こう言った。

「彼女が何か思い出すかもしれないから、普通に話しかけてやってくれ」

言葉とは裏腹に、女性は別室で3人の兵士に強姦され、叩かれて歩くことすらままならない状態にされたと報告書は指摘する。

調査委は、露国防省が強制失踪者の親族に送付した50通以上の手紙も確認。同省が複数の手紙で失踪者を「特別軍事作戦への対応」のために拘束したと伝えていたことも判明した。

報告書は、ロシア・ウクライナ両軍が戦闘力を失った戦傷者に攻撃していたとし、双方の戦争犯罪にあたるとも指摘している。

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