「これでよく生きてきたな…」 弟が孤独死した部屋で兄が見た光景
東京都江戸川区のNPO法人「エンリッチ」が無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使って定期的に安否を確認するサービスへの登録者が増え続けている。
高齢化や未婚化などの影響で単身者が増え、孤独死への不安が広がっていることが背景にあるとみられる。
代表理事の紺野功さん(65)自身、10年前に弟の由夫さん(当時51歳)を孤独死で失っており、「もしものことがあっても早期発見につながってほしい」との思いで活動を続けている。
この記事は2回に分けて掲載します。 後編 自宅で孤独死「明日は我が身」 38歳独身女性が使う安否確認サービス 連載「孤独の現場から」 ※記事へのご意見、情報は情報提供フォーム「つながる毎日新聞」にお寄せください。
1人暮らしの自宅で黙々と仕事
システムエンジニアだった4歳下の由夫さんは、都内の古びた2DKのマンションで1人暮らしをしていた。
子どものころは、紺野さんが外遊びを好む「ガキ大将」タイプだったのに対し、由夫さんは内向的で読書好きだった。タイプが大きく異なる2人で過ごす時間は、そう多くはなかった。
由夫さんは大学卒業後、海外で日本語を教えていた時期もあった。帰国してからは、IT関係の会社などを経て独立した。
個人事業主として、得意先から引き受けた仕事を自宅で黙々とこなしていたようだ。
紺野さんもゲーム制作のベンチャー企業に勤めるエンジニアだった。
孤独死の10日後に発見
大人になってからも兄弟の関係性は変わらなかったが、紺野さんにとってパソコン関係の知識が豊富な由夫さんは「先生」のような存在でもあった。
「年2、3回の仕事の相談が、弟との唯一の接点でした」
最後に会ったのは2015年の正月。由夫さんは痛風で足を引きずっていた。
2月に電話で話した時は、やけに元気だった。今思えば酔っていたのだろう。
電話の3日後、由夫さんは自宅の玄関付近で倒れて亡くなった。
連絡が取れず不審に思った取引先が自宅を訪ねたことがきっかけとなり、遺体が発見された。
死因は低体温症で、死後10日ほどたっていた。