2032年に地球へ接近する小惑星「2024 YR4」の形状と起源を研究者が推定
また、2024 YR4の推定形状はアイスホッケーのパックに例えられる平らな円盤状の形であることも研究チームは指摘しています。Bolinさんは「ほとんどの小惑星はジャガイモやコマ(独楽)のような形をしていると考えられていましたから、これは予想外の発見でした」とコメントしています。 W. M. ケック天文台によると、直径が100mを上回るような小惑星の多くは、小惑星どうしの衝突で生じた瓦礫がゆるく集まったラブルパイル天体だと考えられています。そのような小惑星の表面には幅数十mに達する大きな岩の塊が存在する場合があることから、2024 YR4はラブルパイル小惑星の表面に存在していた岩塊の可能性が示唆されます。 さらに、2024 YR4の軌道の特性をもとに、この小惑星の起源は火星と木星の間にある小惑星帯の中央部(太陽からの距離が2.52~2.82天文単位の領域)の可能性が高く、木星との重力を介した相互作用によって地球の公転軌道へ接近する軌道に移ったと研究チームは考えています。 地球の公転軌道と交差する小惑星のうち、この領域を起源とするものは多くないと考えられていたことから、少し驚いているともBolinさんはコメント。NSFでジェミニ天文台のプログラムディレクターを務めるMartin Stillさんは「地球近傍小惑星の性質や起源を理解することは、地球の公転軌道と交差する比較的大きな天体との衝突リスクを把握する上で非常に重要です」とコメントしています。
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2024年12月に掃天観測システム「ATLAS(Asteroid Terrestrial-Impact Last Alert System=小惑星地球衝突最終警報システム)」の観測で発見された2024 YR4は、発見直後の段階で2032年12月22日に地球へ衝突する可能性があると認識されていました。 NASAによると、算出された2024 YR4の衝突確率は2025年1月27日時点では1.2%でしたが、明るい満月の影響による中断を経て観測が再開された2025年2月に入るとさらに上昇し、2025年2月18日時点では3.1%に達していました(確率はNASA=アメリカ航空宇宙局のCNEOS=地球近傍天体研究センターによる、以下も同様)。 しかし、衝突確率の上昇は追跡観測の積み重ねによって2024 YR4の予測通過位置の範囲が狭まっていく過程で生じる一時的なものであり、翌日の2025年2月19日時点では1.5%、2025年2月20日時点では0.28%、2025年2月24日時点では0.004%まで低下。2024 YR4のトリノスケール(※2)は一時「レベル3」とされていましたが、2025年2月23日には最も低い「レベル0」まで下がっています。 ※2…小惑星が地球に衝突する確率や被害の規模を11段階で示す指標。 その一方で、2024 YR4が2032年に月へ衝突する確率は少しずつ上昇しています。2025年2月19日時点では0.8%でしたが、2025年4月2日時点では3.8%とされています。ただし、予測されている通過位置の範囲には依然として幅があるため、今後の追跡観測の積み重ねで範囲がさらに絞り込まれることで、月への衝突確率も変化する可能性があります。 参考文献・出典 NOIRLab - Gemini South Observes Shape and Origin of Near-Earth Asteroid 2024 YR4 W. M. Keck Observatory - Astronomers Trace Earth-Crossing Asteroid to Surprising Origin Bolin et al. - The discovery and characterization of Earth-crossing asteroid 2024 YR4 (arXiv)
sorae編集部