AIとロボットを使い研究室で人間の組織を培養して新薬の発見と開発を行う「Vivodyne」
AIとロボットを活用したプラットフォームで人間の体組織を培養し、効率が悪く課題も多い動物実験を使った創薬プロセスを効率化することを目指すスタートアップであるVivodyneが、4000万ドル(約57億円)の資金調達を達成したことを発表しました。
Vivodyne to Replace Animal Testing With $40 Million Funding to Reverse 95% Clinical Trial Failure Rate
https://www.businesswire.com/news/home/20250528498236/en/Vivodyne-to-Replace-Animal-Testing-With-%2440-Million-Funding-to-Reverse-95-Clinical-Trial-Failure-RateVivodyne raises $40 million in funding round led by Khosla Ventures
https://www.axios.com/pro/biotech-deals/2025/05/29/vivodyne-raises-40m-drug-testing-human-tissueVivodyneの公式X(旧Twitter)アカウントは2025年5月29日に、シリーズAの資金調達で4000万ドルを調達したことを発表しました。その中で、Vivodyneは「当社は、AIとロボット工学を活用したプラットフォームを拡大し、動物実験を前例のない規模で人間に関連するデータに置き換え、世界の大手製薬会社がより多くの予測的洞察と臨床試験の成功率の向上を実現できるよう支援しています」と述べています。
Vivodyne has raised $40 million in Series A funding led by @khoslaventures with participation from new investors Lingotto, Helena, Fortius Ventures and existing investors Kairos Ventures, CS Ventures, Bison Ventures and MBX Capital.
We’re scaling our AI and robotics-powered… pic.twitter.com/NUeRfiNfgN
— Vivodyne (@vivodyne) May 29, 2025
Vivodyneによると、バイオテクノロジーの分野では動物の疾患を対象とした前臨床試験が日常的に行われているものの、動物モデルで検証された治療法が人間の臨床試験で失敗する確率は95%に上るとのこと。
これは、動物モデルと人間の疾患との類似性が表面的で、予測可能性が低いことに起因しています。一方、Vivodyneは研究室で培養された人間の組織である「オルガノイド」を用いた大規模な試験を行ことで、信頼性が低い動物モデルの成功率を大幅に向上させ、創薬を加速させる可能性を秘めています。
また、アメリカ食品医薬品局(FDA)は2025年4月に医薬品開発における動物実験の要件を段階的に廃止する計画を打ち出しており、Vivodyneはこれを追い風にさらなる規模の拡大を目指すとしています。VivodyneのCEO兼共同創業者であるアンドレイ・ジョルジェスク氏は「Vivodyneは、医薬品を研究室から臨床試験へと移行させる方法を根本的に変えつつあります。5%しか予測できないモデルは、もはやモデルとは言えません。しかし、私たちはここ数十年間にわたって科学の進歩を阻んできた限界を克服することで、創薬における成功の定義を塗り替えようとしています」と語りました。 Vivodyneの最高執行責任者(COO)のジュリー・オショーネシー氏(左)とジョルジェスク氏(右)。
Vivodyneは、2023年のシードラウンドで3800万ドル(約54億円)を調達しています。そして、今回の資金調達で、Vivodyneはカリフォルニア州サウス・サンフランシスコに2万3000平方フィート(約2136平方メートル)の完全ロボット研究室を開設し、前臨床試験プロセスを大幅に強化する計画です。
シリーズAの投資ラウンドを主導したKhosla Venturesの創設者であるビノッド・コースラ氏は「ロボット工学とAIはすでに医療の状況を根本的に変え始めており、Vivodyneはその道を切り開いています。この2つの先端テクノロジーを活用することで、Vivodyneは2週間以内に10万種類以上のヒト組織を自動的に培養してテストすることができるので、製薬会社は臨床試験に大金を投入する前に、人間での同等の知見を得られるようになるでしょう」と話しました。
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