地中海のホホジロザメ、貴重な映像をダイバーが撮影 「ゴーストネット」回収中に
(CNN) ダイバーのダーク・レマース氏は、地中海の海面下132フィート(約40メートル)を超える場所で、放棄され沈没船に絡みついた漁網を撤去していた際、多くの人にとって悪夢のような出来事に遭遇した。 【映像付き記事】地中海のホホジロザメ、貴重な映像をダイバーが撮影 シチリア島の白い砂浜とチュニジアの雄大な海岸線の間の海域でボランティア活動をしていたレマース氏は、巨大なホホジロザメに出くわしたのだ。 テクニカルダイバーたちによって運営され、海中の失われた漁具や海洋ごみの撤去を専門とする慈善団体「ゴースト・ダイビング財団」のメンバーであるレマース氏は、海に残された使用済み漁網(ゴーストネット)の回収作業をたびたび行っている。これらの漁網は、放置すると海洋生物にとって致命的な「わな」となる。 レマース氏がホホジロザメに遭遇したのは、今年5月のことだ。 「まったく怖くなかったと言ったらうそになる」とレマース氏は笑いながら語った。人間はホホジロザメの捕食の対象ではないことは頭では理解していたが、一方でサメもそれを分かってくれていることを願っていたという。 しかし、「証拠がなければ、ホホジロザメを見たと言っても誰も信じてくれないだろうと思い、どうしてもカメラを回す必要があった」とレマース氏は振り返った。 レマース氏は急いでレンズキャップを外し、本来はダイビングの終盤まで使う予定のなかったカメラが正常に作動していることを確認して安堵(あんど)したという。 海洋ごみの除去と世界中の海洋生物の保護に取り組む団体「ヘルシー・シーズ」が主催した今回の活動は、地中海の沈没船を対象に、ゴーストネットの撤去と生物多様性の調査を行うキャンペーンの一環であった。 ヘルシー・シーズのディレクターを務めるベロニカ・ミコス氏は、「この遭遇が非常に重要な意味を持つ理由は、遭遇したのがホホジロザメだったということだけでなく、それが発生した状況にもある」とし、「我々は、生物多様性の重要な拠点となっている沈没船の生態系で、海洋生物を捕らえるわなと化しているゴーストネットを撤去するために現場にいた」と述べた。 またミコス氏は、「このような瞬間は、地中海の沖合の海域に今なおどれだけ多くの生物が生息しているか、そして放棄された漁具や乱獲といった回避可能な脅威から、それらを守ることがいかに重要かを再認識させてくれる」と付け加えた。 レマース氏は、この巨大なサメとの思いがけない遭遇に興奮を覚えたという。というのも、ホホジロザメの目撃例は年々減少しているためだ。レマース氏によると、地中海に生息するホホジロザメの映像はこれまで一度も撮影されておらず、ここ40年以上目撃すらされていないという。 しかし、サメのような巨大な生物を取り巻く現実は厳しい。 ホホジロザメは全長6メートル、体重2トンを超えることもある巨大な生物であり、映画「ジョーズ」のようなハリウッドの大ヒット作によってその恐ろしいイメージがあおられてきた。しかし実際には、人間の方がホホジロザメにとってはるかに大きな脅威となっている。 サメはしばしば混獲(本来の漁獲対象ではない生物が漁網に誤って捕獲されること)の被害に遭い、網に絡まって身動きが取れなくなり、そのまま死に至ることが多い。 国際自然保護連合(IUCN)は、ホホジロザメを絶滅のおそれのある「危急種」に分類しており、乱獲や気候変動の影響などにより、過去3世代の間に個体数が30~49%減少したと推定している。 しかし、地中海のホホジロザメの状況はさらに深刻だ。IUCNは、数十年にわたる沿岸・産業漁業により個体数が著しく減少したことを受け、同地域の個体群を「近絶滅種」に分類している。 イングランド南西部プリマスに拠点を置く自然保護団体「シャーク・トラスト」は1997年以降、サメやエイ類の保護を専門に活動している。同団体の「地中海プログラム」は、地中海に生息する約80種のサメ・エイ類が急速に絶滅の危機に直面していることを受けて考案された。 シャーク・トラストのポール・コックス最高経営責任者(CEO)は、CNNの取材に対し、「この地域のサメを守るためには、さまざまな保全措置が必要だ」と述べ、さらに海洋生物を確実に保護するためには、すべての漁業国が明確に定められ、適切に執行された漁業規制を一貫して順守するか否かにかかっていると強調した。 沖合に沈む沈没船は、人工漁礁として機能し、多種多様な海洋生物を引き寄せ、安全で豊かな生息環境を提供することがある。しかし、こうした構造物にゴーストネットが絡みつくと、それらは「海中のわな」と化し、引き寄せられた海洋生物を絡め取り、命を奪う結果となる。