急増する子どもの近視、外遊びを1日1時間強増やせば半減、研究
外で遊ぶ子どもは近視になりにくいことが、研究で示されている。(Photograph by Tim Laman, Nat Geo Image Collection)
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近視の人の割合が驚くべき速さで増えている。米国立眼科研究所は、2050年までに世界人口の半分近くが近視になると予測している。特に増えているのが、子どもの近視だ(編注:日本の文部科学省の学校保健統計調査でも「裸眼視力1.0未満の者」の割合は増加傾向で、令和6年度は小学校、中学校、高等学校で過去最大となった)。
その意外な理由として科学者たちは、外で遊ぶ時間が減っていることが関係しているかもしれないと考えている。2022年の英調査会社OnePollによる英国での調査では、週に数回以上外で遊ぶと答えた子どもの割合はわずか27%だった。その2世代前の80%と比べると大幅な減少だ。
そこで全米科学・工学・医学アカデミーは、2024年に近視の原因と予防に関する報告書を発表し、子どもの視力を守るために外で遊ぶ時間を増やすよう親たちに呼びかけた。
しかし、日光や自然のなかで過ごすことはなぜ目の健康に良いのだろうか。また、どれくらいの時間を外で過ごす必要があるのだろうか。
近視の原因と心配すべき理由
近視の原因は、眼球が前後に長く伸びてしまうことだ。眼球が伸びると、網膜(眼球の内側を覆い、光を電気信号に変換する組織)も一緒に引き伸ばされてしまうと、米ミシガン州にある退役軍人アナーバー・ヘルスケアシステムで検眼医として勤務するサラ・ワイドマイヤー氏は言う。
一度伸びてしまった眼球は元に戻すことができず、低下した視力は、会社や学校での成績、自動車の運転、自信、運動能力などの日常生活に影響を及ぼすようになる。メガネやコンタクトレンズも使えるが、近視はただ不便なだけでは終わらない。
「眼球が長くなると、内部の引き伸ばされた構造がさまざまな目の病気にさらされるリスクがとても高くなります」と、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部ウィルマー眼科研究所の眼科学講師であるローラ・ディ・メグリオ氏は言う。
緑内障、若年性白内障、黄斑変性症、網膜裂孔や網膜剥離など、「なかには視力が永久に低下してしまう病気もあり、場合によっては失明することもあります」