トランプ氏、15日にアラスカ州でプーチン氏と会談すると発表 ゼレンスキー氏はロシアとの「領土交換」に反発
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ドナルド・トランプ米大統領は8日、ウクライナ侵攻をめぐりロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、15日に米アラスカ州で会談するとソーシャルメディアで発表した。ロシア政府はこれを受けて、プーチン大統領が出席すると認めたほか、トランプ氏をモスクワへ招待したと明らかにした。トランプ氏は、ウクライナに関するプーチン氏との交渉では「領土交換」が関係することになると言及している。これに対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日、ウクライナは「占領者に領土を明け渡さない」と述べ、ロシアとの領土交換を拒絶した。
トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、会談の場所と日程を発表。「大いに期待されていた、アメリカ合衆国大統領の私と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談は、次の金曜日、2025年8月15日に偉大なアラスカ州で行われる」と書いた。
これを受けて、クレムリン(ロシア大統領府)のユーリ・ウシャコフ補佐官(外交担当)は、プーチン大統領がトランプ氏との会談に出席すると追認。「ロシアとアメリカは国境を接する近隣同士」なので、「我々の代表団が単にベーリング海峡を越えて、これほど重要で期待されている両国の首脳会談がアラスカで開かれるのは、とても論理的なことに思える」とコメントした。
ウシャコフ補佐官は7日の時点で、米ロ両政府がすでにトランプ氏とプーチン氏の会談場所について合意し、詳細の協議を開始したと報道陣に述べていた。
ウシャコフ補佐官はさらに、その次の首脳会談はモスクワで開くことも可能だと述べ、すでにトランプ氏をモスクワに招待するとアメリカ政府に伝えたのだと明らかにした。
これについてホワイトハウスはまだコメントしていない。
現職のアメリカ大統領が最後にロシアを訪れたのは、2013年に当時のバラク・オバマ大統領が主要20カ国サミットのためサンクトペテルブルクを訪れた時だった。その翌年2014年にロシアがウクライナ東部に侵攻しクリミア半島を併合したため、ロシアと西側の関係は破綻した。
トランプ大統領はソーシャルメディアでの日程や場所の発表の前、ホワイトハウスで記者団に、「とても近いうちにプーチン大統領と会う。もっと早く会うはずだったが、残念ながら警備上の手配が必要なんだろう」と述べ、会談場所は「いろいろな意味でとても人気がある」場所のはずだとも話していた。
トランプ氏はさらに記者団に対して、プーチン氏との会談で交渉する取引には、ウクライナとロシアの「両国のためになる(中略)一定の領土交換」が関係する可能性にも言及していた。
「もう3年半もそのために戦い続けてきた領土がある。ロシア人が大勢死んだ。ウクライナ人が大勢死んだ。だから我々は、それを見ている」のだとトランプ氏は記者団に述べ、「実際に一部を取り戻し、一部を交換することを検討している。複雑だし、実際、簡単ではない。一部を取り戻して一部を交換することになる」と話した。
トランプ氏はこの日、アゼルバイジャンとアルメニアの両大統領をホワイトハウスに招き、和平に関する合意文書の署名を仲介。その署名式の後、記者団にロシアとの首脳会談について話した。
トランプ氏は、ウクライナとの和平交渉に進展がなければ8月8日を期限に、ロシアに追加制裁を科すと述べていた。この日、それについての発表は特になかった。
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プーチン大統領は7日にモスクワで、トランプ氏の特使スティーヴ・ウィトコフ氏と会談した際に、求める和平条件を提示したとされる。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは消息筋の話として、プーチン氏はウクライナ軍が東部ドネツクとルハンスク両州から完全撤退することを求めていると伝えた。ロシアは両州の大半をすでに制圧している。
同紙はさらに、欧州諸国はその場合、ウクライナ東部ヘルソンとザポリッジャ両州はどうなるのか、明示するよう求めていると報じた。ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州も一部を掌握している。
ロシア側の要求についてアメリカから説明を受けた欧州当局者たちは、プーチン氏が「今の前線を現状のまま凍結させるつもりなのか、それともヘルソンとザポリッジャ両州からはいずれ完全撤退するつもりなのか、どちらともとれて不明確だ」という印象を得たと、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。
同紙の報道内容について、BBCは確認できていない。
ウクライナ政府はこれまで、自国の代表が交渉に参加していない限り、どのような領土割譲も受け入れられないと強調している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、プーチン氏と会談するとのトランプ氏の発表を受け、ウクライナは「占領者に領土を明け渡さない」と表明した。
メッセージアプリ「テレグラム」に投稿した声明の中で、ウクライナ抜きの解決策は「平和に反する解決策」だと、ゼレンスキー氏は主張した。
ゼレンスキー氏はソーシャルメディア「X」にも、動画声明を投稿。「この戦争は終わらせなければならない。そして、それを終わらせるべきなのはロシアだ。ロシアが戦争を始め、戦争を長引かせ、あらゆる期限を無視している。それこそが問題で、それ以外のなにものでもない」と訴えた。
ゼレンスキー氏はさらに、ウクライナ抜きで下された決定では「何も実現できない」、「それらは、そもそも失敗に終わる決定で、機能しない決定だ」と強調した。
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トランプ氏とプーチン氏の会談については、「我々の土地で激しさを増し、我々の国民に対して行われているこの戦争から非常に遠く離れた」場所で行われようとしていると指摘。この戦争は「我々抜きで、ウクライナ抜きで終わらせることはできない」と主張した。
ゼレンスキー氏は、「真の」平和のために、「我々にはトランプ大統領、そしてすべてのパートナーと共に協力する用意がある」と述べた。
ウクライナのアンドリー・シビハ外相も声明を発表し、「この戦争を始めたロシアが報われることがあってはならない」と訴えた。
「ウクライナ人は、国際法と、我が国の憲法で定められた領土保全と国境に対する尊重に基づく、公正な平和を獲得するに値する」と、シビハ氏は述べた。
さらに、アメリカとウクライナに「公正な平和を追求する継続的な意欲」があるにも関わらず、「ロシアは民間人に対するテロ行為を継続し、期限を無視し、戦争を終結させることに心からの関心を示していない」と付け加えた。
ウクライナは、「ウクライナと共に交渉される意味のある対話と現実的な解決策」には今もオープンだと、シビハ氏は述べた。
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BBCがアメリカで提携するCBSニュースは、ウクライナが領土のかなりの部分をロシアに渡すことを求める停戦案について、ホワイトハウスは欧州各国を納得させようとしていると伝えている。
CBSニュースは消息筋の話として、この停戦案ではロシアは併合しているクリミアをそのまま支配し続けるほか、ドネツクとルハンスク両州からなるドンバス地方全域を領有することになる。
他方、ロシアはヘルソンとザポリッジャ両州はウクライナに返還することになると、CBSは伝えている。
CBSニュースによると、ホワイトハウス幹部の一人は、15日の米ロ首脳会談の計画はまだ流動的で、ゼレンスキー氏が何かしらの形でかかわる可能性はまだあると話している。
トランプ氏は8日に記者団に対し、3カ国間の合意形成をアメリカが実現する可能性がまだあると強調した。
「欧州首脳たちは平和を求めている。プーチン大統領も平和を求めていると思う。ゼレンスキー氏も平和を求めている」とトランプ氏は述べ、「ゼレンスキー大統領は、彼が必要とするものをすべて手に入れる必要がある。何かに調印する用意を彼はする必要があるし、その実現のために懸命に努力していると思う」と話した。