マクロスコープ:高市氏、経済対策で日銀に「注文」へ 積極財政の推進鮮明

2025年10月28日、都内で撮影。REUTERS/Evelyn Hockstein

[東京 10日 ロイター] - 高市早苗首相は近く策定する初めての経済対策に日銀への「注文」を盛り込む方針だ。デフレ脱却に主眼を置いたこれまでの政権に比べ、より経済成長を重視する政権の意向を強調する。専門家からは「高市政権は利上げに慎重な立場を示しており、日銀に一定の影響力を及ぼそうとしている」との指摘も出ている。

「今後の強い経済成長と物価安定の両立の実現に向けて、適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」。10日に判明した政府が策定中の経済対策の基本的枠組み案には、こうした文言が盛り込まれた。歴代政権と同様に日銀との共同歩調をアピールしつつも、その前提として「強い経済成長と物価安定の両立」を実現するための政策実施を日銀にも強く求めたものだ。

<「積極財政の推進宣言」>

石破茂前政権は昨秋の経済対策で日銀に対し「2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」と明記した。「期待」との表現を使ったものの、あくまで政府目標でもあるデフレ脱却を目指した金融政策への言及にとどめていた。同政権下で今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも同様の表現が踏襲された。

経済対策とそれを支える補正予算には、時の政権の独自色が反映されやすいとも言われる。高市氏の経済対策案に「注文」が盛り込まれたことについて、経済官庁幹部は「意図的に書き込まれたものだ」と解説。「高市氏はデフレ脱却にとどまらない経済成長を重視している。これから積極財政を推進していくという宣言でもある」と述べた。

高市氏は10日の衆院予算委員会で「マクロ経済政策の最終責任は政府がもつものだ」と強調。日銀が「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とした日銀法の条文を紹介する一方、「金融政策の具体的な手法は日銀にゆだねられるべきだ」と述べた。

<「選択と集中に注目」>

高市氏と日銀との距離感を専門家はどうみているのか。

みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏は「城内実経済財政相のこれまでの発言など高市政権は利上げに慎重な立場を示しており、日銀に一定の影響力を及ぼそうとしているのだろう」と指摘する。

その上で、足元の経済状況は「名目成長率が名目金利を上回ることで債務残高対GDP(国内総生産)比は改善しており、毎年物価上昇により財政再建が進んでいる」と説明。「高市氏はそのスプレッド(差分)で財政を出動し、成長分野に投資を進める意向だろう」とし、「政府が注力する投資分野の選択と集中がなされるか注目している」と話した。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。

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