半世紀前から知られる「地球磁場の裂け目」がいま拡大中 我々への影響は

 半世紀以上前から知られている地球磁場(地磁気)の“ほころび”が、いま再び注目を集めている。南大西洋上で観測される磁場の弱い領域「南大西洋異常帯(South Atlantic Anomaly/SAA)」が、近年さらに拡大しているように見えるのだ。  欧州宇宙機関(ESA)は、衛星群「スウォーム(Swarm)」を使って11年にわたり地磁気を観測してきた。その目的のひとつが、南米上空に位置するこの異常帯を詳しく測定することだった。  南大西洋異常帯は1958年、衛星が地球の放射線を初めて観測した際に確認された現象で、決して新しいものではない。しかし、最新のデータによれば、SAAは近年急速に広がり、大西洋を横断してアフリカ方面へと伸びつつあるという。  ESAによると、こうした現象の背景には、地球内部の「外核」と「マントル」が接する「核マントル境界」(CMB)で起きている異常が関係している。この領域では「逆磁束パッチ(reverse flux patch)」と呼ばれる、磁場の向きが局所的に反転する現象が発生し、それが南大西洋異常帯の磁場をさらに弱めているとみられる。  「通常、南半球では磁場は核から外向きに流れている。しかし異常帯の直下では、磁場が逆転して核の内部へ向かう領域が確認されている」と語るのは、研究の筆頭著者でデンマーク工科大学の地磁気学教授、C.C.フィンレイ氏だ。「スウォームの観測データによると、磁場の向きが反転した領域のひとつがアフリカ上空を西へ移動しており、その動きがこの地域の磁場の弱まり、すなわち異常帯の拡大を引き起こしている」  スウォームのデータはさらに、カナダ上空で強かった磁場が弱まる一方、シベリアでは逆に強まっていることも示している。 衛星には脅威、地上生活には影響なし  地磁気の弱まりと聞くと不安に思うかもしれないが、人間の生活への直接的な影響はほとんどない。地表に到達する放射線の多くは大気が遮っており、NASAも「現在の弱まりは科学的に見て通常の変動の範囲内」としている。  だが、地球低軌道を周回する衛星や宇宙機にとっては事情が異なる。ESAは、南大西洋異常帯を通過する衛星が通常より高い放射線にさらされ、「機器の誤作動や損傷、通信途絶(ブラックアウト)を引き起こす恐れがある」と警告している。  フィンレイ氏によれば、各国の宇宙機関はSAAの存在を前提に衛星設計を行っているが、異常領域の拡大は今後の設計基準にも影響を与える可能性があるという。  ESAはスウォームによる観測を今後も継続し、磁場変化の長期データを蓄積していく方針だ。
「スウォームの長期観測によって、地球のダイナミックな変化をより立体的に捉えられるようになった」と、ミッションマネージャーのアンヤ・ストロッメ氏は語る。「衛星は健全に稼働しており、2030年以降も観測を続けられる見込みだ。太陽活動が最小期に入ることで、これまでにない洞察が得られるだろう」 この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

CNET Japan
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