ユーロ圏経済、貿易戦争乗り越え緩やかに拡大へ-EU秋季経済見通し
- GDP成長予想、来年は1.2%の見込み-春季予想から小幅下方修正
- ユーロ圏全体の財政赤字、2024年の3.1%から27年に3.4%へ拡大予測
欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は17日、秋季経済見通しを発表し、ユーロ圏経済は、トランプ米大統領による関税の混乱を予想以上にうまく乗り切り、緩やかな拡大を維持するとの見通しを示した。
発表によると、欧州委員会は、ユーロ圏の2025年の域内総生産(GDP)は1.3%、26年は1.2%、27年は1.4%増加するとみている。5月の予測に比べ、今年分は上方修正、26年分は小幅な下方修正となる。
インフレ率はこれまでの予測通り、2025年には2.1%と、今後2年間は欧州中央銀行(ECB)の目標2%にほぼ近い水準で推移する見通しだ。ただし当局者は、インフレ率が2%となる27年の見込みには、新しい炭素価格制度による上昇効果が含まれていると説明した。この制度を巡っては、加盟国政府や議員らが延期を求めている。
欧州委員会のドムブロフスキス委員(経済担当)は「厳しい環境下でも、EU経済は成長を続けてきた。困難な外部環境を踏まえ、EUは今、域内成長を解き放つため断固たる行動を取る必要がある」と語った。
欧州委員会の見通しは、欧州中央銀行(ECB)や国際通貨基金(IMF)の最新予測よりも楽観的だ。EUの政策担当者は、域内が貿易面で最悪のシナリオを回避しているように見え、インフレ率も2%近くで抑制されていることから、今後数カ月についての楽観的な見方を強めている。
欧州委員会は、このところの好調な実績は、年初に関税発動前の輸出急増がけん引したものの、投資も寄与したと説明した。世界的に不安定な状況でも、政府支出の増加、民間消費、ひっ迫した労働市場が成長を支えるとしている。
財政見通しについては、防衛費の増加などを背景に、ユーロ圏全体の財政赤字が2024年の3.1%から27年には3.4%に拡大すると予測した。2年後の債務負担は、域内総生産(GDP)比90%をわずかに上回る水準に達する見込みだ。
原題:Euro Zone Set for Moderate Growth After 2025 Resilience, EU Says(抜粋)
— 取材協力 Jorge Valero