ゲームソフトも値上がりする時代到来?アメリカで任天堂ソフトの価格が爆上げ
ソフト1本が5,000円だった時代が懐かしいよ…。
Nintendo Switch 2の「Nintendo Direct」では、同ハードの価格が明かされることはなく、後になってその価格が、アメリカでは450ドル(約6万5500円)であることに驚かされました(日本語・国内専用版は税込4万9980円)。
しかし、もっと大きな驚きだったのは、ローンチソフトである『マリオカート ワールド』のアメリカでの価格が80ドル(約1万1600円)であったということです(日本での販売価格はダウンロード版:税込8,980円、パッケージ版:税込9,980円)。
これは任天堂のソフトの中では最高額であるだけでなく、「安価なゲームに期待するな、これからはもっと高くなるのみだ」というメッセージなのかもしれません。
ほぼ全ての任天堂タイトルが値上がり?
Image: Walmart『マリオカート ワールド』同梱版のNintendo Switch 2は500ドル(約7万2900円)。これを「安い」と言える人はそういないでしょう(日本では税込5万3980円)。
また今回値上げされるのは24人でマルチプレイできる『マリオカート ワールド』のように、大規模なマルチプレイができるタイトルだけではないようです。
Nintendo Switchでは60ドル(約8,750円)だった『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』(日本ではダウンロード版:税込9,100円、パッケージ版:税込9,128円)や『星のカービィ ディスカバリー』(日本ではダウンロード版:税込8,500円、パッケージ版:税込8,578円)ですが、追加要素などがあるものの、Nintendo Switch 2 Editionの価格は80ドル(約1万1600円)となっています。
もっとも、いくつか例外もあり、例えばNintendo Switch 2向けのソフト『ドンキーコング バナンザ』は70ドル(約1万200円)となっています(日本ではダウンロード版:税込7,980円、パッケージ版:税込8,980円)。
また、Nintendo Switchの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のNintendo Switch 2 Editionも70ドル(約1万200円)という価格設定になっています(日本では税込8,678円)。
新作タイトルや新リリースの多くが80ドル(約11,600円)に設定されていることから、この価格が任天堂の新たな標準価格になると言えそうです。今後任天堂のAAAタイトルの基準自体、80ドルという価格設定になるのかも。
他企業も任天堂と同じく、値上げする?
ゲーム業界を分析する「Video Game Insights」のカール・コンタス氏は米Gizmodoに「この価格設定はNintendo Switch 2の売り上げに悪影響を及ぼす可能性がある。とはいえ、任天堂はめったに値引きをしないし、ファンもそこまで価格に敏感ではない」と説明。
また、「今後はさまざまな価格帯のゲームが登場するようになり、ゲーマーがこれまで以上に購入するタイトルを厳選するようになるだろう」と予測しています。「まあまあ面白い」くらいのゲームだと、価格次第では苦戦を強いられることになりそうです。
さらに、複数のアナリストが「他のゲーム会社も任天堂の価格戦略に注目している」と伝えており、任天堂の高級路線へのシフトを皮切りに、多くのゲームが値上がりする可能性を指摘しています。
デジタルメディア「Wedbush Securities」のマイケル・パクター氏は以前「『グランド・セフト・オートVI』が100ドルという新たな価格帯を提示するのを、業界全体が期待している」と伝えていましたが、任天堂のこの価格設定により、そうした期待も現実のものとなるかもしれません。
コンタス氏は任天堂の値上げについて「ゲームは他の商品に比べ、価格を上げることが難しいものであったため、これは他のゲーム会社も待ち望んでいたターニングポイントかもしれません」と言及しています。
トランプ関税の影響は無視できない
一方、ゲーマーにとって、この値上げは最悪のタイミングにやってきたものでした。というのも、Nintendo Switch 2の詳細な情報が発表された「Nintendo Direct」と同じ日に、トランプ大統領によって「相互関税」の発動が発表され、その影響によりテック企業の主要製造拠点に大規模な関税が課されることになったためです。
経済系メディア『The Financial Times』によると、任天堂のハードウェア製造拠点であるベトナムやカンボジアには、それぞれ46%、49%の関税が課されるとのこと。これはNintendo Switch 2の価格に大きな影響を与えるかもしれないと指摘しています。
任天堂の高額なNintendo Switch 2の価格設定は、関税の存在をある程度想定していたようにも見えますが、それでも、ここまでの輸入税は計算外だったことでしょう。
金融サービス企業のアナリスト、デビッド・ギブソン氏によると、今後を見越して任天堂はすでに38万台のNintendo Switch 2をアメリカに出荷している様子。それでも到底需要には見合わなさそうです。
任天堂の高画質路線への変更
ハードウェアが高くなるなら、ソフトが高くなるのも自然な現象です。とはいえ、任天堂の値上げ路線はトランプ関税以前から始まっていました。
インフレや関税だけでなく、ゲームのグラフィック向上やボリュームアップなどによる開発コストの増加もゲームの価格上昇に影響を及ぼしています。
任天堂は、長らくXbox Series XやPS5が4K/60FPSで張り合う中、「グラフィック至上主義」から一歩引いていましたが、ついにその方針も変わるかもしれません。
Nintendo Switch 2はドック接続時だと、一部タイトルにおいて4K出力が可能になっており、ディスプレイも1080pに進化しています。さらに『サイバーパンク2077』のようなグラフィック重視の作品にも対応するようになりました。
Nintendo Switch 2のデバイス環境も、他のハードに近しいものになりつつあります。
元任天堂のPRマネージャーであるキット・エリス氏とクリスタ・ヤン氏は、最新のポッドキャストで「4K時代に突入し、ゲームはより大きくなり、製作に時間とコストがかかるようになりました。場合によっては、製作にかなり長い時間が必要になることもあります」として、任天堂の路線が変わっていくことを予想しました。
一方でBloombergのジェイソン・シュライアー氏は、ゲーム開発コストの上昇をめぐって、経営陣の責任について言及。幹部がプロジェクトの方向性を頻繁に変えることで、無駄なコストがかかっている実例を取り上げながら指摘しました。
任天堂は業界でも長年難題であった値上げという領域に踏み込んだ模様。無論、ユーザーにとっては、受け入れ難いことかもしれません。
果たして、『マリオカート ワールド』に価格分の価値があるんでしょうか? 実際にプレイしてからのお楽しみということで。