「うまくいかなかったらJDのせい」、バンス氏の危険な賭け イラン和平への取り組み巡り
(CNN) 米国のバンス副大統領が、イランとの和平合意の顔となるチャンスに飛びついた。合意は数カ月にわたる不人気な戦争に終止符を打つことを目的としているが、バンス氏のこの賭けには大きなリスクが伴うだろう。米政権はこの数カ月イランに対して譲歩を迫っているが、ほとんど成果を上げられていないからだ。 【映像】トランプ氏、女性記者に「ブタ、静かに」 過去1週間の動きからも、その判断は一段と危うさを増したように思える。キャリアのハイライトになり得たものが一転、本人と2028年大統領選に向けたあらゆる野心にとっての失策に変わりかねない事態を迎えている。 19日にスイスで予定されていたイランとの正式な対面での交渉は土壇場で頓挫。バンス氏は17日夜にスイス行きのフライトをキャンセルした。共和党のタカ派は、具体的な合意文書を直ちに共有しなかった政権の判断に激しく反発。その内容を確認した後は、協定がイランに対してあまりにも寛大だと一斉に批判した。ある共和党上院議員はこれを「過去数十年で最悪の外交的失策」と評した。またトランプ大統領とバンス氏は、今後の協議の進め方について食い違う発言をしている。 そこにはイランが合意に違反した場合の対処なども含まれる。 合意に対する怒りの声の一部は、戦争懐疑派として知られるバンス氏自身にも向けられている。同氏は今週、テレビやポッドキャストへの10回以上の出演を通じて今回の合意を大きな勝利として称賛した。ただ実際には、合意によって米国の中核的目標が直ちに達成される見込みはほとんどないとの兆候も出ている。 こうした批判はバンス氏にとって、戦時下における新たな打撃となる。 本人はここまで、紛争に関与するのを慎重に避け続けてきた。また当初から紛争自体にも非公開の場面で懸念を示していた。 もしバンス氏が次の大統領選に出馬するのであれば、現状はその道筋をも複雑なものにしかねない。かつては外国での戦争を声高に批判していた同氏だが、その後はイランへの攻撃を強く擁護しつつ、一方で和平への道筋を私的に模索し続けてもいる。 このようなアプローチは、外部の同調者たちを困惑させている。彼らはバンス氏を共和党内の介入主義派に対する防波堤と見なしていたからだ。同時に政権内部からも一部苛立(いらだ)ちの声が噴出。2人の上級顧問が語ったところによれば、バンス氏の逆張り的な傾向を受けて、戦争を巡る意思決定が複雑化しかねないとの見方が浮上しているという。 トランプ氏はここまで、イラン問題におけるバンス氏の進捗(しんちょく)を注意深く見守っている。またバンス氏とルビオ国務長官とを比較してどう思うか、友人や顧問たちにたびたび尋ねてもいる。ルビオ氏は共和党の介入主義派の一人に数えられ、大統領選ではバンス氏のライバルになるとも目される。そんなトランプ氏は17日の記者会見で、バンス氏が難しい立場に置かれていることを冗談交じりに認めて次のように語った。 「(和平合意が)うまくいけば、それは私の手柄になる」「うまくいかなかったら、JD(バンス氏)のせいだ」 現時点でバンス氏は、イラン問題が自らの個人的な野心に及ぼす影響を重視してはおらず、大統領選への出馬についてもまだ考えていないと主張している。その上で交渉への自身の関与は、米イラン両国が受け入れ可能な休戦に到達するのを助けることだけが目的だとしている。 「リスクは間違いなくある。もしこの合意が破綻(はたん)し、大失敗に終わり、極めて不人気なものになるなら、バンス氏はスケープゴートにされる」。バンス氏の盟友で保守系の政治オピニオン誌「アメリカン・コンサバティブ」の責任者を務めるカート・ミルズ氏はそう分析する。ミルズ氏は一貫してイランとの戦争への突入は重大な政治的誤算だったと主張してきた。「とはいえ、状況は元から最悪だった。政権の人気がここまで落ちれば、JDが大統領になることはないだろう」