米雇用統計が試す「9月利下げ前提」の市場-強い数字なら波乱も
債券および通貨市場では、5日に発表される8月の米雇用統計を前に緊張感が高まっている。米金融当局の政策スタンスに対する見方を固め、短期的な金利の方向性を占う材料となるためだ。
今週発表された一連の予想を下回る経済指標を受けて、市場では米金融当局がハト派姿勢を強めるとの見方が広がり、米30年国債利回りは5%目前から後退。米短期国債利回りは一段と低下した。
ドルはここ数日間、大半の通貨に対して堅調に推移しているものの、年初来では約8%下落している。
市場では、9月16、17日両日で開催される連邦公開市場委員会(FOMC)会合での0.25ポイントの利下げがほぼ確実視されており、今回の雇用統計は、その後の金融政策の方向性を見極める手がかりとなる。
ここ数週間は「緩やかに減速する経済」が市場の支配的な見方となっているが、雇用統計で予想を上回る強い結果が出れば、市場にとってサプライズとなり、一部で見られる米国債の弱気シフトが正当化される可能性がある。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「米利下げのハードルは低い」と指摘。市場は既に今後数カ月にわたる複数回の利下げを織り込んでいるため、雇用統計が堅調な内容となれば、利回りが上昇するリスクの方が大きいと説明した。
労働省が発表する8月の雇用統計では、今週のデータで示唆された雇用の伸び鈍化が確認されると見込まれている。ブルームバーグの調査によれば、非農業部門雇用者数は7万5000人増にとどまる見通し。失業率は4.3%に上昇し、2021年以来の高水準になると見込まれている。
米金融当局の政策動向を予想する先物市場では、今月の0.25ポイントの利下げが実質的に100%織り込まれている。さらに来年末までに合計5回の0.25ポイントの利下げが見込まれており、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは現行の4.25-4.5%から、3%近辺まで低下すると予想されている。
この見通しを背景に、短期金利は低下。一方で財政懸念が長期債利回りを押し上げている。米金融当局の政策変更に最も敏感な2年債利回りは、5月以降の最低水準に近い3.6%前後で推移している。
アルファシンプレックス・グループのチーフストラテジスト兼ポートフォリオマネジャー、キャスリン・カミンスキー氏は、雇用統計が非常に弱い内容であれば、米国債相場の上昇がさらに続く可能性があるとしつつも、長期債利回りはトランプ大統領による世界的な貿易戦争を背景とした不透明感になお直面しており、雇用統計の「弱い数字が米国債の全ての年限に対して追い風になることはないだろう」と述べた。
一方、利回り上昇に賭ける動きも一部で強まっている。JPモルガンの米国債に関する顧客調査によれば、米国債のショートポジションは2日までの週で2月以来の高水準に達し、週間のポジション変化としては過去5年間で最大級の規模となっている。
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