米軍、迅速なミサイル増産計画を21日以内に提出するよう防衛産業界に要求
米軍は対イラン作戦=エピック・フューリー作戦で迎撃ミサイルや長距離攻撃兵器を大量に消耗してしまい、トランプ大統領からも「どうして弾薬状況を正確に報告しなかったのか」と問い詰められ、これを受けて国防総省は「21日以内により迅速な増産計画を提出しろ」と防衛産業界に指示した。
参考:Pentagon presses defense firms to build weapons as Iran war depletes stocks 参考:Pentagon gives industry 21 days to submit plans for ‘significantly faster’ weapons production
戦略国際問題研究所(CSIS)は7月27日「米軍は対イラン作戦=エピック・フューリー作戦の第一段階で多数の迎撃ミサイルを消費した」「戦闘行動の再開に伴い在庫はさらに減少している」「一連の防空作戦は概ね成功を収め、完全ではないものの高い迎撃率を維持している」「イランによる攻撃の一部は防空網を突破し、死傷者や基地への広範な被害をもたらしたものの、米国および有志連合の作戦遂行能力を低下させるには至っていない」「この戦果は迎撃ミサイルの大規模な使用によって支えられたものであり、現在のパトリオット(PAC-3 MSE)の在庫は1,000発以下、THAADの在庫も約250発にまで減少している」と報告。
出典:Center for Strategic and International Studies
CSISはエピック・フューリー作戦開始時のPAC-3 MSE在庫について推定2,330発、4月8日の停戦までに在庫は推定1,030発まで、7月27日までに在庫は推定759発~827発まで減少し、作戦開始時のTHAAD在庫は推定452発、4月8日までに推定232発~262発まで減少、7月27日までに234発~278発まで微増したと試算し、CSISの試算が正しいなら米軍はエピック・フューリー作戦でPAC-3 MSEを1,503発~1,571発も消耗したことになり、この数字はPAC-3 MSE在庫の約2/3に相当する。
さらにDefense Newsも4日「米軍はエピック・フューリー作戦中、MLRSやHIMARSで使用する陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)と精密ストライクミサイル(PrSM)の在庫のほぼ全てを使い果たした」「これまでATACMSとPrSMの在庫減少に関して報告されていなかった」「ATACMSとPrSMの在庫減少は有人機の撃墜リスクを避けるというトランプ政権の決定を反映したものだ」「トマホークの在庫もエピック・フューリー作戦で約半分まで減少した」と報じた。
出典:Photo by John Hamilton
ワシントン・ポストは8日「国防総省は防衛産業に対して極度に不足している弾薬や兵器の生産を急速に拡張するよう求めている。水曜日にファインバーグ国防副長官は『より迅速かつ積極的な納入スケジュールの策定及び生産量拡大を実現するための計画を21日以内に提出しろ』と防衛産業界のトップに指示したと判明した。この指示の中で「何年もかかる開発サイクルは容認できない」「我々は今すぐにでもプログラムのスケジュールを大幅に加速させ生産能力を拡大しなければならない」と言及し、この指示はトランプ大統領と国防総省で武器不足が緊張の原因となっている中で出されたものだ」と報じた。
ワシントン・ポストは武器不足の現状についても「米軍は対イラン作戦の最初の1ヶ月だけでトマホークを850発以上、迎撃ミサイルを1,000発、陸軍の戦術弾道ミサイルを1,300発以上も消耗した。パトリオット迎撃ミサイルの在庫は2,200発から827発未満に、THAADミサイルは452発から278発未満に減少した。国防総省は3日にロッキード・マーティンやノースロップ・グラマンとPAC-3 MSEやTHAADの生産量を増やすための枠組み合意を発表し、2030年までにPAC-3 MSEの生産量を3倍に増やすためロッキード・マーティンと最大586億ドル相当の契約を締結した」と指摘したが、この契約は原資の確保がないまま締結された空手形に過ぎない。
出典:The White House
まだ2027会計年度の国防権限法案も予算案も成立しておらず、これが新しい会計年度=10月1日まで成立する見込みは限りなくゼロに近く、すでに上院はつなぎ予算を可決して国防権限法案と予算案の審議時間を稼ごうとしている。ワシントン・ポストも「国防総省が産業界と締結した枠組み合意を実行に移すためには、少なくとも裁量予算から支出される1兆1,500億ドルの国防予算が議会で可決されなければならないが、この予算案は巨額の支出増に反対する民主党の抵抗によって行き詰まっている」と指摘し、どれだけ壮大な計画も財源が確保されてないければ書類上の数字で終わってしまう。
仮に奇跡が起こって財源が確保されても、高度な兵器を生産するためのリードタイムは非常に長く、発注から納品までかかる平均時間はPAC-3 MSEで約42ヶ月間、THAADで約53ヶ月間と推定されており、さらに発注数が生産能力を大幅に超過している状態なのでサプライチェーン全体のパイプラインを太くすることから始めなければならず、数万点から数十万点に及ぶ特注の構成部品は市場に出回る汎用品で代用することもできないためとにかく時間がかかるのだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin