大阪万博:「万博特需」あてはずれ?ライドシェア苦戦…全国唯一24時間運行可能も開幕前に比べ利用伸び悩み : 読売新聞

 大阪・関西万博に合わせて、大阪府内で特例的に規制が緩和された「日本版ライドシェア」の利用が低調だ。全国で唯一、24時間運行が可能となったが、運行回数は開幕前に比べて減少している。背景にはタクシーの増加や万博会場への乗り入れの難しさがあるとみられ、府や運行事業者は需要の掘り起こしに力を入れている。万博は13日、開幕から2か月を迎えた。(梅本寛之、津田啓生)

ライドシェアに使っているマイカーに乗り込む西島さん。今のところ「万博特需」はないという(大阪市天王寺区で)

◎特例で規制緩和

 日本版ライドシェアは個人が自家用車を使って有償で人を運ぶ制度。タクシー不足を補う狙いで、政府が昨年4月以降、地域や時間帯を制限して順次解禁した。

 大阪府内では昨年5月、大阪市や堺市を中心に週末(金・土曜午後4~7時台と土曜午前0~3時台)限定で始まったが、吉村洋文知事は「万博のようなメガイベントに対応できない」と主張。万博の期間中、1日最大1880台のタクシーが不足するとの試算を示し、国土交通相に規制緩和を直談判した。

 その結果、昨年12月から府内全域で曜日を問わず、24時間運行できるようになった。ところが、万博開幕後、運行回数は落ち込んでいる。国交省によると、開幕までの週末12日間の運行回数は計3632回だったが、開幕後に同条件で計測したところ3割近く少ない2684回にとどまった。

 昨年9月から、大阪市内を中心にライドシェアのドライバーをしているウェブデザイナーの西島陽介さん(37)(大阪市阿倍野区)は「開幕後も思ったほど仕事は増えていない」と話す。利用数は1日6~10件で開幕前と変わらないという。

◎事前に講習

 最大の要因は、タクシー不足の改善にあるとみられる。ライドシェアの料金はタクシーと同程度で、空車のタクシーがすぐにつかまれば、ライドシェアを利用する必要がないからだ。

 タクシードライバーは高齢化が進み、全国的に減少傾向が続いていた。だが、今年3月現在の府内のドライバーは2万2238人で2年前から2000人近く増えた。訪日客の回復に伴って増加しているという。

 大阪タクシー協会の井田信雄専務理事は「指摘されていたようにはタクシーは不足していない」と話す。

 万博会場への乗り入れのハードルが高いことも、影響しているとみられる。

 日本国際博覧会協会は、会場の乗降場に乗り入れるドライバーに対面かオンラインの講習を義務付けている。経路や会場周辺の交通ルールを学んだうえで、「受講済」を示す識別票を車両に掲示する必要がある。

 タクシーで会場を訪れる来場者は全体の約2%で、ライドシェアはさらに少ないとみられる。乗降場で待機していた30歳代の男性タクシー運転手は「ここでライドシェアの車を見たことがない。時間をかけて講習を受けるのは割に合わないのだろう」と推し量る。

◎梅雨や夏場期待

 万博に伴う特例措置に期待していたライドシェアの事業者にとっては、出ばなをくじかれた形だ。

 新興企業の「newmo(ニューモ)」は昨年12月、最大50万円のボーナス支給を掲げてドライバーを募集した。1万人以上の応募があり、約1000人が内定したという。

 広報担当者は「潜在的な需要はあり、梅雨や夏場には利用が増えるはずだ」と期待する。ネットCMを積極的に打ち、需要を掘り起こしていくという。

 大阪府と大阪市も開幕後、関西空港で訪日客らに利用を促すチラシを配布するなどPRしている。

 ライドシェアを巡っては、与党内に制限を撤廃した「全面解禁」を求める声もあり、今回の特例措置の結果は、今後の議論の重要な検討材料となる。それだけに、府幹部は「このままでは閉幕後に後退してしまう。会期中に何とか利用者を増やさないといけない」と危機感を募らせている。

  ◆日本版ライドシェア =安全性を担保するため、タクシー会社が運行を管理し、雇用契約を結んだ個人がドライバーを務める条件で、昨年4月に解禁された。現在は全都道府県に導入されている。全国では約1000事業者、大阪府内では約100事業者が参入している。

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