小学館と光文社にフリーランス法違反で初勧告 報酬支払い巡り公取委
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フリーライターやカメラマンらに報酬額や支払期日を示さなかったなどとして、公正取引委員会は17日、出版大手の小学館と光文社にフリーランス保護法違反で再発防止を勧告した。勧告は2024年11月の同法施行以来初めて。曖昧な条件で仕事を発注する出版業界の商慣行が浮き彫りになっており、公取委は業界団体にも法令順守を要請する。
公取委は発注元から小規模事業者への不当な圧力について監視を強めている。組織に属さず働くフリーランスは特に弱い立場に置かれることが多い。公取委は同法に基づく勧告で曖昧な取引条件の是正に向け厳しい姿勢を示した形で、不利益を強いる違反行為の未然防止につなげる。
総務省が基幹統計として把握した22年段階の副業を含むフリーランスの人数は257万人で、派遣社員(151万人)を上回る。多様な働き方が定着する中、発注元には不当な圧力につながりかねない商慣行の見直しが求められる。
2社は週刊誌や月刊誌、文庫本といった書籍を刊行する総合出版社で、ライターやカメラマン、ヘアメーク、デザイナーなど多様な職種のフリーランスに業務委託している。公取委によると、小学館は約2000人、光文社は約4000人のフリーランスと取引していた。
小学館は24年12月にフリーランス191人に、光文社は同年11月〜25年2月の間に31人に対し、業務内容や報酬額などの取引条件を発注時に示していなかった。違反認定された過半数の取引が口頭での発注で、メールやSNSで一部の条件が示されていた場合も報酬の支払期日は示されていなかった。
同法では支払期日が示されなかった場合、成果物が納品されるなど委託した業務が終わった日に代金を支払うよう求めている。しかし、2社は雑誌などが刊行された日を基準に支払っていたという。終了日から支払日まで80日以上空いていたケースも散見された。
小学館と光文社は17日、再発防止の対策を講じるなどとし「法令順守を徹底していく」とコメントを出した。
公取委は2社に対して再発防止とともに、他の期間に同様の問題が起きていなかったかどうかを調査して必要な措置を講じるよう勧告した。口約束での発注や刊行日基準の報酬支払いが業界の商慣行になっている可能性があり、後日、業界団体に法令順守の周知を要請する。
フリーランスは個人で業務を請け負う性質上、不利な取引を持ちかけられることが多いため、同法は広範な取引を保護対象とする。下請法と異なり、発注事業者と受注事業者の資本金額は要件とならない。フリーランスに業務委託すれば全てが対象取引となる。
発注元との交渉の前提となる取引条件の明確化に重点を置いているのも特徴だ。業務を委託するフリーランスにメールや文書で報酬額のほか委託する業務の内容や支払期日などを示す必要がある。
こうした明示義務違反に対して下請法は事業者名の公表を伴う勧告ができないが、フリーランス法では勧告の対象になる。公取委は小学館や光文社の違反行為が広範に行われ、報酬の支払い遅延も確認されたことから悪質と判断し、勧告に踏み切った。
同法施行から半年以上が経過したが、どのような行為が違反になるかなど、法律が十分に周知されているとは言いがたい。小学館と光文社も法施行に伴い研修や説明会を行っていたが、現場に意識が浸透していなかったと公取委の調査で説明したという。
法施行前の24年5〜6月に実施された調査では、発注事業者の54.5%とフリーランスの76.3%が法律の内容をよく知らないと答えた。法施行後に行政指導されたケースも多く、同年11月〜25年3月にはアニメーション制作やゲームソフトウエア業界などで54件の違反や違反のおそれが確認された。
公取委は特設ウェブサイトを開設するなど法律の周知に力を入れるとともに、実際にフリーランスとの取引が多いとみられる業種への調査を集中的に進める。
フリーランス法に詳しい石川哲平弁護士は「フリーランス法は対象となる取引が下請法よりも幅広く、これまでの取引慣行が違反となるリスクもある。現場任せにするのではなく、管理部門が中心になって正しい知識の普及、社内ルールを明文化するなどの対策に取り組むことが重要」と話す。
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