60代からでも「理想の人生」は送れる。ハーバード大学史上最長の「幸福研究」が導き出したひとつの答え(webマガジン mi

幸せな人生の条件とは? 富や名声を手に入れること、仕事のやりがいがあること、家族が健康であること、豊かなパートナーシップが続くこと……。現代において幸せとは何かを考えるとき、そこには様々な価値観があり、一概に“これ”と言うのは難しいかもしれません。 そんな簡単に答えの出ない問いに対して、84年にわたって研究し続けたのがハーバード大学です。同大学の研究チームは、同一家族の2世代にわたる被験者たちを80年以上追跡調査することで、「幸せの条件」を解き明かそうとしました。その調査結果について、被験者たちのエピソードも交えて解説した書籍が、今回ご紹介する『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)です。  

著者のロバート・ウォールディンガー氏とマーク・シュルツ氏は、この「幸せ研究」の責任者と副責任者ですが、研究結果について、本書では次のような一言に集約しています。 「健康で幸せな生活を送るには、よい人間関係が必要だ。以上。」 健康で幸福な人生を送るためのベストな選択。それは、友好的な人間関係を育むために「人間関係を大切にし続けること」である。そう科学的にわかったというのです。ストレスの種にもなり得る人間関係ですが、そもそも、「幸せな人生は楽な人生ではない。完璧な人生を送る方法など存在しないし、あったとしたら、ろくなものではない」とも本書では伝えます。  これも、子ども時代の苦労や、初恋から晩年の暮らしぶりまで、2000人を超える被験者の“人生の変遷”を記録してきたからこその、科学的根拠に基づく言葉なのでしょう。

 長年の研究からわかった幸せの条件、「よい人間関係」には、配偶者、家族、仕事仲間と様々な形での繋がりが当てはまりますが、大人として年齢を重ねるうち、ある意味最もハードルが高くなるのが「友人」関係ではないでしょうか。  私たちはライフステージの変化とともに、親密になったり、疎遠になったりして、いつの間にか「前は一緒にいて楽しかったのに、今はしっくりこない」と思ってしまうこと(思われることもしかり)があります。 本書でも例として挙げているのが、結婚・出産による変化。自分はまだ独身だけれど、友人たちは結婚して子どもが生まれ、気づけば友人たちは別世界にいるように感じて友情が薄れていく。さらに本研究では、仕事を引退後、友人関係を失った被験者は男女を問わずたくさんいた、としています。 それでも、幸せな人生を送るために「よい人間関係」が欠かせないのだとしたら、一体どうすればいいのでしょうか。本書は、「友人関係にはメンテナンスが必要だ」と説きます。   友情は最も放置されやすい人間関係の一つだ。本研究の被験者の人生においても、男女を問わず、放置したせいで友情が悪化していくケースを繰り返し見てきた。友情は自由意志によって育まれる。だからこそすばらしいし、だからこそはかない。はかないものだからといって、大して価値がないわけではない。すでに手にしている友人関係を維持したり、新しい友人をつくっていくには、意志を伴う行動が必要だ、という意味だ。 友情は最も放置されやすい。放置したせいで友情が悪化……。自分の胸に手を当てて思わず反省してしまう人もいるかもしれません。良好な友人関係を築くには、成り行きにまかせたり、自分をありのままに振る舞うのではなく、家族と同じように注意を向けることが必要だ、と本書は教えてくれます。


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 では、具体的に何をしたらいいのか。よりよい友人関係を育む、あるいは維持するための「友情のメンテナンス」には、以下のようなことを実践してみるといいそうです。 ●友人の言葉に耳を傾ける態度を身につけること これは話を聴く側と聴いてもらう側、両方に同等のメリットがあるのだそう。注意を払いたいのは、お互いのバランス。「友人関係においては、話し手と聞き手の役割が固定化してしまうことがある。自分がどちらになりがちかを見極めて、バランスをとろう。双方向の関係が、いちばん強い友情になる」というアドバイスも参考にしたいところです。 ●仲違いした友人との関係について考えてみること 仲違いした友人がいるなら、いつまでも引きずらず、わだかまりを解消できるよう行動することが大切、と本書。素直に謝る、丁寧なメールを送る、昼食をごちそうすると提案する、そうしたアクションを起こすだけで、過去の傷を修復できることも。「人は友情よりも傷ついた自分の心を守ろうとすることがある」の一言を覚えておくと、友情にヒビが入りそうになったとき、客観的な視点で自分を見つめられそうです。 ●友人付き合いのルーティンを見直すこと いつも会う友人とは同じ話題になってしまいがち。でも、本当はもっと自分から話せることはないか? 友人について知りたいことがあるのではないか? 2人で一緒にしたいことはないか? 「いつものパターン」から抜け出す工夫をしてみると、より友情が深まる可能性があります。  

ただ、年齢を重ねて自分のペースや互いの関係性が固定されがちな大人の中には、「今さら変えられない」と思う人もいるかもしれません。本書でもこのように問いかけます。「昔からなじんだやり方を変えるのは難しい。それに、内気だったり、群れることが嫌いだったりと、人付き合いが難しくなる心理的な壁は誰にでもある。今さら手遅れだと考えている人もいるはずだ」。 実際、本研究の被験者にも「大人になると友人関係のあり方は変えられない、という考えを繰り返し口にする人はたくさんいた」のだそう。孤独だと言ったあと、「人生はそういうものだから」「忙しくて友人付き合いの暇がなくて」といった発言が続く――いわば諦めの境地を吐露する被験者は少なくなかったというのです。ですが、一人の被験者の観察を続けると、こんなこともわかってきました。「いくつになっても友達をつくることはできる」。

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