夜もたくさん光を浴びている人は心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高いとの研究結果

サイエンス

人間の概日リズムは光によって調節されているため、夜間に光を浴びすぎると概日リズムが乱れる可能性があるとされています。医学論文のプレプリントサーバーであるmedRxivで公開された論文では、「夜間に多くの光にさらされた人は心血管疾患のリスクが高い」という結果が明らかとなりました。

Personal night light exposure predicts incidence of cardiovascular diseases in >88,000 individuals | medRxiv

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2025.06.20.25329961v1

Big City Lights Could Be Damaging Your Heart Health : ScienceAlert https://www.sciencealert.com/big-city-lights-could-be-damaging-your-heart-health

オーストラリアやイギリスの国際研究チームは、「夜間に光を浴びることで概日リズムが乱れ、心血管疾患のリスクが高まる可能性がある」という仮説を検証するため、イギリスの国民保健サービスが収集した40歳以上の成人8万8905人分のデータを分析しました。

データには、手首に装着した光検出センサーで測定された1週間にわたる光の暴露量と、9.5年間の追跡期間中に冠動脈疾患や心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中などの心血管疾患を発症したかどうかの情報が含まれていました。

研究チームは夜間に浴びた光の量に応じて被験者をグループ分けし、心血管疾患のリスクとの関連性を探りました。分析の結果、夜間に浴びた光が多い上位10%の被験者は、下位50%の被験者と比較して心血管疾患のリスクが有意に高いことが判明したと報告されています。 夜間の光を浴びた量と心血管疾患のリスクの関連性は、心血管疾患のリスクとの関連がわかっている喫煙・アルコール摂取・食生活・睡眠時間・身体活動・社会経済的地位・遺伝的リスクといった要因を考慮しても、なお確認されたとのことです。また、研究チームは論文で、「夜間の光と心不全および冠動脈疾患リスクとの関連性は女性でより強く、心不全や心房細動のリスクは若年層でより強くみられました」と述べています。 以下のグラフは、上から順に冠動脈疾患・心筋梗塞・心不全・心房細動・脳卒中のリスクを、「1.0」を基準として昼間(左)と夜間(右)の光を浴びた量ごとに示したもの。全体的に、夜間に最も多くの光を浴びた上位10%の人々は、心血管疾患のリスクが高い傾向がみられます。

研究チームは、人体では血圧や血糖耐性に加え、血液の凝固を促進する凝固性亢進に至るまで、多くの機能が規則的な概日リズムに依存していると指摘。夜更かしや夜勤などによって概日リズムが乱れることで、心血管リスクが高まるのではないかと考えています。 なお、今回の論文はプレプリントサーバーで公開された段階であり、正式な査読を通過したわけではありません。また、研究結果も直接的な因果関係を証明したものではなく、あくまで関連性を示したものにすぎない点に注意が必要です。

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